新型コロナがなぜ鼻に感染し匂いの感覚を失うのかの仕組みを解明!? フーリン配列の重要性が浮き彫りに【サイエンス誌】

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新型コロナウイルスはスパイクタンパク質(ウイルス表面の突起の部分)の中にフーリン配列という特別な切断を誘発するアミノ酸配列が入っていて〔SARSにはないがHIVやMARSは持っている。YouTube動画『新型コロナウイルスにあった特別な2つの配列 – エイズ(HIV)の配列が入っているか実際に検証(後半)』(3分12秒から自動スタート)で解説済み〕、それが他のコロナウイルスと決定的に違います。

そしてフーリン配列がスパイクタンパク質内に存在すると感染力が強くなるのですが、今回のサイエンスの論文でウイルスのタンパク質がフーリンで切られた後で、嗅上皮に多いニューロピリン-1と結合して感染を促進させていることがわかりました。それによってACE2の少ない嗅上皮などのような細胞にも感染し、匂いがわからなくなったりなどの症状が出るということです。ニューロピリン-1心血管系や神経、免疫などで大切な働きをする受容体です(下の図参照)。

今回はこの研究論文がサイエンス誌で発表されたので、要点をまとめました。

肺と鼻に多いニューロピリン-1がACE2受容体への感染を促進する

NRP1(ニューロピリン1)がスパイクタンパク質(突起)内にあるフーリン配列切断面を認識し、ACE2に受け渡すことによって感染力を増していることが示唆されました。(出典:Medicalxpress.com


ドイツにある神経変性疾患センター (DZNE) とフィンランドの国際研究チームは、SARS-CoV-2が細胞への侵入を促す要因としてニューロピリン-1(neuropilin-1;NRP1)を特定しました。ニューロピリン-1は呼吸器や嗅上皮にあり、SARS-CoV-2の感染性と拡散に重要な可能性があります。ドイツ神経変性疾患センター、ミュンヘン工科大学、ゲッティンゲン大学医療センター、ヘルシンキ大学などの研究機関によってサイエンス誌に発表されました。

SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)は、受容体ACE2を介して細胞に感染し、主に肺や腎臓などさまざまな器官に影響を与え、一時的に嗅覚や味覚を失うなどの神経症状を起こす可能性があります。したがって、COVID-19に関連する症状の範囲は非常に複雑です。2003年のSARS-CoVはおそらく感染が下呼吸器系に限定されていたので、ウイルスの伝染力が弱かったためそんなに流行りませんでした。対照的にSARS-CoV-2は鼻粘膜など上気道系に感染するので、くしゃみなどによりウイルスが外に出ていき急速に広がります。

細胞へのドアオープナー

組織親和性は、ウイルスがいろいろな器官で特定の細胞に感染できる能力を示しています。それは細胞の表面にあるくっつくところ、つまり受容体の利用可能性によって決まります。これらは細胞にくっついて入り込むことを可能にします。「そもそもSARS-CoVのとSARS-CoV-2は同じ受容体から侵入するのになぜ症状が違うのかと言う疑問からこの研究を始めました。」とドイツ神経変性疾患センターのグループリーダーであるミカエル・シモンズ教授は説明しました。

組織親和性の違いを理解するために、ウイルスの侵入に欠かせないウイルスの「スパイクタンパク質」を調べました。
「SARS-CoV-2スパイクタンパク質は、フーリン切断部位が挿入されているところがSARS-CoVとは違います。」とシモンズ教授は説明しました。「同様の配列はエボラやHIV-1などの病原性の強いウイルスのスパイクタンパク質にもあります。このフーリン切断部位がSARS-CoV-2にもあるとわかった時、これが答えにつながるのではないかと考えました。
タンパク質がフーリンによって切断されると、特定のアミノ酸配列が切断された末端で露出します。このようなフーリンによるC末端配列は、細胞の表面でニューロピリン受容体に結合して活性化することがわかっています。

培養細胞の実験で、SARS-CoV-2のスパイクタンパクを加えたレンチウイルス粒子(SARS-CoV-2疑似ウイルス)がニューロピリン-1とACE2の存在下で感染を促進できることを示しています。ニューロピリン-1抗体で特異的に遮断すると感染を抑制しました。「ACE2を細胞に入るドアとすると、ニューロピリン-1はウイルスをドアに向ける要因のようです。ACE2はほとんどの細胞でほんの少ししかないので、ウイルスがドアを見つけるのは簡単ではありません。ニューロピリン-1など他の要因がウイルスを助ける必要があるかもしれません」とシモンズ教授は説明しました。

ニューロピリン-1はウイルスを鼻から中枢神経系へ輸送する可能性がある

匂いの喪失はCOVID-19の症状のひとつですが、ニューロピリン-1は主に鼻腔の細胞層にあるため、死亡した患者の組織サンプルを調べました。「ニューロピリン-1を持つ細胞がSARS-CoV-2に感染するのは本当でした。」とシモンズ教授は述べています。
マウス実験では、ニューロピリン-1が鼻粘膜から中枢神経系への小さなウイルスサイズの粒子の輸送を可能にすることを示しました。これらのナノ粒子は、ニューロピリン-1に結合するように化学的に設計されています。ナノ粒子が動物の鼻に投与されて数時間以内に、ニューロピリン-1に親和性のない粒子(コントロール)とは対照的に、脳のニューロンと毛細血管に到達しました。「ニューロピリン-1を特定できました。少なくとも私たちの実験の条件下では、脳への輸送を促進しますが、これがSARS-CoV-2にも当てはまるかどうかについての結論は出せません。ほとんどの患者では、この経路が免疫系によって抑制されている可能性が非常に高いです」とシモンズ教授は説明します。

将来の治療法の出発点は?
「SARS-CoV-2はACE2受容体を使って細胞に入りますが、ニューロピリン-1のような他の因子がサポートするために必要かもしれません。しかし今の段階では関与する分子プロセスについてしか推測できません。おそらく、ニューロピリン-1はウイルスを捕らえ、ACE2に向けます。この問題を明確にするには、さらなる調査が必要です。ニューロピリンの遮断が治療として使えるかどうかは、将来の研究で対処する必要があります。」

参考ニュース&文献

🔵 プレスリリース: Coronavirus: Study finds further door opener into the cell
German Center for Neurodegenerative Diseases   OCTOBER 20, 2020

🔵 原著論文(オープンアクセス;全文を無料で読めます):Neuropilin-1 facilitates SARS-CoV-2 cell entry and infectivity
Science, 20 Oct 2020

seigoの追記

新型コロナの突起部分にあるフーリン配列でなぜ感染力が上がるのか分かっていませんでしたが、このニューロピリン-1が1つの理由のようです。特に鼻に感染して、匂いの感覚がなくなるのは、このニューロピリン-1のためのようです。さらにナノ粒子の実験ではウイルスがニューロピリン-1の手助けを借りて中枢神経系にも運ばれる可能性があるとのことですから、鼻の神経が麻痺して匂いの感覚がなくなるのはこのためなのかも知れないと、世界で初めてこの現象の理由が示唆されました。

こういう機構を逆に抑えれば、感染力を落としたり、匂いがしなくなるのを防いだりすることが出来るようになってくることでしょう。

その方法が見つかるまで待てそうにないので(次の強毒型ウイルスが日本へ入っていく可能性が冬に高いので)、とりあえず日本人は海藻やカテキン(緑茶の苦い成分)を頻繁に飲んで、新型コロナウイルスのACE2への感染力を抑え込んでしまいましょう(海藻やカテキンの分子はスパイクタンパク質をくるんでしまってACE2受容体への感染を邪魔する働きがあります。すでにいくつかの論文をこのサイトで紹介済み)。

日本人だけが海藻を分解する腸内細菌を持っているので、これも日本人の強みですね!😄

(海藻の話しはYouTube動画『抗体検査で日本の陽性者は1000万人以上になる!? 外出規制が続くと死者数が100倍増える理由【新型コロナを抑える方策③】』(7分50秒から自動スタート)で紹介済み)

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