ヘンププロテインのアミノ酸スコアと4つの健康効果とは?〔科学的根拠・論文引用あり〕

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あまり日本では耳にしないヘンププロテイン。外国でスーパーフードと呼ばれて人気です。

今回はその紹介だけではなく、医学的・科学的に裏付けされた研究論文の引用をつけてお伝えいたします(括弧内に原著論文のリンクあり)。

今注目されている「ヘンプシード」とは?

ヘンプシード(出典:Luisella Planeta LeoniによるPixabayからの画像)


ヘンプシードスーパーフードと呼ばれますが、そもそもスーパーフードとは何でしょうか?

スーパーフードとは?

スーパーフードとは、特に必須栄養素が豊富抗酸化力のある自然由来の食材のことです。体内では作り出せないミネラルやビタミン、各種アミノ酸、抗酸化物質などの栄養素を豊富に含んでいます。いろんなスーパーフードが注目され、海外のセレブや女優が愛用していることで、日本でもブームに火が着きました。

スーパーフードを食べ続けることで、美肌でいつまでも若々しく、代謝が活発になってダイエット効果も見られるとか。血行が良くなって冷え性が改善したり、女性ホルモンのバランスも整って美容効果なども得られるかもしれません。

代表的なスーパーフードとしては、強い抗酸化力を持つ「アサイーベリー」、β―カロチンを多く含む「クコの実」、免疫力が高い「ココナッツ」などなど・・・。最近では「チアシード」や「キヌア」なども脚光を浴びて、海外ではセレブや女優、モデルが密かに愛用しているようです。スーパーフードは、パウダーにしたり種子や実のままで食べられています。

最近また新たに「ヘンプシード」がスーパーフードとして人気になってきました。ヘンプシードとは「大麻の実」のことです。ヘンプ(HEMP)とは、昔から栽培されてきた大麻(おおあさ)です。神社のしめ縄お盆のお迎え火には大麻の繊維が使われています。七味唐辛子にも麻の実が入っています。麻の実を搾ったオイルが化粧品やシャンプーに使用されたり、シャツやパジャマにも大麻の繊維が使用されています。ヘンプは日本人にとっても慣れ親しんだ素材です。しかし戦後は遠い存在となってしまいました 😔

七味唐辛子の中にヘンプシードが入っている(出典:by HiC/写真AC)


大麻というとマリファナというイメージがありますが、産業用や食用の大麻も医療用や嗜好用の大麻も大麻草なのですが、目的によって栽培方法や品種が異なっています。幻覚作用のある成分(カンナビノイド)を目的に交配栽培したものはマリファナに分類され、デルタ-9テトラヒドロカンナビノールを15〜33%と高く含みます。ヘンプシードなど産業に用いる大麻は、有機栽培の認定を受けた農地で食用に栽培されている大麻草から収穫されており、有害成分のデルタ-9テトラヒドロカンナビノールは0.3%以下となっていますので、マリファナのようにトリップしたりすることはありません。

ヘンプシードの特徴

クセがなくナッツのような味です。
20種類のアミノ酸が含まれており、体内で作ることのできない必須アミノ酸9種類がすべて含まれています。また体力増進に役立つ「アルギニン」、運動時に筋肉のエネルギー源となる分岐鎖アミノ酸(BCAA)である「バリン、ロイシン、イソロイシン」も多いです。大さじ1杯で3gのタンパク質が入っています。

さらに、ヘンプシードは大さじ1杯で3g以上の脂肪を含み、αリノレン酸(オメガ3)リノレン酸(オメガ6)ガンマリノレイン酸が豊富です。ヘンプシードのオメガ3の量とオメガ3と6の比がとても良いので、体内でDHAやEPAに変換されてアレルギー症状を改善させる効果もあるようです。またガンマリノレイン酸は動物実験では抗炎症効果があったようですが、人ではいつも効果があるわけではないようです(参考文献 ← この論文は全文が無料で閲覧可)。

ヘンプシードは繊維も豊富で、抗酸化作用のある成分も含まれているので、心臓や関節、お肌などにも良いようです。他にも、ビタミンE、ビタミンB群、カリウム、マグネシウム、亜鉛、鉄、カルシウム、銅なども含みます(参考文献 a, b)。

ヘンプシードのタンパク質の特徴とは?大豆タンパク質との違いは?

ヘンプシード(黒)(出典:Ulrike LeoneによるPixabayからの画像)


植物性プロテインで一番人気なのが大豆プロテインですが、この特徴からまず見ていきましょう。

大豆プロテイン

マクロビオティックなどの玄米を主食とした菜食を行っている方も多いのですが、肉や魚、卵などに含まれる動物性タンパク質が不足しがちです。摂取する植物性タンパク質というと普通は大豆タンパクです。しかし、大豆にはトリプシンインヒビターという消化酵素を阻害する物質が含まれています。つまりタンパク質消化酵素のトリプシンを不活性化させるものです。充分に加熱しないと、下痢をしてしまいます。

ヘンププロテインの特徴

ヘンプシードには、このトリプシンインヒビター含まれていません。また大豆以外の植物性タンパクを摂ると大豆に偏りがちな栄養も満遍なく摂ることもでき、大豆アレルギーを発症する危険も減ります(基本的に1つの食材を毎日食べているとアレルギーになりやすい)。

ヘンプシードのタンパク質は非常に豊富で、動物性の肉や魚、卵のタンパク質の割合よりも高いのです。また、ヘンプシードのタンパク質は、グロブリン(65%)とアルブミン(35%)の形で存在しているので大豆よりも消化吸収性に優れています。グロブリンはエデスチン(EDESTIN)とも呼ばれるタンパク質で抗酸化物質です。人の血漿に含まれるグロブリンに似ており、消化しやすく吸収されやすいのです。グロブリンやアルブミンは病原体に対する抗体の原料でもあります。

ヘンププロテインのアミノ酸スコア

タンパク質の栄養価を示す指標を「アミノ酸スコア」と呼びます。食品に含まれている必須アミノ酸がどれくらい満たされているかでアミノ酸スコアは算出されます。100に近い数値であるほど理想的です。また、タンパク質の消化されやすさも加味したタンパク質消化吸収率補正アミノ酸スコア (PDCAAS) を以下に示します。
タンパク質源 PDCAAS(%)
(タンパク質消化吸収率補正アミノ酸スコア)
ヘンプシード 51
ヘンプシードミール 48
大豆タンパク質分離物 92
カゼイン 100
卵の白身 100
ヘンプシードのアミノ酸スコアは約50くらいです。リジンという必須アミノ酸がヘンプシードは少ないためアミノ酸スコアはあまり高い値にならないようです。

上記のデータは YOUCOACH のサイト(英語)を参照しました。

ヘンプの4つの健康効果

① 心臓への健康効果

🔵 動物実験で、ヘンプオイルは血圧を下げ、血栓を防ぎ心臓発作からの回復を助けるようです。(参考文献 c, d, e

🔵 ヘンプに多いアルギニンはNO(一酸化窒素)の材料で、NOは血管を拡張し、血圧を下げ、心臓疾患のリスクを減らします。(参考文献 f, g, h

🔵 ガンマリノレイン酸は心臓の炎症を防ぎます。(参考文献 i, j

② 肌への健康効果

🔵 慢性炎症によってにきびやアトピーが起こり、オメガ3欠乏とニキビは関係しているそうです。(参考文献 k, l

🔵 アトピーには善玉菌を増やすのが大切で、食物繊維やプレビオティクス(腸内細菌の餌となる難消化性食品)も助けになるそうです。

③ 胃腸への健康効果

🔵 ヘンプは20%の水溶性、80%の不溶性繊維を含みます(参考文献)。水溶性は善玉菌のエサとなり、血糖値やコレステロールをコントロールします。(参考文献 n, o

🔵 不溶性は便のかさを増して便秘を防ぎ、糖尿病予防にも良いです。(参考文献 p, q)ヘンプの多糖類は腸を酸化ストレスから守ってくれるという報告もあります(参考文献)。

④ メタボ予防で長生きに

イメージ画像(出典:by acworks/写真AC)


マウスの実験でヘンプシードと苦味野菜のノゲシ(Sonchus oleraceus)を一緒に摂ると、脂肪肝、慢性炎症などメタボ予防になりマウスより長生きだったそうです。寿命に関する遺伝子(5 ‘アデノシン一リン酸活性化プロテインキナーゼ(AMPK)、サーチュイン1、核呼吸因子1(NRF-1)、フォークヘッドボックスO3(FOXO3)を含む)が活性化され、加齢に関する遺伝子(哺乳類ラパマイシン標的たんぱく質(mTOR)および核因子カッパ B(NF-κB))の発現は下がったそうです(参考文献)。

ヘンププロテインとは?

ヘンププロテインとは、ヘンプシード(麻の実)を低温圧搾加工して脂肪を抜いた粉末状の高タンパク食品です。

全てのアミノ酸を含んだ完璧なアミノ酸のプロテインと言えます。大さじ1杯のヘンププロテインには、約10gの必須アミノ酸、約0.5gの糖、約1gの必須脂肪酸が含まれています。

年を取るごとに、体力増強に役立つアミノ酸(アルギニンや分岐鎖アミノ酸)の摂取が不足してきます。この大切なアミノ酸はヘンププロテインに豊富に含まれているので、高齢者やスポーツを楽しむ方々には理想的な食べ物ですね(パウダー状なので)。子供の成長に大切なリジンやアルギニン、ヒスチジンなどのアミノ酸も含まれています。

オメガ3やガンマリノレイン酸などのベネフィットを得たい方はヘンプシードをサラダに振りかけたり、シリアルに加えたり、ブレンダーでプロテインスムージーにすると良いですね。

スーパーフードのヘンプを取り入れて、ますますヘルシービューティで長生きして人生をエンジョイしましょう!

パウダー状のヘンププロテイン(サプリ)

パウダー状のヘンププロテインが日本でも売っているのを見つけましたので、リンクを貼っておきます。

有機のヘンプシード

こちらはヘンプシードそのままのものです。有機栽培のハイグレードな品質を見つけましたので、リンクを貼っておきます。


 

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