腸の幹細胞を若返らせるサプリとは? 老化した腸幹細胞を増やすことに成功! (MIT・東大チーム)

ニュース/レビュー

今回は腸もある幹細胞の増やす方法が発見されましたので、その報告です。

MITのプレスリリースを翻訳しましたのでご紹介します。

ニュースタイトル「生物学者は腸幹細胞集団を増やす方法を見つけます

タイトル副題:幹細胞を刺激することで加齢性疾患から消化管を保護できる可能性があることが研究により示唆されています。

MITの生物学者は若いマウス(左)と比較して、腸・幹細胞集団が老齢マウス(右)で減少することを発見しました。 腸管幹細胞に関連するタンパク質をコードするメッセンジャーRNAは黒で標識されている。(出典:MIT NEWS


腸管の内側を覆う細胞は数日で入れ替わりますが、この頻繁な交代は十分な量の健康な腸幹細胞の存在によって可能となっています。MITと東京大学の生物学者は老化が腸幹細胞の大きな負担となり消化管の疾患に対する罹患率を増加させている可能性があることを発見しました。

研究者らは腸幹細胞を増やす役割をもつ化合物を用いることで、加齢マウスでこの現象を打ち消せることを示しました。この化合物は長寿関連タンパク質サーチュインも関わっている経路に作用しますが、その結果加齢に伴う腸の損傷を保護する機能を持つかもしれません。

「加齢に伴う問題の1つは臓器の機能不全ですが、その臓器を養い充填する幹細胞の活性低下が起きています。そのため加齢を遅らせあるいは若返らせるための有用な介入ポイントとなり得ます」とMITのLeonard Guarente教授は述べています。

Guarente教授と東京大学の山内敏正教授は、3/28の Aging Cell 誌に発表された本研究の首席著者で、筆頭著者はMITでポスドクを勤め現在は東京大学に所属する五十嵐正樹氏です。

細胞数の増加

NRの構造(出典:Wikimedia commons)


Guarenteの研究室では、加齢とサーチュインの関係について長らく研究してきました。サーチュインはほとんど全ての動物に見られるタンパク質でアンチエイジングの役割をもち、カロリー制限に影響を受けることが知られています。

2016年の研究で、Guarente教授と五十嵐氏はマウスにおいて低カロリー食が腸幹細胞のサーチュインを活性化させ、細胞増殖を促進させることを明らかにしました。次なる研究では、加齢が幹細胞数の減少に関わるかどうか、その減少を回復できるかどうかをテーマとして設定しました。

3〜5ヵ月齢のマウスと2年齢のマウスを比較すると、年配のマウスでは明らかに腸幹細胞の数が減少していました。また幹細胞を取り出し培養すると、年配マウスからの細胞では小腸上皮の構造に似た腸内層様の細胞塊への分化能が低下していました。さらに年配マウスの幹細胞ではサーチュインの量が低下していました。

老化の影響が確定したことから、ニコチンアミドリボシド(NR)と呼ばれる化合物がその影響を元に戻すことができるか検討しました。この化合物はサーチュインSIRT1を活性化する補酵素であるNADの前駆体です。年配マウスにNRを含む飲料水を6週間与えたところ、腸幹細胞数が回復し、培養での腸内層様の細胞塊への分化能も若いマウスと同等の程度を示しました。

この幹細胞数の回復が健康に寄与するものかどうか調べるため、研究者らはNRを与えた年配マウスに大腸炎を引き起こす薬剤を投与しました。その結果、NRによって炎症と組織損傷が防げたことが明らかとなりました。

「幹細胞を増やすだけで、健康に良い影響を及ぼしたことになりますが、実際がこの通りとは限りません。NRの摂取によって腸が本当にストレス耐性となるかどうか非常に興味深い点です」とGuarente教授は述べています。

保護効果

腸のイメージ(出典:bodymybodyによるPixabayからの画像)


Guarente教授は、NRが以前発見したある経路に作用しているのではないかと考えています。すなわち、NADのSIRT1だけでなくmTORC1と呼ばれる細胞内でのタンパク質合成に関わり細胞増殖を促進する遺伝子の働きへの関与です。

「我々の仮説は、老齢マウスへのNAD補充がSIRT1とmTORを介する経路を促進させ、加齢による細胞数減少を回復させる、というものです」

これらの発見は高齢者の大腸炎などの腸の疾患を、NADによって防止できる可能性を示すものです。Guarente教授らは以前、NAD前駆体が血管や筋肉の成長を刺激し、マウスの持久力を高めることを明らかにしています。また、2016年にスイスの研究者らによって老齢マウスにおいて、NADの注入が筋幹細胞の増加を引き起こすことが見出されています。

2014年、Guarente教授はElysium Health社を設立し、SIRT1の活性化剤である天然化合物プテロスチルベンとNRとの化合物を含んだ栄養補助食品を販売しています。

引用ニュース & 原著論文

🔵 英語ニュース:Biologists find a way to boost intestinal stem cell populationsMIT NEWS

🔵 引用原著論文 :NAD+ supplementation rejuvenates aged gut adult stem cells ( 2019 Mar 27)

Seigoの追記

アンチエイジングの王道な研究です。

小食でサーチュイン遺伝子が活性化して若返りが起こるというわけで、NRもサーチュイン遺伝子を活性化させます。それで腸の幹細胞を増やしてくれるのでいいというわけですね。うーん、素晴らしい・・・

Amazon で売っているNAD前駆体の商品

(商品をクリック/タップするとAmazonの商品ページへジャンプするようにリンクを貼っておきました)


 

 

関連記事一覧

  1. この記事へのコメントはありません。