生分解プラスチックの強度を増しさらにしなやかにする方法が見つかる! (2019年米国)

ニュース/レビュー

今回はより強くしなやかな生分解プラスチックの改良についての報告です。

オハイオ州立大学のプレスリリースを翻訳しましたのでご紹介します。

ニュースタイトル「研究は、地球に優しいプラスチック製品へ変更可能であることを示しています」

イメージ画像(出典:Clker-Free-Vector-ImagesによるPixabayからの画像)


プラスチックをゴミ埋め立て地から無くし、同時に食品業界のニーズを満たすのは非常に難しいことです。

石油製品に変わる生分解プラスチックは価格や質などあらゆる基準を満たす必要がありますが、これまでのところ、再生できる資源から実際に使える代替品を作る試みは、加工面と経済的な制約のためあまり成功しているとは言えません。これまで代替製品は食品のパッケージとして弱すぎることが大きな障害でした。

しかしオハイオ州立大学の新しい研究から、天然ゴムとバイオプラスチックを斬新な方法で組み合わせることで、プラスチックに代わるものとしてずっと強力な代替品が誕生したことが判明しました。

ほとんどすべてのプラスチック(約90%)は石油ベースで、生分解性はなく、大きな環境問題になっています。

「ポリマー」誌に掲載された新しい研究では、微生物発酵に由来するゴム強化製品に**成功したことが報告されています。科学者によると、この新しい研究はこれまでのところこの分野での最大の成功であると強調されています。

オハイオ州立食品科学技術局の博士研究員のシャオインチャオ氏(Xiaoying Zhao)は、「以前、この組み合わせで試みたことがありますが、ゴムの柔らかさが原因で製造中に強度を失ったことから失敗に終わりました」と述べています。

この新しい研究は、有機過酸化物とトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)と呼ばれる別の添加剤を一緒に植物ベースの熱可塑性プラスチック(PHBV)にゴムを溶かし込むものでした。

この製品はPHBVと比べて強度が75%、柔軟性が100%でした。つまり、この材質は食品の包装にとても使いやすいものなのです。

オハイオ州の研究者によって考案された新しいバイオプラスチックとゴムのブレンドは、それ自体でバイオプラスチックよりはるかに耐久性があることを証明しました。(出典:オハイオ州立大学


別の研究チームがゴムとPHBVを組み合わせていますが、この製品は — 加工から出荷、店舗や家庭での取り扱い、特に冷凍して電子レンジで使用する容器まで、食品用パッケージとしての全ての要求に耐えるには弱すぎでしたと、オハイオ州立大学の食品科学技術教授でありこの研究のシニアオーサー(リーダー)であるエールヴォドヴォツ(Yael Vodovotz)氏が述べています。

生鮮食品から冷凍食品まであらゆるものを包装するのに一般的に使用されるプラスチックフィルムに関しては、強度を保ったまま柔軟性を高めることが特に重要です。

このタイプのゴム強化バイオプラスチックを製造しようとした他の例では、PHBVの強度を80%も減少しましたが、この研究では強度は30%しか失われなかった―これははるかに扱いやすい数字であると、チャオ氏は言いました。

改善されたのは硬さで強度とは異なると、オハイオ州の天然ゴムの専門家で園芸および作物科学の共同研究者のカトリーナ・コーニッシュ(Katrina Cornish)教授は以下のように説明しています。

「あなたの手でコンクリートの塊を引き離そうとすることを想像してください。それは強さをテストしています。しかし空手チョップでそれを割ろうとするのは、硬さつまり割れやすさのテストです。そして、

「あなたは決してそれを引き離すことはできませんが、力が十分に強ければ割ることはできます。」と。

研究者の多くが現在注目しているのは、この混合材をもっと強くする充填剤として使えるかもしれない様々な生分解性(あるいは環境に優しい)物質を探すことかもしれません。彼らは仲間の研究者がコーヒー豆の絞りカスから油を抽出した後に残された「カスの塊」を使うことについて議論しました。トマトの皮や卵の殻も検討中です。

「私たちは持続可能で比較的安いゴミに捨てるようなカスが欲しいのです」とヴォルドヴォツ氏は述べました。

環境保護活動家たちが水路から引っ張り出した雑草が、ゴムの混合物とどうなるかを見ることで、一度に2つの環境問題に取り組む可能性すら見ています。

「我々はこれらの草を乾燥させで粉砕し、繊維状充填剤として使えるかもしれません。」とヴォルドヴォツ氏は言いました。

食品のパッケージ以外にも、生分解プラスチックは調理器具やまな板などの他の食品関連のものとして使える可能性があります。

また、食品科学分野以外でも建築材料、フードサービスに従事する人のための手袋、自動車や飛行機の部品の作成など、この製品に他の用途を検討しようとしています。

ヴォドヴォツ氏によると、「このチームがその技術を研究室を出て食品業界に取り組む中で、企業の優先事項や懸念に応じて対処すべきことがたくさんあり、この混合材を色々手直しする必要があるかもしれません」と言いました。

ヴォドヴォツ氏は、「我々が食品製造業者との共同研究に近づけば近づくほど、パートナー候補からの質問はより詳細なものになります」として「我々は彼らのニーズを満たすためにこのプロセスで何を使用するかについて非常に慎重にならなければならず、そして彼らには非常に具体的な要件があります。」と述べています。

引用ニュース & 原著論文

🔵 英語ニュース:Study shows potential for Earth-friendly plastic replacement( The Ohio State University

🔵 原著論文(オープンアクセス;全文が閲覧可能) :Synergistic Mechanisms Underlie the Peroxide and Coagent Improvement of Natural-Rubber-Toughened Poly(3-hydroxybutyrate-co-3-hydroxyvalerate) Mechanical Performance (Polymers 2019, 11(3), 565 )

Seigoの追記

生分解プラスチックは高額で、素材もいまいちビニールとは違うのでなかなか広まっていかないです。

今回は生分解プラスチックと天然ゴムにさらに添加剤を加えて、さらにビニールに近い材質になったということで研究が進んでいるのはうれしい限りです。

でも疑問なんですが、組成が変わって生分解はちゃんとするのでしょうか・・・

そう言えば最近タイのスーパーではバナナの葉で商品を包むとかありましたね。

プラごみ削減のため「バナナの葉」を活用のタイのスーパー(forbesjapan.com)

確か麻もプラスチックの代替になりそうだったと思いますが、未来に環境に優しいものに変わるのは楽しみですね。

麻(あさ)を使ったヨコカー(当サイト)2018.03.10

楽天で売っている生分解商品

関連記事一覧

  1. この記事へのコメントはありません。