海洋生物(白化イソギンチャク)にマイクロプラスチックが3日以上残存した! 長期的影響に懸念(2019年米国研究)
ニュース/レビュー
今回はイソギンチャクがプラスチックマイクロファイバーを取り込んでいるという驚きの研究報告がありました。
米国カーネギー研究所が最新研究をプレスリリースしましたので、それを翻訳したものをここでご紹介します。
原著論文は全文が無料で閲覧可能ですので、下にリンクを貼っておきます。
この記事のもくじ
ニュースタイトル「イソギンチャクがプラスチックのマイクロファイバーを摂取している」
ワシントンDC – カーネギー(科学)研究所(Carnegie Institution for Science)のロマノドオルテ氏(Manoela Romano de Orte)、ソフィクロウェツ氏(Sophie Clowez)、およびケンカルデイラ氏(Ken Caldeira)による最近の研究によると、海洋を漂流するプラスチック破片をイソギンチャクが食物とともに摂取しますが、白化イソギンチャクはこれらマイクロファイバーを健康なイソギンチャクより長く体内に保持するとのことです。 (※ 訳者注:白化イソギンチャクは藻類共生生物を含まないが、普通のイソギンチャクはこれと共生しているっという違いがあるようです。原著論文のサマリーより)
Environmental Pollution(環境汚染)誌に発表された彼らの研究は、プラスチックマイクロファイバーとイソギンチャクの相関関係に関する始めての調査です。イソギンチャクはサンゴと密接な関係にあることから、科学者にとって、世界中の海洋を汚染する何百万トンものプラスチックがサンゴ礁の生態系に及ぼす影響を理解する一助となるものです。
海洋に浮遊する最も一般的な種類のプラスチックの1つは、合成衣類の洗浄したものや、ロープやネットなどの海事設備の破損から発生したマイクロファイバーです。マイクロファイバーは、世界中の海の至るところに見られ、人間が消費する魚介類の体内にも出現し始めています。
「プラスチック汚染は私たちの海と、そこに住む動物達にとって深刻で悪化が進行している問題です」とロマノドオルテ氏は述べています。「私達は、これらの長期に残存する汚染物質が脆弱なサンゴ礁の生態系にどのように影響しているかを理解したかったのです。プラスチックは生物と食物に混入し、またその他の汚染物質を含む可能性もあります。イソギンチャクはサンゴ礁と密接に関係しているので、私達は野生のサンゴに対するプラスチックの影響をよりよく理解するために、実験室でイソギンチャクを研究することにしました。」
プラスチック汚染に関して実験室で行われるほとんどの研究では、マイクロファイバーではなく、小さなプラスチックビーズを使用します。ロマノドオルテ、クロウェツ、そしてカルデイラは、健康なイソギンチャクと、栄養を供給する共生藻を失ったイソギンチャクによって摂取されるかを確認しようと試みました
プラスチック汚染を研究する多くのラボでは、マイクロファイバーではなく、小さなプラスチックビーズを使用します。ロマノドオルテ氏、クロウェツ氏およびカルデイラ氏は、健康なイソギンチャクと栄養を供給する共生藻を失ったイソギンチャクがマイクロファイバーを消化するかどうかを確認しようと試みました。サンゴ礁の白化は地球規模の気候変動による海水温の上昇によって引き起こされます。
研究チームは、白化していないイソギンチャクと白化したイソギンチャクの両方に、ナイロンとポリエステルとポリプロピレンの3種類のマイクロファイバーをそのまま単独で、そしてそれをブラインシュリンプ(小型のエビ)と混ぜ合わせて与えました。
彼らは、それらプラスチックを単独で与えると、ナイロンのマイクロファイバーを非白化イソギンチャクの約4分の1が摂取したが、他の2種類のマイクロファイバーは全く取り込まれなかったことを発見しました。しかし、マイクロファイバーをブラインシュリンプと混合すると、非白化イソギンチャクの約80パーセントが3種類のマイクロファイバーすべてを摂取しました。白化イソギンチャクについては、60%がナイロンを消費し、20%が食物を含まないポリエステルを消費し、そしてブラインシュリンプと混ぜると80%が3種類のマイクロファイバーすべてを摂取しました。
すべてのマイクロファイバーは3日目までになくなりましたが、摂取したマイクロファイバーを放出するまでの時間は、健康なイソギンチャクよりも、白化イソギンチャクのほうが長くかかりました。しかし、自然の海洋環境では、イソギンチャクとサンゴが絶えず新しいマイクロファイバーを繰り返し摂取し、汚染を慢性化します。
カルデリア氏は「私達の研究から、プラスチックの汚染と気候変動がサンゴ礁にとってワンツーパンチとなっていることが示唆されます」として、「珊瑚礁が海水温の上昇によって白化されればされるほど、有機体はプラスチックマイクロファイバーを食べて生き延びようとする保持する可能性が高くなります。地球温暖化と海洋汚染の影響はただの足し算ではなく掛け算のように思われます。
引用ニュース & 原著論文
🔵 英語ニュース:Sea anemones ingest plastic microfibers (Carnegie Institution for Science) March 28, 2019🔵 原著論文 : Manoela Romanó de Orte et al, Response of bleached and symbiotic sea anemones to plastic microfiber exposure, Environmental Pollution (2019). DOI: 10.1016/j.envpol.2019.02.100
Seigoの追記
普通の普通のイソギンチャクより白化したイソギンチャクはマイクロファイバーを取り込んでしまった後、それが体内から除かれるまでに時間がかかるそうです。これは代謝が鈍いからなのでしょうか?
普通にはマイクロファイバーを食べないけれども小さなエビと一緒にすると食べてしまうそうですね。
ただこの論文では特にイソギンチャクに異常が出たなどの報告はないようです。
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20余年アメリカで遺伝子治療&幹細胞の研究者をやってきました。
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理学博士(Ph.D. )
アメリカ生活で学んだアンチエイジングなど健康に関する知識をシェアしたいと思います。
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