太陽光で海水を温め蒸留できる装置をメリーランド大学が開発に成功! 水不足解消の切り札となるか? (2019年最新論文)

ニュース/レビュー

世界の水不足を解消するために太陽のエネルギーで蒸留可能な淡水化装置が完成したというニュースです。

メリーランド大学が最新研究をプレスリリース(英文)しましたので、それを翻訳したものをご紹介します。(翻訳のプロではないので読みづらかったらすみません m(_ _)m )

ニュースタイトル「ソーラー蒸留器は新鮮な水を得るための新しいルートを提供」

木材製のソーラー蒸留器装置は、小規模の淡水化をより実用的にすることを目的としている。 写真:John T. Consoli ( 出典:


世界の約10億の人々が安全な飲み水を得られていません。

しかしもし海水を飲み水へと淡水化できれば、水不足という状況に役立ちます。しかし、今の海水淡水化システムではコストがかかりすぎて、特に低所得国や遠隔地など多くの地域で、設置して使うことができません。

メリーランド大学A.ジェームズクラーク工科学校は、手頃な価格でコンパクトに脱塩できる、木でできた安価なソーラー型海水淡水化装置の重要な部品を含む試作品を成功させました。メリーランドエネルギー開発研究所(Maryland Energy Innovation Institute)の材料科学、工学部胡良兵(Liangbing Hu)准教授は、この蒸留システムは効率良く蒸気にし、メンテナンスが最小限で済むと述べています。

このシステムでは界面蒸留法という技術を採用していますが、胡准教授によれば「太陽光により蒸気に変える効率が高く、環境への悪影響も少なく、持ち運びしやすい設計で低コストなので、世界規模の水不足に対応できる大きな可能性があります。特に低所得国においてのご家庭での水の生成と浄化に適しています」ということです。

界面蒸留器は、塩水に浮くような薄い材質でできています。この蒸留器は上で太陽熱を吸収し、機器の下部から海水を吸い上げ続けて上で蒸気にし、塩と分けるようになってます Advanced Materials (アドバンスド・マテリアルズ) 誌で論文の研究責任者である胡良兵准教授は説明します。

しかし、使っているうちに淡水化装置の表面に塩がたまり、綺麗にするまでだんだんと性能が低下してしまうそうです。

胡良兵准教授と研究チームは、木が隅々に水や栄養を運ぶ極小の管(水を通す管, 導管)を持っているという自然な構造を利用したバスウッド(アメリカ菩提樹)で作られた装置で、メンテナンスも最小限にしました。

さらに木材の微細な断面を貫いてミリメートル幅の管を作って補強したと、この研究の客員主幹研究者の光玉迪(Yudi Kuang)氏は言います。更に装置の上面を短時間で高熱にし、表面を炭化して太陽熱の吸収をアップしています。

この装置は太陽エネルギーを使って、木材の天然の微小な管で塩水を吸い上げます。塩はこの管から広くした管へと行き、下の水に溶け込みます。

「研究室では、約75%の効率で安定した蒸気を作り、いろいろな塩濃度で優れた汚染防止効果を実証しました」と光玉迪氏は言います。

研究者の陳朝基氏(Chaoji Chen)は、「天然木材のみがスターティングマテリアル(原料)なので、この太陽熱脱塩蒸発器は低コストが期待できる」と付け加えました。この蒸留器方式は天然の管をもつなら他の種類の木材でも使えます。この研究者らは現在、①より高い効率、②より低い資本コスト、そして③ちゃんと脱塩できる蒸気凝縮器との一体化を達成できるようにこのシステムの開発に取り組んでいます。

「胡良兵研究室では最近、他にも太陽エネルギーを吸収して分配できるような炭化した木でできたソーラー試作品の装置を開発しました 。 これは回収が難しい油を綺麗にする目的で開発したものです。」Advanced Functional Materials (先端機能素材) 誌に掲載された論文の責任者である光玉迪は述べています。

胡良兵は「木材はその階層的な穴の多い構造なので興味深い材料で、しかも再生可能で、豊富に存在するので安価な資源です。私たちの研究室では、バイオ(特に木材)の基本を理解することで、よく使われているが長持ちしないものにも負けない並外れたパフォーマンスが木材で達成できました。」と述べています。

彼の研究室は他のプロジェクトにおいても特に軽くて効果的な「ナノウッド」断熱材を生み出しました。また天然木材よりも12倍強く、10倍硬い「スーパーウッド」も設計中ですが、これは一部の用途でスチール、チタン、カーボンファイバーに代わる可能性があるということです。

引用ニュース & 原著論文

🔵 英語ニュース:Solar evaporator offers a fresh route to fresh water( 

🔵 原著論文(1) :A High‐Performance Self‐Regenerating Solar Evaporator for Continuous Water Desalination (Advanced Materials  2019 )

原著論文(2): Bioinspired Solar‐Heated Carbon Absorbent for Efficient Cleanup of Highly Viscous Crude Oil
Advanced Functional Materials, Vol 29, Issue 16. 2019 Feb.
Yudi Kuang, Chaoji Chen・・・Siddhartha Das, Liangbing Hu

Seigoの追記

蒸留器は通常、電気をエネルギー源として蒸留水を作りますが、これは太陽光をエネルギー源として、しかも水は塩分の多い海水で大丈夫なそうなのです。

塩が貯まってしまうのが問題だったそうですが、それをうまく木材の微細な通路を利用して成功させたそうですが、発表された1枚の写真からではどうなっているのかよく分かりませんでした。

このソーラー蒸留器に関する追加情報などこのサイトでご紹介します。

 

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