被ばくに”安全”という概念はないことを決定的にした大研究【武田邦彦】

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武田邦彦先生が「今日の発表をもって原発に関する日本の議論を全部終わらせたい」とした「虎ノ門サイエンス」のコーナをまとめました。

これを聞いて、日本人全員が日本の将来の発展のために原発を考えるようになって欲しいと武田先生は願っております。

番組ではデーターの元になった引用文献は示されておりませんでしたが、その文献を見つけましたので、そのリンクを本文内に貼っておきます。

放送日は2019年10月4日(金)です。

虎ノ門サイエンス「被ばくと健康」武田邦彦

第一原則:被ばくに「安全」という概念はない

1970年頃の被ばくの研究では、被ばくに関しては安全かどうかすぐにはわからないという結論になりました。
わかっていることは
(1)2シーベルト(Sv)くらいの強力な放射線を浴びると数日で死亡。
(2)自然放射線では生物は生存している。
この2つの線量の間をいくら研究してもデータがばらついてわからなかった。

🔴 700万匹を使った「メガマウス計画」の結果
1980年頃の研究で、700万匹の「メガマウス計画」ではすぐ死亡する強さからどこまでが安全かを調べたが、マウスは苦しみながら死んでいくまうすもいてかわいそうでしたが、結果は分かりませんでした。
つまり、放射線量がどの程度なら安全か分からないことがわかりました。(つまり安全な線量はなかった)

このことが日本人が福島の原発事故後でさえ、まだわかっていないことです。

被ばくに「安全」という概念はない

〔※ 武田先生自身もそのことについてははっきり気づいておらず、先日 松井市長が「安全」(2019/9/21の記事参照)というので「原発に安全なんてないよっ」ということを皆さんが見逃していることに改めて気づいたのです。〕

メガマウスの論文は次の PNAS 誌のようです。

引用文献

Mutation frequencies in male mice and the estimation of genetic hazards of radiation in men.
W L Russell and  E M Kelly, Proc Natl Acad Sci U S A. 1982 Jan; 79(2): 542–544.

たった3ページの論文ですが表1(Table 1)のデーターには150万匹を超えるマウスのデータが出てきますので、本当に「メガマウス計画」というのはあったようです。この論文以前にもメガマウスの結果報告はあったようです(上記の PNAS 誌の参考文献に載っています)

⭐️ ⭐️ ⭐️

そして国際的には次の原理を被ばくに対して一般的に使用することにしたのです。

正当化の原理

被ばくは損害 → 被ばくは安全とは言ってはいけない。
損害に見合うメリットがある場合のみ認められる →(これを線量限度ということにしました)

線量限度の意味は社会的に耐えられない限度のことをいいます。(下の図も参照)

社会的(注意:体ではない)に耐えられない線量限度 (unacceptable) :1ミリシーベルト/1年
望ましくないが社会的に耐えられる線量(tolerable): ← 汚染水を放出するかどうかはここのレベル。飛行機はある程度被ばくしても行きたい所に行けるメリットがある
受け入れできる線量(acceptable):がれきなど

③ 免除レベルも決めておく
安全だからとはいえないが、メリットがなくても社会的にまぁいいやということでacceptable(がれき受け入れなど)。

武田邦彦(中部大学)ブログより

子供のレントゲン検査減少の歴史&理由
🔴 胸部レントゲンも昔は小学校でとっていたが 白血病が増えた ため、年1回になり今では2年に1回変更。
🔴 児童の 肺がんが増えた ので社会的に耐えられないということで6年に一度となり、今では任意となった。

(Seigoの補足:白血病と肺がんの2つの病名が出てきて、どちらか1つではないかと思いましたが、武田先生の述べた通りに書かせていただきます。)

今回のトリチウム水も安全かどうか議論してムダ。(安全なレベルは分かってないので)

第二原則:被ばくは次世代を考えて設定される

被ばくは次世代を考えて設定され、被ばくが孫まで影響ないかどうか、奇形児が生まれないかということ。

水を飲んでも私は死にませんよっというのは、今の基準とは関係ない。

遺伝子への影響を考慮する
1960年くらいのビキニ環礁では個人が死なないレベルを研究していたが、奇形児などが生まれたりして 遺伝子が損傷して次の世代に伝わることも考慮され、容認できる領域と容認できない領域の基準を作った。

孫まで影響ありそうなところは容認できないので、容認できる量として事故が100〜1000年に1度くらいなら、1ミリシーベルト/1年まで被ばくを容認した。1000年か10000年ほど稀なら、10ミリシーベルト/1年まで被ばくを容認した。
決して科学的に安全かはいえないが。
今は50年でチェルノブイリと福島が起こってしまったので、当然1ミリシーベルト/1年以下が容認量(本当は0.1ミリシーベルト/1年以下)となるはず。

放射線については基本的に安全という議論はできないこと、全て損害としてメリットのあるもののみ認めますということになります。

ベラルーシの人口増減図

ベラルーシの人口増減図(出典:哲野イサクの地方見聞録、http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/genpatsu/ukraine2.html


チェルノブイリ事故後 子供の出生率と自然増減低下&死亡率上昇
グラフを見るとチェルノブイリ事故後のように感じるが、事故5年後のソ連の崩壊が原因と言えなくもない。ウクライナも同じようなデータということでどちらとも取れます。

ですが福島で原発事故が起きでも自然の10ミリシーベルトでも生きているじゃないかという人もいますが、一つだけ取るとそうでも素人は気をつけて発言すべきです。
要するにデータは1万も2万もあるけど見方によって違ってくるので、一例や二例あげてもどうにもならないです。(どのレベルが安全でどのレベルが危険かは言えない)

福島事故後、公的規制(1mSv/y)を言う人は武田先生以外いなくなった

仕方がないから1年に1ミリシーベルトという限度を作ったが、原発事故当時に1mSv/yの規制はないと言った人は発言の資格は今後ありません。ウソをついたのだから。

週刊新潮が原発の専門家10人を出してきて武田は何も知らないとか言ったが、
国立がんセンター公表データによると、

🔴 1mSv/yあたりの致死的発がんは10万人あたり5人
🔴 重篤な遺伝的影響10万人あたり1.3人

10万人あたり6.3人→年間死亡者は8000人ということになり、交通事故死亡者とほぼ同じくらい。

原発のメリットの代わりに8000人の損害は仕方ないということです。
これははっきりしたデータではありませんが。それに応じて被ばく限度が定められ、産業省が1mSv/yと発表していたのが福島事故時の状態です。

このことを日本国民に紹介したのは僕だけでした。それで発注(仕事)が全部消えました。だから誰もいえませんよ。若かったら言えません。年取ってたから言えたんで。産業大臣が1mSv/yと発表してますよなんて言ったら翌日から干上がっちゃうんだから。日本て民主主義?発言の自由てあるの?

そしてNHKは爆発の起こった日の16時半許容限度1mSvの何千倍ですとか言ってました。(証拠持ってます。)で、18時のニュースから限度を全く言わなくなった。この1時間半に外圧がかかったから言わなくなったのか、自主的なのか明らかにしてほしいです。そのあとは僕しか言わなくなってしまいました。そして武田一人が言ってるのはおかしい、嘘だろという批判がありました。

ウソをついたものだから今 原発再開してますが、国民(の安全)は守られていません。この通商産業大臣の告示一般公衆に対する線量当量の限度を1mSv/年(実効線量当量)とする)が生きているかどうかもわからない。
ある会で党首の福島瑞穂さんに会ってこのこと言ってくださいと、左翼の人だから言うかと思ったけど、「法律にありませんので言えません」と武田先生に言った。しかし告示は(上記のように)存在したがないものとした。
なのであの時の「国民に事実を知らせてはいけない」という非常に強い確信(意向)が日本にありました。

(2011年は原発関係の本を武田先生は19冊出しましたが、8月頃の書籍に上記のことが書いてあるそうです。)

トリチウムの安全性は不明

・トリチウムは半減期12年余
・海水にも存在するがどの程度から有害か不明(有害という人、無害という人がいる)
・発がん性があるからと言って有害とは限らない(武田先生の例:タバコを吸うと発がん性物質が体に入るが、そのことによって免疫力が上がり健康になる。)
発電所から放出されるトリチウム安全だからではなく除去できないから(仕方なく)放出されている。
事故によるトリチウムの放出限度については社会的合意はまだない。
・仮に将来原発が必要ならば、いい加減なことはしないほうが原子力のためなる。ウソをつけば技術が完成しないので。

(武田先生は)原子力は反対ではないが、上記のような技術が完成してない段階で進めるのはよくない。早すぎる。原子力はもうちょっと分かってからの動かした方がいいと思います。

【参考番組】虎ノ門ニュース 2019/10/4(金)〔DHC TV, YouTubeはリンク切れ、ニコニコ動画(有料) 〕

Seigoの追記

100万匹以上のマウスを使った実験があったとは知りませんでした。私たちのために犠牲になっていただきありがとうございます。動物供養をしなくてはいけませんね。

しっかり論文も上記に引用させていただきましたので、研究結果に興味のある方は目を通してあげて下さい。

日本の有識者さえほとんど知らないホルミシス効果の知識

ただ武田先生もそうですが、虎ノ門ニュースのメンバーは放射線のホルミシス効果については誰も語る方はいませんね。

例えば低線量(0.1〜0.5 Gy)を短期間に浴びた場合はDNA損傷の割合が自然界レベルよりも減り、問題のある細胞を除去する活性が増す(体の中をクリーニングする効果が増す)ことが分かっています。(2000年以降の論文に見られます)

このような効果からラドン温泉でがんが治ってしまうというようなニュースが出たりした時期がありましたが、メディアは取り上げず、また日本の省庁は研究費を出さなかったため、今ではないものとされています。しかし論文上はしっかりと残っていますので、代表的な文献を以下に示します。

🔵 Feinendegen LE, Pollycove M.
Biologic responses to low doses of ionizing radiation: Detriment versus hormesis. Part 1. Dose responses of cells and tissues.
J Nucl Med 2001;42:17N– 27N.

🔵 Tubiana M, Feinendegen LE, Yang C et al.
The linear no-threshold relationship is inconsistent with radiation biologic and experimental data.
Radiology 2009;251:13–22.

🔵 Pollycove M, Feinendegen LE.
Biologic responses to low doses of ionizing radiation: Detriment versus hormesis. Part 2. Dose responses of organisms.
J Nucl Med 2001;42:26N–32N, 37N.

🔵 Vilenchik MM, Knudson AG.
Radiation dose-rate effects, endogenous DNA damage, and signaling resonance.
Proc Natl Acad Sci USA 2006;103:17874–17879.

🔵 Hosoi Y, Sakamoto K.
Suppressive effect of low dose total body irradiation on lung me- tastasis: Dose dependency and effective period.
Radiother Oncol 1993;26:177–179.

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