エリスリトールで血糖値が上がらない? そのエビデンスとは?

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甘い物が大好きで、ついつい手が出てしまうなんてことありませんか?

ダイエットをしているのに甘い物が我慢出来なかったり、ついたくさん食べてしまう方もいるでしょう。

それで怖いのがインシュリンスパイクです。糖質をいきなり摂ると、インシュリンがたくさん分泌し、スパイクのように急上昇して血管などにダメージを与えることがあります。

そこで救世主として現れたのが、血糖値を上げないエリスリトールなのです。

しかもエリスリトールはカロリーがゼロなので太る心配もありません。

こんな素晴らしい甘味料があるのでしょうか?

ここではエリスリトールで血糖値が上がらないのは本当かどうか、科学論文も交えて調べていきます。

エリスリトールとは

イメージ画像(出典:by sweetsmile/写真AC)


エリスリトール、初めて聞いた方もいるでしょう。

エリスリトールとは人工甘味料の一種で、糖アルコールに分類されています。

味噌やワイン、清酒等の発酵食品から果物に含まれる糖質を抽出し、精製することでエリスリトールが誕生します。一番よく使われる作り方はトウモロコシのコンスターチに含まれるぶどう糖を酵母によって発酵させて作ります。

ぶどう糖とエリスリトールの構造の違い(ぶどう糖は炭素(C)が6個つながっているが、エリスリトールは4個しかない)この構造から甘さを感じる。(著者による描画)


このエリスリトール厚生省の評価法で糖質の中で唯一カロリーがゼロとされています。カロリーはありませんが、砂糖の甘さ程ではないにしろしっかりと甘みがあるので砂糖の代替としても利用されます。

エリスリトールは虫歯にならない!

またよく言われているのがエリスリトール虫歯にならないということです。虫歯の原因は、歯垢中の虫歯菌が砂糖等から酸を作り出すためだと考えられています。 エリスリトール酸を作らないことが確かめられています。 詳しい情報は「トゥースフレンドリー協会」のページをご覧ください。また、最新の研究では実はキシリトールよりエリスリトールの方が虫歯予防効果が高いことがわかってきました(引用文献(英語), 2016年)。

エリスリトールは血糖値を上げない?

エリスリトールの立体構造。この構造が人に甘みを感じさせます。(出典:Wikimedia Commons, By Jynto (talk) – Discovery Studio Visualizer., CC0, Link


どうしてエリスリトール血糖値を上げないのでしょうか?

人間にはエリスリトールを分解する酵素がないので、エリスリトールを摂っても体を素通りするだけと考えられています。腸ではエリスリトールの80%以上は体内へ吸収されますが、腎臓→尿を通して速やかに排泄されてしまうのです。

ただこれだけでは血糖値が上がらない証拠にはならないので、実際にエリスリトール20gを2週間とり続けてどうなるかを調べた研究があります。しかも血糖コントロールのうまくいかない糖尿病患者さんに協力を得てテストされました。その結果、2週間毎日エリスリトールを摂取しても糖尿病患者さんの血糖値に影響がなかったという結果が出ています。(参考文献(英語), 1996年)

エリスリトールのデメリット

粉末タイプとして売られているラカントs(原材料をみるとラカンカよりエリスリトールのほうが多いことが分かります。またそれはトウモロコシ由来であることが確認できます)〔画像はクリック/タップすると拡大できます〕著者撮影


エリスリトールは血糖値を上げない食品ですが、デメリットもあるので注意が必要です。

遺伝子組み換え食品(GMO)である可能性が高い

エリスリトールはトウモロコシから作られる場合がほとんどです。しかし、アメリカではトウモロコシの90%以上は遺伝子組み換え食品(GMO)ですから、大量生産されたGMOのトウモロコシから作られたエリスリトールである可能性が高いです。

これは現在進行中の研究で、まだ議論の余地のあるトピックですが、動物を使った研究ではGMOの摂取で、不妊 免疫の問題 加齢の加速 インスリン調節の欠陥 主要臓器と消化器系の変化 などが生じることが示唆されています(参考資料(英語)-B1)。

エリスリトールと果糖を一緒に摂ると下痢になりやすい

エリスリトール果糖を同時に食べると 下痢 を誘発するという研究結果がでております。特に炭水化物の吸収不良が起きたそうです(参考文献-B2)。下痢は無害に聞こえるかもしれませんが、 脱水 電解質の不均衡 栄養失調 につながる可能性があります(参考資料-B

糖アルコールに敏感な方はお腹の調子を崩すことがある

糖アルコールとはキシリトールやスクロースなどの糖の一種(甘味料)で、体で代謝されないためカロリーが低く抑えられるというメリットがあります。エリスリトールもこの糖アルコールに分類されますが、このような体で代謝されない甘味料に腸が過敏に反応してしまう方は次のような副作用が出ることがあります(参考資料-C):

けいれん
吐き気
膨満感
下痢
頭痛

下痢はよく知られている一般的なエリスリトールの副作用ですが、その作用は「腸から吸収されなかったエリスリトールが腸壁から水を引き付けるために下痢を引き起こす」と考えられています。(参考資料-B

エリスリトールの許容量

調査の結果、体重50kgの人は約50gのエリスリトール(0.45g/体重1ポンドあたり)がほとんどの人にとって忍容性が高く安全であることが示されています(参考文献(英語): A-5, 6)。しかし、ある研究では1回のエリスリトール50gの摂取で吐き気と胃のゴロゴロ(音)を増加させるという報告がありました(参考文献: A-7)。

一度に大量に食べない限り、胃の不調を引き起こす可能性は少ないですが、エリスリトールに感受性の高い方は摂取量に気をつけた方がいいでしょう。

Seigoの追記

一般的にはエリスリトールは非常に安全であると考えられています。

カロリーや血糖値を気にする方には理想的な甘味料です。またエリスリトールは虫歯にもなりにくいというメリットがあります。

ただしこのような新しい甘味料は本当に安全であるかどうかは長い間テストしてみないと分からないというのが本当のところでしょう。モンサントの遺伝子組み換え食品を使った動物実験では2世代後になって初めて不妊などの影響が出ているものがあります。それを人間に換算すると1世代が約30年としますと、2世代までは約60年待たないと結果が出ないということになってしまいます。安全かどうか分からない物は口にしないほうが無難でしょう。

エリスリトールで血糖値が上がったとネットで書き込みが見受けられる

ネットでの書き込みの中でエリスリトールを摂取して血糖値が上がったという書き込みが散見されます。

例えばAmazonでは1型糖尿病の人がエリスリトールしか入っていない甘味料を摂って血糖値が上がったと書き込みがありました。(Amazonコメント欄、2019年2月20日)

これはどういうことが起きたのか考えてみますと、美味しい物を食べた時に分泌される「オレキシン」という神経ペプチドがありますが、これがすい臓のインスリンとグルカゴンを分泌する作用があるそうなんです。1型糖尿病の方はインスリンが分泌されませんが、グルカゴンは分泌されることを考えますと、血糖値が上がる可能性があるわけです。

実際にラットではオレキシンがすい臓に働きかけてインスリンとグルカゴンを分泌させたという研究報告があります参考文献(英語) 2003年)。

このことから推測するとエリスリトールで美味しさを感じた場合、人間でもオレキシンが脳から分泌されて、すい臓のグルカゴンの分泌を促し、(血糖値を上げないエリスリトールを摂っただけでも)血糖値が上昇することが考えられます。(人での研究を待ちたいところです。)

有機のエリスリトールが出るまで待つ

現在のエリスリトールは「有機」と書いていないので、ほとんどが遺伝子組み換え食品(GMO)のトウモロコシ由来である可能性が高いことはすでに述べました。GMO食品を避けるには「有機」や「自然農法」と書いてある食材を探すしかありません。

またトウモロコシではなく別の食材から(GMOではなことがわかっているもの)エリスリトールを作っていることが確認できればそれは安心材料でしょう。原材料が分からなければ、特にエリスリトールを摂る必要なく、将来登場するかもしれない「有機エリスリトール」や「有機ラカント」などの商品を気長に待ちましょう。結局、消費者がGMOにノーといえば、業者は有機やノーGMOから商品を作るしかなくなるのですから。

参考資料(英文)

A. Erythritol — Like Sugar Without the Calories? (Healthline) April 23, 2018

B. Erythritol: Is This “Healthy” Sweetener the Real Deal?Dr. Ave)August 20, 2019

C. Can You Use Erythritol as a Sweetener If You Have Diabetes? (Healthline) May 31, 2016

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