人に害がなく植物由来の環境に優しい農薬とは? (2019年米国研究)

ニュース/レビュー

今回は環境に優しい農薬としてのソルガム化合物についての報告です。

ペンシルベニア州立大学のプレスリリースを翻訳しましたのでご紹介します。

ニュースタイトル「害虫駆除に使用されるソルガム化合物は環境に優しい農薬」

ソルガム(出典:Vijaya narasimhaによるPixabayからの画像)


フラボノイドは植物の師部(アブラムシが好む糖を運ぶ植物の血管組織)ではなく、植物の最も外側の防御層を形成する表皮細胞に存在します。アブラムシが口針で表皮に穴を開けると、死に導くフラボノイドを取り込んでしまうのです。

植物と昆虫の相互関係を農園や温室、または実験室で研究した研究者によれば、昆虫に食べられるのを防ぐためにソルガムが生成する化合物を分離して合成できれば、標的を限定した無毒な昆虫駆除剤として使用できるかもしれません。

研究者らはフラボノイドと呼ばれるソルガム化学物質、特に3-デオキシフラボノイド3-デオキシアントシアニジンが、植物から樹液を吸う小さな青緑色の昆虫やトウモロコシアブラムシに対する抵抗性を発揮する上での役割を研究しました。アブラムシのような害虫から身を守るために、ソルガムは害虫を毒殺するフラボノイドを含め、二次代謝産物の生合成による防御力を進化させました。

ペンシルベニア州立大学トウモロコシ遺伝学のサリンダー・チョプラ(Surinder Chopra)教授は以前の研究で、ソルガムではこれらのフラボノイドの蓄積が真菌性病原体などのストレスに対する反応を制御するyellow seed1という遺伝子によって制御されていることを証明しました。これらの研究は両方とも、彼が率いる農学部の研究グループが主導して行ったものです。

ソルガムの穂(出典:Kathryn CoxによるPixabayからの画像)


 

当大学のラッセルE.ラーソン農業研究センターで行われている現在の研究では、研究者達はほぼ同一系統の2つのソルガム:①フラボノイドを生産するy1遺伝子、②null y1という突然変異体(フラボノイドの生産に関与する機能的なyellow seed1遺伝子がない)を育てました(nullは「無の, ゼロの」という意味)。

2系統の植物を比較したとき、研究者らはフラボノイドを作るy1遺伝子を持つ植物と比べてかなり多数の成体トウモロコシアブラムシがnull y1植物に定着したことを発見しました。ストレスのサインである黄色くなった葉のところでアブラムシは活動的に食べていました。フラボノイドを作るソルガム植物に集るアブラムシ数ははるかに少なく、アブラムシ摂食被害がありませんでした。

鉢植えのソルガムを用いた同様の温室実験では、アブラムシは明らかにnull y1植物を餌に繁殖を好むことを示し、そして成虫はより多くの幼虫を産みました。

共同研究の実験では、研究者たちは2つのグループの成虫アブラムシにトウモロコシの葉の組織の食事を与えましたが、1つにはフラボノイドを含むエキスを加えました。数日後、フラボノイドを多く含んだ葉の組織を食べたアブラムシのほとんどは死に、繁殖は抑制されました — 死ぬ前にすべてのアブラムシにも幼虫が付いていませんでした。

おそらく驚くべきことは、チョプラ教授によればフラボノイドは師部門(アブラムシが求める糖を運ぶ植物の血管組織)には存在しませんが、防御の最外層を形成する表皮細胞には存在するということです。アブラムシが口針や口器で表皮細胞を繰り返し調べ、穴を開けるときに死に導くフラボノイドを取り込んでしまうのです。

イメージ(出典:Jan AmissによるPixabayからの画像)


ケミカルエコロジー誌(Journal of Chemical Ecology)にオンラインで掲載されたこの調査結果は、フラボノイドが作物を保護するための強力な昆虫駆除剤として応用される可能性があることを示唆しているとしています。

チョプラ教授は「ソルガムはそれらを脅かす有害な捕食性昆虫に対して防御する化合物を正確に出すように進化しましたが、これらの化学物質は有益な昆虫は傷つけません」として、「もし我々が無毒の殺虫剤を開発できれば、合成農薬の毒性が大きな関心事であり、人の健康にも危険であると考えられていることからすれば、形勢一変の重大な変化をもたらすでしょう。」と述べています。

チョプラ教授は、州政府の支援を得てフラボノイドを昆虫抑止剤として使用することに関する特許を申請しました。彼は、更なる研究が必要だが、最も注目すべきはフラボノイドいかなる汚染も引き起こさずそして人間または動物の健康に害がない天然植物製品であることであると指摘しました。

この研究は、作物防御のための新しい植物化学物質の開発に向けたはじめの一歩かもしれないとチョプラは信じ、「フラボノイドが他の草食動物に対してどれほど効果的に作用するかが研究されていますが、トウモロコシアブラムシは非常に強力であることがわかっています」と語りました。

引用ニュース & 原著論文

🔵 英語ニュース:Insect-deterring sorghum compounds may be eco-friendly pesticide( Pennsylvania State University

🔵 引用原著論文 :Sorghum 3-Deoxyanthocyanidin Flavonoids Confer Resistance against Corn Leaf Aphid (Journal of Chemical Ecology 2019 )

Seigoの追記

ソルガムはイネ科のモロコシという植物で高キビという名でも知られています。

とうもろこしとは全然違いますよ。

むしろきびとかあわとかみたいな小さな穀物です。

主に牛の餌として栽培されるそうですが、食物繊維やマグネシウム、鉄、ビタミンE、ビタミンB群も多くて、アミノ酸もバランスよく含まれていて美味しくてお肌がキレイになりそうなスーパー穀物なんです。

日本でも団子などにして食べられてきました。

アメリカでもグルテンフリーの方はソルガム粉で美味しいケーキを作ったりして小麦の代わりに使います。

食べ物の話ばかりになってしまいましたね 😳

ソルガムのフラボノイド、農薬としても良いんですね〜

楽天で手に入るソルガム関連商品を紹介しておきます。
(画像をクリック/タップすると商品のページへジャンプするようにリンクを貼っておきました)
 


 

 

 

 

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