1型糖尿病の原因となる免疫異常を腸内細菌検査で早期発見できる可能性(カナダ最新研究)

ニュース/レビュー

1型糖尿病はインスリンを分泌する細胞が何かの理由で失ってしまったため、インスリン注射を必要とする重度のタイプの糖尿病です。

そのインスリン分泌細胞を失ってしまった理由は、自分の免疫系が攻撃してしまったためではないかという学説が有力なため、1型糖尿病は自己免疫疾患で発症するのではないかといわれいます。

つまり免疫の異常が発症の1因を担っているのではないかと言うことですが、この免疫の異常を腸内細菌を調べることによって、事前に防ぐことができないかという可能性を指示する有力な研究が発表されました。

カナダの研究チームが Science Immunology 誌に発表した研究内容のレビューを日本語でご紹介します。

ニュースタイトル「腸内細菌への免疫反応は1型糖尿病の早期指標となり得る」

カナダの研究チームは、1型糖尿病T1Dの変異を持つ子供と、T1Dの発症前の子供の血清中の抗免疫抗体と腸内細菌の関連性を見出しました。

どのように腸から膵臓内の免疫反応に影響を与えるのかは分かっていません。ですがこの結果は腸内細菌とその後に発生するT1Dが関係していることを明らかにしたもので、遺伝子リスクファクターで分析した場合、発症を予測できる可能性を示唆しています。

T1Dは自己免疫疾患です。 理由は分かっていませんが、免疫系は膵臓のベータ細胞を外来の侵入者と間違えて殺し、一生インスリンを作れないようにしてしまいます。T1Dを発症するのは通常子供ですが、HLA遺伝子変異体を持っているためにこの疾患にかかりやすくなっていることは以前の研究でわかっていました。今回の研究では、同じHLA変異を持っていても発症する子と未発症の子では腸の中のバクテリアに対して異なった抗体反応を示す傾向があることを発見しました。

腸内細菌と腸のイメージ(出典:LJNovaScotiaによるPixabayから)


自己免疫疾患における腸内微生物叢(腸内フローラ)の役割について調査するために、研究者らは同じくらいの歳の3つのグループ➀クローン病患者 ②T1D患者 ③対照群(病気を持っていない子)の小児患者から血清を採取しました。腸で一般的に見られる細菌と血清サンプルを研究室で培養して、顕微鏡で結果を解析しました。彼らはクローン病とT1Dの両方に罹っている患者が、対照群の子供よりも高いレベルの抗免疫抗体を有することを見出しました。研究者らは、これが自己免疫疾患の子供たちにははっきりと違う腸内フローラがあると考えています。

次に、自己免疫疾患が発症する前に抗免疫抗体が子供に現れるかどうかを調べました。彼らは同じ実験を行いましたが、2回目はHLA遺伝子変異があるけれどもT1Dを発症していない子供からサンプルを集めました。2種類のHLA遺伝子変異体のあるT1Dの子供は、未発症の変異体を有する子供よりも細菌プールに対する反応が弱い可能性が高いことを彼らは見出しました。研究者ら免疫応答を検知することによって、HLA遺伝子変異を持つ特定の子供がT1Dを発症する可能性が高いかどうかを予測できるかもしれないとと考えています。

原著論文

🔵 原著論文:Association of HLA-dependent islet autoimmunity with systemic antibody responses to intestinal commensal bacteria in children (Science Immunology, 01 Feb 2019)

1型糖尿病の主な症状(英語)(出典:by FotoshopTofs /Pixabay)

Seigoの追記

1型糖尿病は子供に多いのですが、早期発見すれば防げるかもしれないということで、その兆候を探ったわけですね。

ということは例えHLA遺伝子変異を持っているお子さんでも、腸内細菌の状態次第では1型糖尿病を発症しない条件が見つかるというわけですね。

さらに進めて考えると、現在1型糖尿病を患っているお子さんでも腸内細菌を整えることによって、例えばHLA遺伝子変異を持っているのに発症していない子供からの腸内細菌を移植することによって、1型糖尿病が治る可能性が出てくるということになるかもしれません。

米国ではインスリンが高すぎて、インスリンを手に入れることができない糖尿病の方が自殺するということが問題になっておりましたが、そういう方も腸内細菌を変えることによって、インスリンの必要のない体になるかも知れないので、ぜひ今後の研究の展開を見守りたいものです。

参考になる書籍

🔵 第2章-10 「1型糖尿病の免疫異常と膵β細胞傷害」という題目でレビューがあります ↓



🔵 1型糖尿病を自力で治した方は実は腸内細菌が変わっていた可能性がありますね。そういう視点で次のような書籍を読み返すとなにかアイディアが得られるかも知れません ↓

 

 

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