高血圧や糖尿病患者に処方されるACE阻害薬がACE2の発現を上げる可能性があることが判明! イブプロフェンも同じ作用が【ランセット誌】

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執筆日:2020年3月24日、更新日:2020年3月26日

新型コロナウイルス肺炎(COVID-19)の重症の患者さんで半数近くが高血圧や糖尿病、心疾患などにかかっているというザ・ランセット-呼吸器内科(The Lancet Respiratory Medicine)誌のレポート(3月11日)に掲載されたデータをご紹介したいと思います。

新型コロナで半数の重症者が高血圧や糖尿病, 心疾患を患っているとする実際のデータ

3つのデータでは
データ① ICUの52人のうち死亡した32人の疾患のうち
22% 脳血管疾患
22% 糖尿病

データ② 1099人の新型コロナ患者のうち
23.7% 高血圧
16.2% 糖尿病
5.8%  冠状動脈性心疾患
2.3%  脳血管疾患

データ③ 104人の新型コロナ入院患者のうち
30% 高血圧
12% 糖尿病

このように新型コロナの患者の半数近くが高血圧糖尿病などの病気があるわけですが、なぜ多いのかという分析が必要となってきます。

どの研究でも治療についての評価はされていませんが、上記の疾患では治療にACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害薬(「エースそがいやく」っと読む)がよく使われます。

ACE阻害薬アンジオテンシンIIタイプ I 受容体遮断薬ARBを服用している糖尿病患者(1型または2型)では ACE2は大幅に増加 します。また高血圧患者にもACE阻害薬ARBよく処方されます。

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、肺、腸、腎臓の上皮細胞にあるアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)にくっついて細胞の中に侵入することが最新研究で明らかになっています。

またACE2はチアゾリジンジオン(2型糖尿病の薬)イブプロフェンでも増えます。

これらのデータからACE2は糖尿病で増えるし、ACE阻害剤とARBがACE2を増やすことを示唆しています。つまり ACE2が増えるためにCOVID-19に感染しやすくなるのではないか ということです。仮説としてACE2を増やす薬で、COVID-19の重症化のリスクを高めるということです。

これまでACE2炎症を減らし、炎症性肺疾患、癌、糖尿病、高血圧症の新しい治療法になるかもしれないと言われていましたが、ここで矛盾が起こってしまいます。

SARS-CoV-2感染のリスクと遺伝的な要因についても調査が必要です。これは特にアジアで、糖尿病、脳卒中、高血圧に関するACE2変異型による可能性があります。つまり個々の感受性は、治療とACE2変異型の組み合わせによるかもしれません。

ACE阻害薬を服用しているほうが重症化するリスクが高くなる?

ACE2を増やしてしまう薬を飲んでいる心疾患、高血圧、糖尿病患者さんは、新型コロナで重症化するリスクが高いので、ARBやACE阻害薬などには注意する必要があります。 2020年2月28日のPubMedの検索に基づくと、カルシウム拮抗剤がACE2の発現や活性を増やしたという証拠は見つかりませんでした。

もしACE阻害薬で重症化のリスクが増えてしまうなら、ACE阻害薬はサイトカインストームの治療には使えませんね。ACE阻害薬でアンギオテンシンIIができないとサイトカインが上がらないから治療になるかと思いきや、ACE2のお仕事がなくなってヒマになってしまい、そこに新型コロナウイルスがどさっとくっついて細胞に入り新型コロナ発症ということですから。

イタリアでの調査の論文「イタリアでのCOVID-19に関連した死亡率と死亡患者の特徴」(Case-Fatality Rate and Characteristics of Patients Dying in Relation to COVID-19 in Italy)も出ましたが、
亡くなった患者さん 48%(355人中)が3つ以上病気を持っていた そうです。病気がなかったのはたったの3人(0.8%)30%が心臓病35.5%は糖尿病でした。平均年齢が79.5歳( 男性の方が多く7割を占める なので、かなりご高齢だからということもあるかもしれませんが、やはりACE阻害薬を飲んでる人は多かったのかもしれませんね。

イブプロフェンでもACE2が増える→重症化しやすくなる

またイブプロフェンでもACE2が増えるので感染しやすいだろうということです。イブプロフェンは日本ではEVEとか風邪薬に入ってることもあるようですので購入時には確認したほうが良さそうですね。

引用文献

参考文献(オープンアクセス;全文が無料で読めます): Are patients with hypertension and diabetes mellitus at increased risk for COVID-19 infection?
(Lancet Respir Med. 2020 ) Correspondence, Published Online March 11, 2020

論文の原文はこちら(オープン) → PDF書類

追加論文

〔追記:以下の文章を追加しました。2020年3月26日〕
ルイジアナ州立大学が発表したJournal of Travel Medicineの論文で仮説として、ACE阻害剤とARBが重症化のリスクを増やすのではと言っています。実験動物でもACE阻害剤とARBを静脈注射すると心肺のACE2を増やすことがわかったのでウイルスが肺に感染しやすくなって重症化が起こりやすくなっているのではないかということです。

 

エキストラバージン・オリーブオイルにもインブロフェンと同じ作用をもつ物質が入っている→重症化しやすい

イタリアとかヨーロッパではイブプロフェンは気軽に飲んでいるのでしょうか?

イタリアでは風邪を引くとオリーブオイルを体に良いので飲むという習慣があるので、今回の新型コロナで重症化してしまうのではないかと心配です。

エキストラバージンオリーブオイルにはイブプロフェンと同じ働きをするオレオカンタールというピリッとした成分があるようです。

イタリアやスペインはオリーブオイルをたくさん摂ってそうですね。毎日コップ一杯飲むと長生きになるとかいう療法を実践してる人がイタリアには多いのでしょうか?

イタリアでは多くの人が感染し、なぜか致死率9%とダントツに高くなってますが、ハグやキスの習慣や土足などの要因だとかいくつも重なった結果なのでしょう。早く終息することを強く希望します。

引用文献

Ibuprofen-like activity in extra-virgin olive oilエキストラバージンオリーブオイルのイブプロフェンのような作用
Nature, 2005年

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