ALSの原因は農薬入り食べ物か? 患者の体内から殺虫剤が検出される! (2019年最新論文)

ニュース/レビュー

今回は農薬や環境汚染物質がALS患者の体内に発見され、それが病気の進行を早めているのではないかという研究報告です。

この研究に関してミシガン大学が最新研究をプレスリリースしましたので、それを翻訳したものをここで紹介致します。

以下からプレスリリースの翻訳が始まります。

ニュースタイトル「早期農薬曝露はより速いALSの進行を促す

新しい研究は、治療法がない進行性の神経変性疾患の過程で、従来の有機塩素系農薬と汚染物質の役割を特定するのに役立ちます。

筋萎縮性側索硬化症ALSの原因は正確には不明のままですが、新しい研究から農薬やその他の環境汚染物質が神経変性疾患の進行を促進することが判明しています。

その研究の責任者、ミシガン大学・ALS中核的研究拠点のディレクターであるエヴァ・フェルドマン医学博士(Eva Feldman, M.D., Ph.D)は、 Journal of Neurology, Neurosurgery Psychiatry(BMJジャーナル)に発表された最新の研究で、ALS 患者の血液検査から残留農薬レベルが上昇していることを発見した彼らのグループによる2016年の研究結果を裏付けるものであると述べています。

ALS患者から見つかった農薬(PBDEとPCB)の構造(出典:Wikimedia Commons, PBDE:By Leyo, Rhododendronbusch投稿者自身による作品, パブリック・ドメイン, Link; PCB:By D.328投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, Link


ミシガン大学薬事神経科のフェルドマン医師は、「PCBとして知られるポリ塩化ビフェニルのような他の毒素もALS患者で上昇し、生存率の低下と相関することが我々の最新の論文に記されています」とし、「私たちの調査によると、環境汚染は公衆衛生上のリスクであり、対処しなければならないと考えています。」と述べています。ALSは、ルーゲーリック病としても知られ、人々が手足や体を動かす能力を急速に失う原因となる疾患です。

この研究では、167人のミシガン大学病院のALS患者から、ALSと診断された直後に採血しました。次に、それらを血流中の汚染物質の濃度に基づいて四分位数(しぶんいすう)に分類しました。汚染物質の量が最も多い四分位数は、ALS診断の開始日から1年11ヵ月の生存期間中央値を有していました。一方、最も低い濃度の汚染物質を含む四分位数は、2年6ヵ月間の生存期間中央値が1ヵ月長いという結果が出ました。

「私たちの懸念は、これらの要因がALSになる可能性に影響するだけでなく発症した場合に病気を悪化させることです」と、本研究の主要著者、ミシガン大学ALSクリニックのディレクターであるミシガン大医学部(Michigan Medicine)神経科のステファン・ガウトマン(Stephen Goutman)氏は述べています。

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ミシガン州で高いALS罹患率

農薬散布(イメージ画像, 出典:zefe wuによるPixabayからの画像)


ミシガン大医学部の研究者らは、より効果的な治療法、そして最終的には治療法を模索するためにALSの起源を研究する独自の態勢を整えています。フェルドマン氏によると、ミシガン州では、米国疾病管理予防センター(Centers for Disease Control and Prevention)によると、ミシガン州のALS発生率は国内で最高とされています。

「なぜ私たちに? なぜミシガン州が?」という疑問に、「ミシガン州が工業と農業の両面を兼ね備えた州であるという事実によるものと思われます」と1998年にミシガン大医学部のALS中核的研究拠点を設立したフェルドマン氏は答えています。

ミシガン州の農業の歴史を通して、農薬としてさまざまな(自然に)分解されない環境化学物質が使用されてきました。1972年のDDTを例に有害な農薬は認定されて禁止されましたが、その影響はずっと続き、場合によっては分解するのに何十年もかかります。これらの化学物質は河川や五大湖に溜まるだけでなく、そこに生息する魚にも蓄積する可能性があります。

ミシガン州はその産業活動によって、米国内で有害廃棄物を多く発生する上位5州となり、州内69か所がスーパーファンド()サイトに指定されています。農薬と同様に、これら工業用化学物質はゆっくりと分解し、地面に浸出し、今後何十年も環境に影響を与える可能性があります。

ガウトマン氏は「ミシガン州でこれらの化学物質が湖や川などの水域に侵入すると、すべての人にとっての暴露源になる可能性があります」として、「これらの残留性環境化学物質は分解するのに時間がかかり、時には何十年もかかります。触れると体内に蓄積する可能性があります。これらは脂肪に入り、血中に放出される可能性があります。私達は大量の化学物質にさらされているのです」と述べています。

ガウトマン氏は、「汚染によって環境が変化するにつれ、我々はますます多くの毒素にさらされます。これがどのようにして人間の病気に響するかは不明です。もっと多くの毒素を調べ、もっと重要なものを発病または進行の観点から確認したいものです」と付け加え、

「これらの化学物質が私たちの臓器や脳、そして運動ニューロンにどのような影響を与えているのか決定できたら、その影響をなくすための薬を開発することができます」と述べています。

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生活の質的向上と研究の促進

 

人工呼吸器(出典:by 筒井よしほ/イラストAC)


ALSには治療法がありませんが、2つのFDA承認薬であるリルゾール(riluzole、別名Rilutek)とエダラボン(edaravone、別名Radicava)が、病気を遅らせるのに若干効果があることがわかっています。ガウトマン氏によれば、鼻のみを、または鼻と口を、または顔全体を覆うマスクと接続した非侵襲的換気 ー 人工呼吸器の使用がALSのための非常に効果的な治療法であるとのことです。

これによって生存期間が平均13ヶ月延びると報告されています。またALSの他の症状も見落とさないでQOL(生活の質, 生きがい)を向上し、動きやすさと安全性にも取り組むように治療することが重要であるとGoutman氏は最近のFacebook のライブ・プレゼンテーションで述べました。

Feldman氏は今後の研究で、患者が最も尋ねる質問として「なぜこんな病気になったの?」を追求し続けると語っています。ALSの発症をはっきりと理解することが研究者が治療に取り組むのに役立ちます。

またこの研究チームはミシガン大医学部の診療所で患者の新しいコホート(ある一定条件の調査)を研究することを計画しています。類似の研究結果を繰り返すことによって、彼らの発見がさらに有効なものとなり、全国研究のためのフレームワークを確立することになるであろうと、彼らは述べています。この研究チームはまた、ALS患者における農薬および汚染物質の代謝および相互作用、ならびに特定の代謝産物が疾患の発症、進行および生存とどのように関係するのかを理解するために疾病管理センター(CDC, Center for Disease Control)から資金援助を得ています。フェルドマン氏は農薬の代謝について理解することがALS新薬の発見につながると言っています。

ーーー 翻訳ここまで ーーー

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引用ニュース & 原著論文

🔵 英語ニュース:Early Pesticide Exposure Contributes to Faster ALS Progression( 

🔵 原著論文:High plasma concentrations of organic pollutants negatively impact survival in amyotrophic lateral sclerosis (Journal of Neurology, Neurosurgery & Psychiatry (2019) )

Seigoの追記

ALS患者の体内に検出された農薬の共通構造


眼鏡のような形をした農薬や化学物質がいつの間にか体に蓄積して、ALSなどの命の奪う病気になっているかも知れないという衝撃的な研究報告でした。

今回ALSの患者の体内で見つかった農薬で一番多かったものがポリ塩化ビフェニル(PBDE)で2番目がPCBでした(原著論文のアブストラクトより)。

構造はどちらも似ていてPBDEのほうは臭素(Br)がたくさんついていて、PCBのほうは塩素(Cl)がいっぱいついています。

図はクリック/タップすると拡大できます。(出典:Wikimedia Commons, PBDE:By Leyo, Rhododendronbusch投稿者自身による作品, パブリック・ドメイン, Link; PCB:By D.328投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, Link


これらの臭素(Br)や塩素(Cl)が体に溜まると悪さをするようですね。

PCBは養殖の魚や、北欧の野生の鮭2019.05.24の記事)にも多いことが分かっているのでお気をつけ下さい。

日本でよく使われるネオニコチノイド系農薬も塩素(Cl)が多いのです。そして構造も眼鏡型をしています。形からするとPCBを変化させて作られたのかも知れません。


構造についてもっとお知りになりたい方は、別記事に書きましたのでどうぞ ↓


病気の原因が分かればそれに対処することもできるでしょう。

ALSは難病指定されていますが、最近出てきたALSの原因としては脳でグルタミン酸が過剰に蓄積して(グルタミン酸の再取り込みが阻害されるため)神経細胞が死んでしまうのではないかとも言われています。

この論文に出てきた農薬やPCBが原因の1つと分かれば、それを減らすことによって改善される可能性が出てきました。

農薬や有害化学物質を体に貯めずに、元気で若々しく、いつまでも健康でいきましょう!

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