ALS治療に有望な研究論文(2019年): 内皮前駆細胞移植によるALS疾患の進行の遅延に成功!
ニュース/レビュー
今回は移植骨髄内皮前駆細胞はALS疾患の進行を遅らせるという報告です。
ScienceDailyのプレスリリースを翻訳しましたのでご紹介します。
ニュースタイトル「移植された骨髄由来内皮前駆細胞はALS疾患の進行を遅らせる」
フロリダ州タンパ(2019年4月2日) – フロリダの研究者が、筋萎縮性側索硬化症(ALS, amyotrophic lateral sclerosis)の症状を模倣したマウスへ、ヒト骨髄由来内皮前駆細胞(EPC, endothelial progenitor cells)を移植すると、より多くの運動ニューロンの生存を助け、血液脊髄関門(BSCB, blood-spinal cord barrier)の損傷を修復することによって疾患の進行を遅らせたとの報告がなされました。3月27日の Scientific Reports(科学レポート)誌に発表されたこの新しい研究は、ALSおよび他の神経変性疾患におけるバリア修復手段として細胞療法を探求するために成長している一連の研究に貢献するものです。
筋肉の動きを制御する神経細胞(運動ニューロン)の進行性の変性は、最終的には全身麻痺とALSによる死亡につながります。ALS協会によると、毎日、平均15人のアメリカ人がこの病気であると診断されています。
血液循環系と中枢神経系との間の障壁(血液脊髄関門)の損傷は、ALS発症の重要な要因として認識されています。この防護壁の侵されると、脳や脊髄に免疫/炎症細胞やその他の有害な物質を末梢血で循環させます。ALSをもたらす一連の生化学的事象には、損傷を受けた脊髄運動ニューロンの近くの小さな血管の内面を裏打ちする内皮細胞の変化が含まれます。
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スヴィトラナガルブゾワデーヴィス(Svitlana Garbuzova-Davis)博士、およびモルサニ医科大学(USF Health Morsani College)の老化と脳の修復のためのエクセレンスセンター(Medicine’s Center of Excellence for Aging & Brain Repair)の協力スタッフによるこの最新研究は、ALS症候群マウスにおいて、ヒト骨髄由来幹細胞がバリア修復の進行によって運動機能と神経系の状態に改善が見られた、以前の研究に基づいて構築されたものです。
しかしながら、その初期のUSF研究では、細胞移植後、有益な効果を得るのに数週間がかかり、そして高用量治療後でさえもひどく損傷した毛細血管が検出されたものです。そこで本研究では、骨髄から採取した未分化幹細胞よりも血管内皮細胞に遺伝的に近い細胞であるヒトEPCが、さらに優れたBSCB回復をもたらすかどうかを試験しました。
ALSマウスに、ある用量のヒト骨髄由来EPCを静脈内投与した。移植の4週間後に、活発な細胞治療の結果を他の2つの群のマウス;即ち、培地(生理食塩水)だけのコントロールALSマウス、および未治療の健康なマウスと比較しました。
EPC移植を受けたALS症候マウスには、培地を注射されたコントロールマウスよりも大幅に改善された運動機能や運動ニューロン生存数の増加、およびより疾患進行の遅延が見られました。研究者らは、BSCBの修復につながるこれらの利点は、脊髄の毛細血管へのEPCの広範な付着によって促進された可能性を示唆しています。
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この提案を裏付けるべく、彼らは、実質的に修復された毛細血管、より少ない毛細血管漏出、および脊髄と脳における保護バリアの形成を助けることにおいて役割を果たす構造支持細胞(血管周囲星状細胞)の再生の証拠を指摘しています。
EPCバリア修復のメカニズムを明確に定義するためにはさらなる研究が必要です。しかし、この研究報告の著者らは、「並進的な観点から、症候性疾患段階での細胞治療の開始はBSCBの完全性を確実に回復させ、ALSの将来の臨床治療として有望である」と結論づけています。
引用ニュース & 原著論文
🔵 英語ニュース:Transplanted bone marrow-derived endothelial progenitor cells delay ALS disease progression 〔University of South Florida (USF Innovation). 〕
🔵 引用原著論文 :Human Bone Marrow Endothelial Progenitor Cell Transplantation into Symptomatic ALS Mice Delays Disease Progression and Increases Motor Neuron Survival by Repairing Blood-Spinal Cord Barrier (Scientific Reports 2019 )
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Seigoの追記
骨髄移植で脳細胞に良い影響があるということは2019年2月の論文で発表されましたが、骨髄細胞の中でも特に血管内皮細胞がALSマウスの血液脊髄関門に働きかけてALSの症状を改善させるというのは、どうして骨髄細胞が脳機能を助けるかの新たなメカニズムが解明されつつあり、たいへん興奮するニュースです。早くこういう研究が進んでALSの患者さんに希望の光を当ててほしいものです。
20余年アメリカで遺伝子治療&幹細胞の研究者をやってきました。
特に遺伝病の間違った遺伝子をピンポイントで修復し、元に戻す技術開発です。
理学博士(Ph.D. )
アメリカ生活で学んだアンチエイジングなど健康に関する知識をシェアしたいと思います。
巷の情報もご紹介、時にはブッた斬ったりしてしまうかもしれません。
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皆さん、ご一緒に「究極のヘルシーライフ」を楽しみましょう♪
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