ネオニコチノイドは土壌に住むハチ(雌)を巨大化させ短命にする(2019年米国研究) 

ニュース/レビュー

今回は土に住むタイプのハチの発育や寿命に農薬が悪影響を及ぼしているかもしれないという報告です。

米国イリノイ大学が最新研究をプレスリリース(英文)を翻訳してみましたので、ここにご紹介します。
(訳しづらいところは変な日本語になる時がありますが、許してね 😅)

ニュースタイトル「農薬は土に住むハチの発育と寿命に及ぼす影響」

本研究はネイチャーの姉妹紙 Scientific Reports 誌に掲載されたましたが、土の中に巣を作るハチの種類がありますが(こちらの種類のほうが多い)、農薬が及ぼす非標的効果をハチで調べたものです。非標的効果とは、意図したもの以外の生物に対する影響のことを意味します。農薬の非標的効果について、現在の研究はミツバチおよびマルハナバチなどのハチ類が花粉と蜜を集める時の農薬への接触に関するものに限られていました。

以前の研究からミツバチやマルハナバチが農薬を摂取してしまうことによって重要な生態学的影響をもたらす可能性は示されていましたが、本研究はこれらとは異なるハチの種類が土壌中の農薬との接触が及ぼす影響を判断する最初の研究です。

「この研究はハチが農薬にさらされる経路として土壌中に蓄積した農薬の実際の濃度に注目する初めての研究として重要です。特に地中に巣を作る孤立種であるハチのためのまさに探索中の手法です。」と、アレックスハーモンスレット(Alex Harmon-Threatt)昆虫学教授と共にこの研究を主導した昆虫学の大学院生、ニックアンダーソン(Nick Anderson)が語りました。

土に巣を作るハチとミツバチの類縁種の主な違いは、土壌を掘って作られる巣のサイズが(大きさとハチの数の両方の点で)小さいことです。このように地中で営巣(えいそう;動物が自分の巣を作ること)しているハチの種類は、一年のうち49週間を地中に留まり、たった3週間のみ地上に現れては餌をあさり交配し、そして産卵するのです。このことからこの種のハチは、収穫後の農地の土壌中に見られる慢性的な低レベルの農薬に長時間曝されることになります。

研究者たちは特にネオニコチノイドという農薬に興味を持っていました。ニコチン由来のネオニコチノイドは、ニホンカブトムシやアオナガタマムシなどの昆虫によく効くので広く使用されていますが、花粉媒介者に有毒な場合があります。この種の薬剤はまた半減期が長く、その効力が土中に長期間持続することができることを意味するものです。

ハナバチは毛に覆われていて花粉を集めやすい。(出典:skeezeによるPixabayからの画像)


Anderson教授とHarmon-Threatt氏は、実験室での試験には地中に営巣する種類に極近い種のハチを使用しましたが、理由はそれが研究室テストにより適し以前にも農薬の土に巣を作る種への影響を総括するための研究に使用したことがあるからです。

研究室でハチをネオニコチノイドに曝し、野外で見られたものと同様の暴露レベルでチェックしました。その結果、雌バチはより大きく成長したが短命であった一方、雄バチはより小さく成長したが、より長生きしたことが判明しました。この結果は、農薬への慢性的な低レベルの暴露がミツバチにホルミシス*効果を引き起こし、そこでは農薬への低レベルな暴露に対しては、小型化が有利であることを示唆するものです。

〔 ※ ホルミシスとは、ある物質が高濃度あるいは大量に用いられた場合には有害であるのに、低濃度あるいは微量に用いられれば逆に有益な作用をもたらす現象を示す言葉です。(saiki.tv) 〕

ただし、これらの変化に伴う長期的な影響の中のあるものについては、すぐには判明しない可能性もあります。研究者らは、これらのより低い暴露レベルが影響して、物理的および生化学的障壁を強化する通常の成長過程に消費するエネルギーを農薬に対抗すべく消費するなど、ミツバチの成長に変化を引き起こすと信じています。

ハナバチは花粉を引っかける長い毛を持ち、長い舌でミツを集める。(出典:Kevin PhillipsによるPixabayからの画像)


ハーモン博士は、「ハチが生きている場所などにネオニコチノイドを撒いたりするとき、良いとか悪いと言った結論を期待すると思いますが、私たちが見ているたくさんの関連性はそれよりずっと複雑なのです。農薬が及ぼす影響には多くの要因と開発プロセスがあります。」として、

「新しい農薬を開発するに際しては、その影響を理解する見識が必要です」とアンダーソン氏は言います。「私たちの仕事は部分的に、ある種のリスクアセスメントに属するものです。私たちが農業のために土地を使用したりそれを回復しようとしたりする場合、地中に営巣するハチについて、その種のハチへの影響を最小限にできるよう、その情報を知りたいと思います。」と述べています。

この研究は、ハーモン博士の研究室が今後5年間に渡ってこの研究分野を拡大するための基礎を築くものです。ハーモン博士は2018年に、米国農務省の食品・農業研究所から100万ドルの助成金を得て、土壌汚染がハチの多様性と保全に果たす役割をよりよく理解するための研究を行いました。

引用ニュース & 原著論文

🔵 英語ニュース:Pesticides influence ground-nesting bee development and longevityイリノイ大学

🔵 原著論文(オープンアクセス;論文の全文がご覧になれます): Chronic contact with realistic soil concentrations of imidacloprid affects the mass, immature development speed, and adult longevity of solitary bees ( Scientific Reports, 2019)

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Seigoの追記

ネオニコチノイドの汚染の研究はミツバチでよく調べられていますが、今回は論文で調べたハチの種類はハナバチと呼ばれる種類でハキリバチ(Megachile rotundata)とツツハナバチ(Osmia lignaria;orchard bee)が調査されました。

記事中でも出てくるとおり、ハナバチは地中に巣を作ることが多いため、近くにいても私たちは気づかないようです。

ネオニコチノイドの土壌汚染は食べ物からより(野菜に含まれている量より)2〜60倍も高く(上記の論文より)、土に住んでいれば長い間さらされ続けるので、当然体内への影響は大きくなりますね。

今回は以外に知られていない土壌に住むハナバチに対するネオニコチノイドの影響についての初めての報告でした。

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