ALS治療に朗報! メンブラリンというお掃除タンパク質がALSマウスの寿命延長に成功! (2019年最新研究)
ニュース/レビュー
ALS治療に関して朗報です! メンブラリンという分子がALSに関係していることが発見され、それを与えるとALSマウスの寿命が延長したという報告です。
この研究は米国サンディエゴの研究所で行われプレスリリース(英文)が発表されましたので、ここで翻訳してご紹介します。(翻訳のプロではないので読みづらかったらすみません。)
また発表された論文はオープンアクセスですので、どなたも無料で全文が閲覧できます。リンクを以下のレビュー記事の後に貼っておきます。
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この記事のもくじ
ALS研究で新しい治療アプローチが明らかに
野球選手のルー・ゲーリッグ(Lou Gehrig)は1941年6月2日37歳の時に、進行性筋変性疾患である筋萎縮性側索硬化症(ALS; Amyotrophic Lateral Sclerosis)で亡くなりました。彼の死から80年近く経った今でも、科学者はこの病気の根本的原因と効果的な治療法を探しています。現在、サンフォードバーナムプレビス医学研究所(Sanford Burnham Prebys Medical Discovery Institute)の科学者はメンブラリン(Membralin)というタンパク質がALSに重要な役割を果たすことを明らかにし、ALSのような症状を持つマウスの生存期間を延ばすメンブラリン増強遺伝子治療を考案しました。この研究は Journal of Clinical Investigations 誌に掲載されました。
「ALSは新しい治療が早急に必要ですが、残念な状況です。しかしながら研究は依然として基礎に取っ組み合っています。」この研究の主幹で臨床神経科学研究者のカリフォルニア大学サンディエゴ校臨床神経学のジョン・ラヴィツ(John Ravits)教授は言います。「この研究は、ALSを促進する可能性のあるメカニズムに重要な新しい視点を提供し、効果的な治療を見つけるためにも重要です。どちらも効果的な医薬品を見つけるためにも重要な第一歩となります。」
ALSとは
ALSはよくルー・ゲーリッグ病とも呼ばれ、脳や脊髄の運動ニューロンがなくなることによって起こる筋肉がだんだん弱って行く病気です。ほとんどの人が40〜70歳の間で診断されます。ALS協会によると約16,000人のアメリカ人がこの病気にかかっています。理由はわかっていませんが、軍の退役軍人がこの病気と診断される確率はほぼ2倍です。効果的な治療法がない病気です。「私たちの研究結果はALS の原因の新しいメカニズムを特定し、メンブラリンの調節が ALS 治療を可能にすることを示唆します」と、この研究の主幹であるサンフォードバーナムブレビス神経科学と加齢研究センターのジャンヌアンドゲイリーハーバージャーリーダーシップ長のシュー・ファシー(Huaxi Xu)教授は言います。「これらの研究で得られた見識は病気の進行を遅らせるか、または止められるかもしれない治療法を見つけ出すのに役立ちます。」
メンブレリンとは?
2002年に発見されたメンブレリンは多くが解明されていません。科学者はこのタンパク質が小胞体関連分解システムと呼ばれる細胞のタンパク質処理機構の一部であることが知られていますが、シュー教授の前の研究でこのタンパク質がアルツハイマー病に関与していることがわかっています。神経変性疾患におけるメンブランの役割をもっと理解するために、彼のチームは運動ニューロンや星状細胞、ミクログリア、そしてオリゴデンドロサイトなどの様々な脳細胞でこのタンパク質がないマウスを作りました。メンブラリンを欠損したマウスはALSとそっくりの症状がでる
「私たちはメンブラリン欠損マウスの症状(表現型)に驚きました」論文の筆頭著者であり、シュー研究室のポスドクのルーリン・ジアン(Lu-Lin Jiang)博士は言います。「人のALSにそっくりなはっきりした筋肉の機能障害がありました。この結果は特に予想外で思いがけないものでした。以前のゲノムワイド関連解析(GWAS)でALSの原因の候補としてメンブラリン遺伝子が検出されることはなかったので。」科学者はさらに次の分析も進めました:いくつかのALSマウスモデルの分析、メンブラリンのないアストロサイト(グリア細胞の一つ)の研究、ALSの人とそうでない人の脊髄の分析
グルタミン酸が蓄積してニューロンが死んでいた
その結果、グルタミン酸という神経伝達物質がメンラブリン欠損アストロサイトの外側に蓄積することを示しました。過剰なグルタミン酸はニューロンを殺すことが知られているので、この証拠はALSの病因の手がかりを与えてくれました。過剰なグルタミン酸は、EAAT2というグルタミン酸トランスポーターの抑制によって促進されていました。ALSの人の組織サンプルの分析は、メンブラリンとEAAT2トランスポーターの量は強く関係し、人の疾患では共に減少することが確認されました。
メンブラリンを与えるとALSマウスは寿命が少し延長した
研究の一部として、科学者はまたメンブラリンの量を増やせるアデノ随伴ウイルス(AAV)を設計しました。そのAAVを投与されたALSマウスは、AAVなしのマウスよりも2週間近く長生きしました。これはメンブラリンまたは関連タンパク質の増強が治療アプローチとして有望であることを示しています。次に科学者は同じメカニズム(EAAT2の発現低下とグルタミン酸の過剰発現)が、アルツハイマー病や効果的な治療が必要な別の疾患でも起こっているかどうかを調査する予定です。
ーーー 翻訳ここまで ーーー
引用ニュース & 原著論文
🔵 英語ニュース:ALS research reveals new treatment approach(Sanford Burnham Prebys Medical Discovery Institute)May 23, 2019🔵 原著論文(オープンアクセス:全文が無料でご覧になれます): Membralin deficiency dysregulates astrocytic glutamate homeostasis leading to ALS-like impairment.(Journal of Clinical Investigation, 2019 )
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ALSに関する当サイトの別記事
腸内細菌が分泌するニコチンアミドでALSが改善したというニュースが、科学のトップジャーナル「ネイチャー (Nature)」誌に発表されました!
ただこれは人ではなくマウス(ネズミ)を使った研究です。
この研究は米国のワイツマン科学研究所が行い、そのプレスリリース(英文)が発表さ...
今回は農薬や環境汚染物質がALS患者の体内に発見され、それが病気の進行を早めているのではないかという研究報告です。
この研究に関してミシガン大学が最新研究をプレスリリースしましたので、それを翻訳したものを以下にお伝えします。(翻訳のプロではないので読みづらかったらスミマセン)
ニュ...
> ALS治療に有望な研究論文(2019年): 内皮前駆細胞移植によるALS疾患の進行の遅延に成功!(2019.05.19)
> レスベラトロールよる筋萎縮性側索硬化症(ALS)の改善の可能性【患者由来の細胞を使った研究論文より】(2019.01.03)
Seigoの追記
メンブラリンというのはタンパク質のゴミをお掃除屋さん。認知症に多いのが、このような細胞の中のゴミを掃除するシステムが壊れてしまうという現象です。この研究で興味深いのはメンブラリンがなくなってしまうと、グルタミン酸が蓄積してしまい、そのせいで運動ニューロンが死んじゃったということです。グルタミン酸は味の素に入っているMSGでも有名なうま味のあるアミノ酸ですね。(私はMSGを食べると舌がピリピリして嫌な気分が続くので避けていますが)やはり人工的なうま味成分がたくさんというのはALSの病態解析からもわかるように、体に良くないのかも知れませんね。
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20余年アメリカで遺伝子治療&幹細胞の研究者をやってきました。
特に遺伝病の間違った遺伝子をピンポイントで修復し、元に戻す技術開発です。
理学博士(Ph.D. )
アメリカ生活で学んだアンチエイジングなど健康に関する知識をシェアしたいと思います。
巷の情報もご紹介、時にはブッた斬ったりしてしまうかもしれません。
またポイントなどの節約術や生活に便利なガジェット(スマホやアプリの紹介)も記事にしますので参考になれば嬉しいです。
皆さん、ご一緒に「究極のヘルシーライフ」を楽しみましょう♪
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