不妊や発がんのリスク増加!? 缶詰の防蝕剤ビスフェノールAとは?【科学・医学論文レビュー】

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日本人が一番知らないビスフェノールAという缶詰(金属)の腐食を防ぐ防蝕剤「BPA」。

なぜ微量にしか含まれていないはずなのに、不妊や発がん性が疑われる理由を、ぜひ論文を読んで知識をつけていただきたいと思います。

🔵(?):カッコ内の数字をクリック/タップすると論文が開きます。(英語論文ですが、Google翻訳などで日本語に変換できます。)

BPAとは? 何が悪いの?

執筆者(英文): Alina Petre, MS, RD (NL)

BPAは、食品や飲料に使われている工業化学物質です。

専門家のなかには、それは有毒で、人々は避ける努力すべきであると主張しています。

しかし、本当にそんなに有害かどうかあなたは疑問に思うかもしれません。

この記事では、BPAと健康への影響について詳しく説明します。

BPAとは?


BPA(ビスフェノールA)は、食品容器や衛生製品などのいろいろな市販品に添加される化学物質です。

1890年代に発見されましたが、1950年代の化学者は他の化合物と混ぜると強力で弾力性のあるプラスチックができることに気づきました。

最近では、BPAを含むプラスチックが食品容器や哺乳瓶などに普通に使用されています。

BPAはエポキシ樹脂の製造にも使います。エポキシ樹脂は缶詰の内側に塗って金属の腐食や破損を防ぐものす。

要点
BPAはプラスチックや缶詰の内側に含まれる合成化合物です。

男女共に不妊を引き起こす可能性

BPAは生殖能にいくつか影響を与える可能性があります。

ある研究によると、流産が頻繁に起こる女性は、妊娠に成功した女性の約3倍のBPAが血中に含まれています13 )。

さらに不妊治療を受けている女性の研究で、BPAが多い女性は比例して出産率が低く妊娠する可能性が最大2分の1になることが示されています(14 15 )。

体外受精(IVF)を受けたカップルの中で、BPAが最も多い男性は、低品質の胚を作る可能性が30〜46%高かったということです16 )。

別の研究では、BPAが多い男性は精子濃度と精子数が少ない可能性が3〜4倍高いことがわかりました(17  )。

さらに中国のBPA製造会社で働く男性は、勃起不全が4.5倍多く、性的満足度が低いと報告しています(18 )。

このような影響は注目に値しますが、最近のレビューでは一連の証拠を強化するためにさらに多くの研究が必要であることに同意しています(8 19 20 21 )。

要点
いくつかの研究は、BPAが男女両方の生殖能力に色々な悪影響を与える可能性を示しています。

赤ちゃんへの悪影響


すべてではないですが多くの研究では、職場でBPAに暴露された母親から生まれた子供は、暴露されていない母親の子供より出生時の体重が平均最大0.5ポンド(0.2 kg)軽いことがわかっています(22 , 23 24 )

またBPAにさらされた親から生まれた子供は、肛門から生殖器までの距離が短い傾向にあり、これは成長してる間のBPAのホルモンの影響をさらに示しています(25 )。

さらにBPAレベルが高い母親から生まれた子供は、より活動すぎ(ADHDで避けるべき5つの食品)不安で、落ち込んでいました。彼らは1.5倍感情的で1.1倍の攻撃性を示しました26 27 28 )。

最後に幼少期のBPA曝露は、 がん のリスクを上げて前立腺と乳房組織の発達に影響を与えると考えられています。

しかしこれを裏付ける十分な動物研究はあるものの、人の研究では結論が出ていません(29 30 31 32 3334)。

要点
若年期のBPA曝露は、出生時体重、ホルモンによる発達、行動、後年のがんリスクに影響を与える可能性があります。

どの製品に含まれていますか?

BPAが入っているかもしれない製品は次のとおりです。

  • プラスチック容器に入っている食品
  • 缶詰
  • 化粧品
  • 女性用衛生製品
  • 感熱紙の領収書
  • CDとDVD
  • 家庭用電化製品
  • 眼鏡レンズ
  • スポーツ用品
  • 歯科用充填シーラント
BPAフリー製品の多くが実はビスフェノール-S(BPS)やビスフェノール-F(BPF)に変えただけであることは注目に値します。

ただBPSとBPFが少なくてもBPAと同様に細胞の機能が損なわれる可能性があります。したがってBPAフリーのボトルは適切な解決にはならないかもしれません(1 )。

リサイクル番号3と7、または「PC」の文字が付いたプラスチック製品には、BPA、BPS、BPFが含まれているようです。

要点
BPAと代替品(BPSとBPF)は、リサイクルコード3、7、「PC」といったラベルで、よく使用される製品に含まれている可能性があります。

どのように体に入りますか?

BPA曝露の主な原因は、食事です(2 )。

BPA容器が作られるとき、BPAが完全に製品に封じ込められるわけではありません。これにより食品や液体を入れると、一部が抜け出して混ざってしまうことがあります(3 4 )。

たとえば最近の研究では、参加者がパッケージ食品を避けた3日間後に、尿中のBPAレベルが66%減ったことがわかりました(5 )。

別の研究では、新鮮なスープか缶スープを5日間毎日1食分食べました。缶入りスープを摂取した人のBPAの尿中濃度は1,221%高かったということです(6 )。

さらにWHOは、母乳で育てられた乳児のBPAレベルは、BPAを含む哺乳瓶で調整乳を飲んだ乳児より最大8倍低いと報告しました(7 )。

要点
あなたの食事で特にパッケージ食品や缶詰食品は、BPAの一番の原因です。BPAを含む哺乳瓶で粉ミルク飲んだ赤ちゃんも、体内に多いです。

体に悪いですか?


専門家の多くはBPAは有害と主張していますが、反対する人もいます。

次にBPAが体内で何をするのか、そしてなぜ健康への影響が物議を醸しているのかを説明します。

BPAの生物学的メカニズム

BPAはホルモンのエストロゲンと構造と機能が似ていると言われています(2 )。

エストロゲンのような形をしているのでエストロゲン受容体に結合し、成長、細胞修復、胎児の発育、エネルギー、生殖など身体に影響を与える可能性があります。

さらにBPAは甲状腺のホルモン受容体とも相互作用し、その機能を変えてしまう可能性があります(8 )。

体はホルモンの量の変化には敏感です。エストロゲンを模倣するBPAが健康に影響を与えると信じられている理由です。

BPA論争

上記の情報から、多くの人々はBPAを禁止しようかと思うでしょう。

EU、カナダ、中国、マレーシアでは、特に乳幼児向けの製品ですでに使用が制限されています。

一部の米国の州もそれに続きますが、連邦規制は制定されていません。

2014年、FDAは最新のレポートを発表しました。これは1980年代の当初の1日あたりの暴露限度が体重1ポンドあたり23 mcg(1kgあたり50mcg)であることを承認し、BPAは現在許可されている量ならおそらく安全であると結論付けました(9 )。

しかしげっ歯類の研究では、BPAの悪影響ははるかに低いことが示されています。1日あたりわずか4.5 mcg /ポンド(10 mcg / kg)です。

さらにサルでは、現在人で測定されているのと同じレベルが生殖に悪影響を与えることが示されています(10 11 )。

あるレビューでは、業界が資金提供したすべての研究ではBPA曝露の影響は見られなかったが、業界が資金提供していない研究の92%は重大な悪影響を発見しました(12 )。

要点
BPAはホルモンのエストロゲンと同じ様な構造です。エストロゲン受容体に結合し、身体機能の多くに影響を与える可能性があります。

心臓病と2型糖尿病に関連

人の研究では、BPAが多い人の高血圧のリスクが27〜135%高いことが報告されています(3536)。

さらに1,455人のアメリカ人を対象とした調査では、BPAレベルが高いほど、心臓病のリスクが18〜63%高くなり、糖尿病のリスクが21〜60%高くなります(37)。

別の研究では、BPAレベルが高いほど2型糖尿病のリスクが68〜130%高くなります(38)。

さらにBPAレベルが最も高い人は、メタボリックシンドロームと2型糖尿病の主な要因のインスリン抵抗性の可能性が37%高くなりました(39)。

しかしいくつかの研究では、BPAとこれらの疾患との間に関連がないことがわかりました(404142)。

要点
より高いBPAレベルは、2型糖尿病、高血圧、心臓病のリスクと関連しています。

肥満のリスク

肥満の女性は、通常の体重の女性よりもBPAレベルが47%高い可能性があります(43)。

いくつかの研究では、BPAレベルが最も高い人は肥満になる可能性が50〜85%高く、ウエストが大きい可能性が59%高いと報告されていますが、すべての研究で一致しているわけではありません(373944454647)。

興味深いことに、同じパターンが子供と青年でも観察されています(4849)。

出生前のBPAの暴露は動物の体重増加と関連していますが、これはヒトでは強く確認されているわけではありません(5051)。

要点
BPA曝露は、肥満とウエストの増加リスクに関連しています。ただしさらに調査が必要です。

他の健康問題を起こす可能性

BPA曝露は以下の健康問題にも関連している可能性があります。
  • 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS): PCOSでない女性と比べ、PCOSの女性のBPAレベルは46%高い可能性があります(47)。
  • 早産:妊娠中のBPAレベルが高い女性は、37週間前に出産する可能性が91%高かったということです(52)。
  • 喘息:出生前のBPAへの曝露が高いと、生後6か月未満の乳児がゼーゼーするリスクが130%高くなります。幼児期のBPAへの曝露は、小児期後期のゼイゼイにも関連しています(5354)。
  • 肝機能: BPAレベルが高いと、肝酵素の異常リスクが29%高くなります(37)。
  • 免疫機能: BPAレベルは免疫機能の悪化に寄与する可能性があります(55)。
  • 甲状腺機能:より高いBPAレベルは甲状腺ホルモン異常に関連しており、甲状腺機能の障害を示しています(565758).
  • 脳機能:環境保護庁(EPA)によって安全であるとされたBPAレベルに曝露されたアフリカのサバンナモンキーは、脳細胞間の接続の喪失を示しました(59)。

要点
BPA曝露は、脳、肝臓、甲状腺、免疫機能の問題などの健康問題にも関連しています。これらの調査結果を確認するには、さらに調査が必要です。

被ばくを最小限に抑える方法

悪影響のリスクすべてを考えると、BPAを避けたいと思うかもしれません。

完全には不可能かもしれませんが、暴露を減らすいくつかの効果的な方法があります:
  • パッケージ食品を避ける:主に新鮮な、未精製の食品を食べます。缶詰食品、リサイクル番号3、7、PCというラベルのプラスチックで包装された食品はさけます。
  • ガラス瓶で飲む:ペットボトルや缶の代わりにガラス瓶に入っている液体を購入し、プラスチックの代わりにガラスの哺乳瓶を使用します。
  • BPA製品に近​​づかないレシートには高レベルのBPAが含まれているため、レシートとの接触はできるだけ制限してください。
  • おもちゃを厳選する:子供用のプラスチック製のおもちゃは、BPAを含まない素材で作られていることを確認してください。特に子供が噛んだり吸い込んだりする可能性のあるおもちゃ。
  • プラスチックを レンジでチンしないでください:チンしたらプラスチックではなくガラスに保存してください
  • 粉ミルクを購入する:液体は容器からBPAが溶けて入りやすいかもしれないので、専門家によってはBPA容器に入った液体よりも粉末を推奨しています。

要点
食事や環境からBPAへの曝露を減らす簡単な方法はいくつかあります。

結論

証拠を考慮すれば、BPAやその他の毒にになりそうなものを制限するように対策するのがベストです。

妊娠中の女性は、特に妊娠の初期にBPAを避けることで恩恵を受ける可能性があります。

その他の方々は、時々「PC」のペットボトルから飲んだり、缶から食べたりすることはおそらくパニックになる必要はありません。

とは言うものの、プラスチック容器をBPAを含まないものにすることは健康への大きな影響のためには大した努力にはなりません。

新鮮な未精製の食品を食べることを目指せば、BPA曝露は自動的に制限できます。

参考資料

🔵 What Is BPA and Why Is It Bad for You?(healthline)Written by Alina Petre, MS, RD (NL) on December 17, 2018

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