インドの大気汚染の原因物質は都市部よりも農村部の残留作物の焼却が原因だった!? (2019年スウェーデン調査報告)

ニュース/レビュー

今回はプチ断食がは炎症性腸疾患(IBD)の治療に効果的であるという基礎研究データの発表がありましたのでご報告いたします。

スウェーデンのストックホルム大学のプレスリリース(英文)を翻訳しましたので、ここでご紹介します。

Nature Sustainability に出版された原著論文はオープンアクセスなので全文を読んだりダウンロードできます 😄
(以下にリンクあり)

ニュースタイトル「農作残渣の償却は南アジア大気汚染の主要な原因です」

英文執筆者:Stella Papadopoulou

ニューデリーのような南アジアの巨大都市における深刻な大気汚染の主な原因は、化石燃料の燃焼によるブラックカーボンの都市排出であるとは限らないとするストックホルム大学およびインド熱帯気象研究所の研究者による新しい報告が、Nature Sustainability 誌に掲載されています。

夏季におけるニューデリーの化石燃料の排出量は大気汚染プルームの80%を占めますが、近隣地域でのバイオマス燃焼(残留作物の焼却など)による排出量は、秋冬期間中の化石燃料による排出量に匹敵します。

この研究の共著者である、ストックホルム大学環境科学分析化学研究所(Department of Environmental Science and Analytical Chemistry /ACES)のオーギュスト アンデルソン(August Andersson)研究員は、「ブラックカーボンによるエアロゾルは人の健康に害を及ぼし、そのレベルは他の多くの大都市の中でもニューデリーが最高です。ニューデリーの汚染大気粒子のレベルは世界保健機関によって推奨される限界の10倍に達することがあります。この人口密集都市におけるブラックカーボンの環境への影響を判断するためには、主要な排出源からの寄与度を定量化することが重要です」とは述べ ています。

研究者らは、2011年にニューデリーから大気サンプルを収集し、各サンプルの炭素同位体シグネチャプロファイルを作成して粒子の発生源を特定することにより、それらのブラックカーボン含有量を分析しました。炭素源が異なれば、独自の同位体フィンガープリントが得られます。彼らは1年間の異なる起源からのブラックカーボン粒子の相対量を比較することにより、そこに大きな季節的変動があることを発見しました。

化石燃料の燃焼からの相対的な寄与は雨期から夏にかけてピークに達し、バイオマス燃焼(例えば木材およびわらの燃焼)からの寄与は乾期の秋と冬の間にピークに達しました。さらに、科学者たちは、バイオマスからの排出量が多いのは地方や都市に区分されるものではなく、地域的なものであることを発見しました。たとえば、ニューデリーから約200km離れた農民による残留作物の焼却です。インドでは、収穫後に残留作物の焼却が起こります。これは通常、小麦では10月〜11月米では4〜5月になります。

「我々の調査結果は、都市と地方の排出の流れは主に一方向であるというよく知られた見解と矛盾しています。他の研究では、主な原因が交通量だと思われる大都市の中心部で、バイオマス燃焼からそんなに大量のブラックカーボンが排出されていることを明確に報告している研究は他にはありません。

オーギュスト アンデルソン研究員は、冬におけるニューデリーへブラックカーボンが流れ込むということはひどい大気汚染に効率良く対処するために、都市での排出を軽減するだけでなく、農業作物の捨てる部分を燃やすこと(残留作物の焼却)を含めた地域規模のバイオマス燃料の排ガスを軽減する必要があることを示唆しています。」とし、続けて「インド・ガンジス地域の大気汚染は、パキスタン東部、インド北部とバングラデシュに及び、ほぼ10億人に影響している可能性のある地域の問題です。」と述べています。

引用ニュース & 原著論文

🔵 英語ニュース:Crop residue burning is a major contributor to air pollution in South AsiaStockholm University2-27-2019

🔵 原著論文(オープンアクセス;論文の全文が閲覧できます):
Air quality in megacity Delhi affected by countryside biomass burning
Srinivas Bikkina, August Andersson, ・・・ D. S. Bisht & Örjan Gustafsson
Nature Sustainability (2019). DOI: 10.1038/s41893-019-0219-0-384. doi: 10.1002/oby.22382.

Seigoの追記

この論文のいいたいことは、

インドの大気汚染はデリーなどの大都市から発生するブラックカーボン(BC)の約83%は化石燃料からきているが(特に夏期)、

しかし秋から冬にかけての深刻なもやは農村部から来ており、それは残留作物を焼却したためだったということがわかったそうです。

インドではなぜ残留作物を焼く慣習があるのか分かりませんが、通常植物を焼けば炭素(C)が空気中に逃げてしまうので良くないです。

農業をしている方なら分かると思いますが、炭素(C)より窒素が多くなってしまうと美味しくない野菜になってしまいます。

なので作物は焼くのではなく、むしろ土の中に埋めて(きのこなどと一緒に)炭素を土に返したほうが、良い土となります。

なので残留作物を焼却処分にするのは大気汚染になりますし(作物に農薬が残っていたらさらに危険!)、土壌から炭素量も減ってしまうので、あまり(いや全く)やらない方がいいのではないかと思います。

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