認知症やアルツハイマー病は睡眠の質の低下が原因か!? 深い睡眠が脳内清掃に重要な事が判明!

ニュース/レビュー

今回は「脳の老廃物を除くには深い眠りが必要」という報告です。これは認知症の予防や改善にも関わってくる大切なことなので取り上げました。

米国ロチェスター大学のプレスリリースを翻訳しましたのでご紹介します。

また原著論文(英語)はオープンアクセスなので全文が閲覧可能です(下にリンクを貼っておきます)。

ニュースタイトル「脳の掃除に関しては睡眠は平等ではない」

睡眠の深さが、脳の老廃物や有毒なタンパク質を効率的に浄化する能力にどのように影響を与えるかについての研究が行われました。私たちが年をとるにつれて睡眠は浅くなりしばしば目覚めることが多くなるため、この研究によって、老化、睡眠不足、アルツハイマー病になる危険率との関連性が説明できるかもしれません。

筆頭著者のロチェスター大学の並進神経医学センターの共同ディレクター、Maiken Nedergaard博士は、次のように述べています。
「この研究では睡眠は脳の老廃物除去の機能にとって重要であり、睡眠が深ければ深いほど効果が良いことを示しています。これらの発見はまた、睡眠の質や睡眠不足の度合いを調べることによって、アルツハイマー病および認知症の発症を予測できることを、さらに明確にするものです」

脳は睡眠中に浄化される(イメージ画像の出典先:CollectingPixelsによるPixabayからの画像)


Science Advances 誌に発表されたこの研究では、深いノンレム睡眠に関連したゆっくりと規則的な脳と心肺の活動が、脳のユニークな老廃物除去システムである、グリア細胞-リンパ連関機能にとって最適であることを示しました。この知見はまた、なぜある種の感覚消失が高齢者の認知障害につながるのかを説明するかもしれません。

グリア細胞-リンパ連関機能は、2012年にNedergaard博士らによって初めて記述されました。それ以前には、科学者たちは閉鎖された生体システムである脳がどのように老廃物を除去しているのか完全には理解できていませんでした。血管と抱き合わせた配管システムと、脳脊髄液(CSF)のポンプ作用によって、老廃物が脳組織を通過し洗い流されることが明らかになりました。その後の研究で、このシステムは主に睡眠中に機能することが示されました。

ベータアミロイドやタウなどの毒性タンパク質の脳内での蓄積はアルツハイマー病に関連しているため、研究者らは睡眠障害によるグリア細胞-リンパ連関の機能障害が、この疾患を引き起こすことにつながると推測しています。これは睡眠不足とアルツハイマー病のリスク増加との間の関連性を示す臨床所見と一致しています。

今回の研究では、6つの異なる麻酔法を用いたマウスで実験が行われました。麻酔下の動物において、脳の電気的活動、心臓血管活動、そして脳を通るCSFの浄化の流れを追跡しました。その結果、ケタミンとキシラジン (K/X) の組み合わせが、ノンレム睡眠時の、脳のゆっくりとした安定な電気活動と少ない心拍数とを最もよく再現するものとわかりました。さらに、K/X を投与したマウスの脳内の電気的活動は、グリア細胞-リンパ連関機能に最適であることが明らかになりました。

蛍光トレーサー(オレンジ色)がK/X麻酔下でマウスの脳を通過する脳脊髄液の流れを示す(出典:www.urmc.rochester.edu


本研究の筆頭著者であり、Nedergaard研究室のポスドクであるLauren Hablitz博士は次のように述べています。
「深部徐波睡眠中の神経活動の同期波、特に脳の正面から背面へと動く発火パターンは、グリア細胞-リンパ連関でのCSFの流れのこれまでの知見と一致しています。ニューロンの発火に関与する化学物質、すなわちイオンは脳組織を通して体液を引っ張るのを助ける浸透のプロセスを推進するようです」

この研究はいくつかの重要な臨床的問題を提起しており、睡眠や加齢、およびアルツハイマー病、それぞれの関連性を強化するものです。をとるにつれ、深いノンレム睡眠を十分に得ることが難しくなることが知られており、本研究は、深い睡眠がグリア細胞-リンパ連関の働きにとっての重要性を強調するものです。同時に、グリア細胞-リンパ連関機能は睡眠によって操作できるものであり、睡眠療法や他の睡眠の質を高める方法などが、リスクのある人たちにとって効果のある臨床的アプローチになるかもしれません。

また、この研究で使用された化合物のいくつかは、臨床現場で使用された麻酔薬に類似していたので、高齢患者が手術後にしばしば経験する認知障害を解き明かし、この現象を避けることができる薬剤の種類を示唆しています。脳活動の低下が見られなかった麻酔薬を投与されたマウスでは、グリア細胞-リンパ連関機能の低下が起きていました。

共著者のトランスレーショナルニューロメディシンセンターのTuomas Lilius博士は、次のように述べています。
「麻酔と手術後の認知障害は大きな問題です。手術を受けた高齢患者の中でも大きな割合が、術後せん妄を経験しているか、退院時に認知障害を発症したり悪化させたりしているのです」

引用ニュース & 原著論文

🔵 英語ニュース:Not all sleep is equal when it comes to cleaning the brainUniversity of Rochester Medical Center

🔵 原著論文 (オープンアクセス; 全文を閲覧できます): Increased glymphatic influx is correlated with high EEG delta power and low heart rate in mice under anesthesia (Science Advances  27 Feb 2019)

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Seigoの追記

ぐっすり寝ている時に脳はゴミを掃除してくれているので、やはり寝るって大事ですよね。

年をとるにつれ、深いノンレム睡眠を十分に得ることが難しくなるという情報が、私にとっては驚きでした。

年寄りが睡眠時間が短くなるっていうのは脳の浄化については良くないことなのかも知れませんね。

また、アルツハイマー病および認知症の改善策として、睡眠の質を上げることによってもしかしたら脳のお掃除の効率が良くなって治療効果がでるかもしれないということが、希望が持てて良かったです。

 

 

 

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