海の温暖化や酸性化によって海藻の微生物叢が変化することが判明! (2019年米国研究)
ニュース/レビュー
今回は未来の気候変動によって脅かされる海の森についての報告です。
シドニー大学のプレスリリースを翻訳しましたのでご紹介します。
また原著論文(英語)はオープンアクセスなので全文が閲覧可能です(下にリンクを貼っておきます)。
ニュースタイトル「将来の気候変動によって脅かされている水中の森林」
副題:潜在的に危険にさらされているオーストラリアの2大漁業Ziggy Marzinelli博士による研究は、予測される海洋温暖化と酸性化が昆布の表面上の微生物を変化させ、病気を引き起こし、さらに漁業を危険にさらす昆布の群生の減少をもたらすことを発見しました
シドニー大学とシドニー海洋科学研究所の研究者たちは、気候変動による昆布の群生の減少が、微生物叢への影響を介して起こることを示唆する結果を発表しました。
ヒトでは腸内細菌叢の変化が、健康を害する可能性があることが見出されています。同様のことが海中の林でも起きており、気候変動は地球規模で生物多様性に影響を及ぼしています。海では、海洋の温暖化と酸性化が昆布の表面の微生物を変化させ、病気を引き起こし漁業的な損害をもたらす可能性があります。
酸性化がサンゴや大きな海藻など各地における主たる生息種を減少させ、生物多様性に影響を与えています。
今回の研究では、これら2つのプロセスが大型の海藻の表面の微生物叢を変化させ病気のような現象を引き起こす可能性を示しています。水ぶくれや白化に伴う海藻表面の劣化は、光合成能を損ない生存を脅かすことになります。
世界中の海洋林において、同様の懸念がもたれます。
例えば、グレートサザンリーフとして知られるオーストラリア南部の半分を占める8000kmの長大な海中の林で起こりうる減少は、魚類や貝類、そして甲殻類などを含む全ての生態環境に影響を与えかねません。
「昆布の群生を失うと、私たちの最大の2つの漁場も失います」と、生命環境科学部海洋温帯礁生態学の講師、Ziggy Marzinelli博士は言います。
海中の林の冷えた水は、オーストラリアの漁業の重要な恩恵をもたらしており、オーストラリア経済にとって1000億ドル以上の価値があると推定されています。
Proceedings of The Royal Society Bに発表された今回の研究では、海洋の温暖化と酸性化、それぞれの独立した影響と相互関連しての影響について、主な種であるカジメ属の昆布の微生物叢を調べました。この種は、オーストラリアでは既に急速に減少しています。
Marzinelli博士はこのように述べています。
「気候変動の影響は複雑で、目に見えない微生物の変化を生じさせて起こるものであることが示されました。微生物叢の変化は宿主の生態を変えます。人間の腸内細菌叢が撹乱されれば、健康に害が及びますが、海藻でもそれは同じことです。変化の一つとして目に触れるのは、海藻表面に生じている水泡の集団です」
共同執筆者である、シドニー海洋科学研究所のPeter Steinberg教授は、この研究は海洋生態系全体の健全性と回復力に影響を与えると述べています。 「昆布の群生を失うことによる影響は、陸上のすべての木を伐採することと同じです。全ての動物に影響が及びます。海中においても同じです。生息域の物理的構造を失うことは、生態系を失うことです」
今回の研究の驚くべき側面の1つは、最も極端なシナリオを適用した場合、微生物叢が健康な状態に戻ったことです。
「予測される温暖化と酸性化の条件下で、50年後までテストしたところ、微生物叢は当初の健康な宿主上での状態まで回復しました。驚くべき結果ですが、将来の最も極端な海洋条件で何が起こるのか予測するのは難しい、ということです」
とSteinberg教授は述べています。
引用ニュース & 原著論文
🔵 英語ニュース:Underwater forests threatened by future climate change, new study finds(University of Sydney)2019.2.6🔵 原著論文(オープンアクセス; 全文が閲覧できます) :Future climate change is predicted to affect the microbiome and condition of habitat-forming kelp(Proceedings of the Royal Society B, 06 February 2019)
Seigoの追記
昆布もお魚の住処や食べ物になったり、陸での木と同じように動物に色々な影響を与えているわけで、海の温度やpHなど、環境が変われば当然お魚や生き物に影響するわけです。それにしても微生物の役割ってすごいです。腸内細菌だけではなく、海藻などの表面に存在して、水ぶくれや白化などの病気に対処してくれているんだなっと。
環境が良くなればいいのですが、温暖化による環境の悪化をこの報告では強調していました。
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20余年アメリカで遺伝子治療&幹細胞の研究者をやってきました。
特に遺伝病の間違った遺伝子をピンポイントで修復し、元に戻す技術開発です。
理学博士(Ph.D. )
アメリカ生活で学んだアンチエイジングなど健康に関する知識をシェアしたいと思います。
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