5Gが新型コロナウイルスの感染率を上げているか? 論文から科学的に考察(後編)

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前回はこれまで科学論文で議論されてきた電磁波の人体に対する影響をご紹介しましたが、今回は実際の5Gの影響がどんなものか、今まで分かっていることを最新データを交えながら危険性を明らかにしていきましょう。

5Gワイヤレス通信と健康への影響

以下のデータは文献『 6〜100 GHzに関する利用可能な調査に基づく実用的なレビュー」(論文Aオープンアクセス:無料で論文の全文が読めます!)からです。

この論文では、6〜100 GHzのような高周波が健康に影響があるかどうか、94の論文を調べ、周波数帯ごとに分析しています。

in vivo(生体内)では80%の論文に、in vitro(ラボ実験, シャーレ内など)58%何らかの変化が認められました。

研究では生理学的、神経学的、組織学的変化、またはin vitroでの遺伝子またはタンパク質発現、細胞毒性効果、遺伝毒性変化、および温度-関連反応について調べていました。

高周波電磁界の熱による生物学的影響は、SAR(比吸収率)値が4 W / kg(一般集団の曝露制限:SAR 0.08 W / kg)を超えると生じ、組織が1°C高い加熱が起きます。ただし文献では、4 W / kg SAR値未満の生物学的影響が記載されています。

結果として、強度(電力密度)、露出時間、周波数の影響には一貫した関係がないようで、ほとんどの周波数で応答はすでに70%もあるので、電力密度が高くても応答の頻度が高くなることはありません。

5G電波がすごく多い環境だと高周波のEMF(電磁界)の曝露が増えるので、健康に悪影響があるかもしれないということです。

著者は研究の基準が最低限の基準を満たすものがとても少なく、また矛盾するデータが多いので、さらに研究が必要ということです。

5Gスペクトル別の影響



5Gで使用される周波数グループごとの研究結果をみていきましょう。
⚡️ 最大 30 GHz
残念ながら、2つの論文のみでどちらも曝露に(生物)応答がありました。
⚡️ 18 GHz
細菌と真菌の研究で、細胞膜の透過性と細胞増殖を示しました「18 GHzの電磁界にさらされた原核細胞と酵母に起因する生体影響」(論文B、← オープンアクセス
⚡️ 25 GHz
in vitro 研究で、人の線維芽細胞で遺伝毒性が見られました。[マイクロ波放射線に曝露されたヒト線維芽細胞における遺伝毒性の影響。https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29787439/]
30.1〜40 GHz
アメリカ、カナダ、中国、イギリスのみが使用。

19の研究のうち約95%で影響が見られました。in vitro 研究の8中7つは変化を示しました。形態学的変化、皮膚温度、血圧、心拍数、体温の変化、ニューロンの電気的活動、EEG分析、タンパク質発現、酸化ストレスマーカー測定、組織学的調査、細胞死の誘導(アポトーシス)などについての解析が行われました。
37.5〜70 GHz
低電力密度(0.01 mW/cm2 , 0.1 mW/cm2 ; SAR: 0.15, 1.5 W/kg; 20 分, 40 分)でのマウスでの研究これ一つで、42.2 GHzで0.1 mW / cm2で20〜40 分において抗炎症作用を示しました。[ Anti‐inflammatory effects of low‐intensity extremely high‐frequency electromagnetic radiation: Frequency and power dependence]
32.9〜39.6 GHz(10 mW / cm2
論文 『非常に高周波の電磁放射は、粒子状アゴニストに対する好中球の反応を高めます』は、ヒトの血液細胞(ex vivo)を5、15、30分間ミリ波に曝露したものです。大腸菌によって誘発された好中球活性化を解明したところ、大腸菌の活性化が存在し15分の曝露後に好中球が活性化されてフリーラジカルを放出することが示されました。この結果は加熱したサンプル(ポジティブコントロール)と似ていたことから温度の影響によるもののようです。
36.11 GHz(10 mW/cm2
この周波数帯で骨髄細胞をニューロンのような細胞に分化させる実験をした研究があります(10分3回, 2時間おき24 時間) [ Millimeter-wave exposure promotes the differentiation of bone marrow stromal cells into cells with a neural phenotype. ]。
35 GHz
ラットのマクロファージの研究で炎症、酸化ストレス、エネルギー代謝に関するたんぱく質の発現に変化がありました。[Protein changes in macrophages induced by plasma from rats exposed to 35 GHz millimeter waves.]もう一つ、たんぱく質の構造を変えたという結果もあります。[ Effects of millimeter-wave radiation on monolayer cell cultures. III. A search for frequency-specific athermal biological effects on protein synthesis.]温度の上昇を防ぐために暴露中に細胞を冷却すると、変化はありませんでした。
30〜40 GHz
3つの論文では、30〜40 GHz(4 mW / cm 2、色々な露出時間)へ曝露した初代細胞(ラット骨細胞と間葉系幹細胞)で、軟骨細胞の増殖(細胞周期の変化)、細胞死の誘導分化誘導について説明しました[  ]。残念ながら主に温度管理がなかったため、この3つの研究は最低基準が満たされていませんでした(質の悪い研究)。
35 GHz
35 GHzの高周波照射が持続すると、ラットで循環不全が引き起こされます。https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8564558
37 GHz
マウスで免疫不全により発がんと変異原性の可能性。実験動物の発がん性の要因としての低集中超高周波電磁界への曝露。https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16027818
60.1–65 GHz
アメリカ、カナダ(64〜71GHz)この周波数の研究は27あり、12の論文で影響が報告されました。

in vivo 研究ではまず61.22 GHz 腫瘍細胞を注射したマウスの研究で[ https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16622862 ]。3日間連続、1日30分間61.22 GHz当てると、特に免疫系のT細胞系が活性化し、免疫系パラメーターが影響を受けました。
53–78 GHz
悪性黒色腫の細胞の増殖を阻害しました。significantly inhibited the proliferation of human skin melanoma cells [https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15868942].

では、15分間曝露したマウスの皮膚での研究がいくつかあり、最も一般的に使用される電力密度は15 mW / cm 2でした。別の研究で、1.5 mW / cm 2未満では何の影響もありませんでした。著者の結論として、ミリ波は痛覚過敏のしきい値を下げることができるということです。おそらくオピオイドの放出によるためと思われます。

同じ条件での消化器機能の研究では、影響は確認されませんでした[ Single millimeter wave treatment does not impair gastrointestinal transit in mice.]。
61 GHz (10 mW/cm2)
この周波数帯による8時間と4時間の5回の曝露では、ウサギやアカゲザルに眼の損傷は起きませんでした[Absence of ocular effects after either single or repeated exposure to 10 mW/cm(2) from a 60 GHz CW source. ]。同じ研究室でこれらのいくつかの研究は行われました。研究の質はすべての基準が満たされていますが、他のグループは再現できず、著者らは痛みの軽減に関する独自の発見については再現できました。in vitro試験では、種々の生物学的エンドポイントを調べました。
62.22 GHz
この周波数での研究では、カタツムリのニューロン(Lymnea)はイオン電流に対する非熱応答は確認されませんでした[ Effects of millimeter waves on ionic currents of Lymnaea neurons. ]。
60.4GHz
6つの論文で神経細胞関連細胞株において、ドーパミン透過性、ストレス、痛み及び膜タンパク質の発現を調べたところ(10mW/cm2、24時間)、全く応答は検出されませんでした[ Impact of 60-GHz millimeter waves on stress and pain-related protein expression in differentiating neuron-like cells. 他]。
60.4 GHz
興味深いことに、初代ヒトケラチノサイトの曝露(60.4 GHz、20 mW / cm 2、3時間)とグルコース-6-ホスファターゼ阻害剤の2-デオキシグルコースと組み合わせると、全体的なゲノムへの影響が認められました。この2つの組み合わせにより6つの転写因子の量が変化し、その効果は2-デオキシグルコースのみおよび60.4 GHzのみの影響(両方の因子のみが変化を誘発しなかった)とは異なります。[Study of narrow band millimeter-wave potential interactions with endoplasmic reticulum stress sensor genes.
61.2 GHz(29mW/ cm2
この周波数帯でのヒトケラチノサイトを用いた研究では他の炎症マーカー(走化性、接着および増殖)は変わりませんでしたが、炎症マーカー(IL1-β)が上がりました。[ Reactions of keratinocytes to in vitro millimeter wave exposure.]。
60.125 GHz(1μW/cm2)
ラットの脳皮質の切片を1分間曝した後、電気生理学的パラメーターを測定した研究では、多くのスライスで膜特性および活動電位の振幅と持続時間に対する過渡応答が観察されました。曝露により、培地の温度が3°C上がりました。慢性的に誘発されたCa 2+遮断はミリ波応答に影響を与えませんでした。[ Modulation of neuronal activity and plasma membrane properties with low-power millimeter waves in organotypic cortical slices.]。
65.1–90 GHz
アメリカ カナダ(64−71GHz)

65.1〜90 GHzの研究は、in vivoで4つ、in vitroで11つ合計14の論文があります。4つのin vivo研究で変化がありましたハムスター線維芽細胞を用いた研究で41.8 か 74.0 GHzに細胞を晒すと、タンパク質合成、細胞増殖の阻害、細胞がディッシュからはがれるなどが見られました。https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/7295361/

ある研究では、眼の損傷(特に角膜上皮の損傷)の線量を調べました[ 40 ]。線量はDD 50として計算されました(目の損傷の確率が50%であった結果に基づく)。実験は、75 GHzの曝露でラットに対して行われ、DD 50値は143 mW / cm 2でした。

昆虫(ユスリカ科)の研究で唾液腺の巨大染色体のDNA効果を調べると、6 mW / cm 2以下の電力密度を使用する全ての周波数で染色体の特定の領域のサイズが減少しました。これは唾液腺の特定のタンパク質の分泌につながりました[ A non-thermal effect of millimeter wave radiation on the puffing of giant chromosomes. ]。
52〜78 GHz
1μW/ cm 2以下のような非常に低い電力密度での結果は、メラノーマや白血病細胞などで細胞形態の変化を伴う細胞増殖の阻害を示しました[ Frequency and irradiation time-dependant antiproliferative effect of low-power millimeter waves on RPMI 7932 human melanoma cell line.Antiproliferative effect of millimeter radiation on human erythromyeloid leukemia cell line K562 in culture: ultrastructural- and metabolic-induced changes.]。
65〜75GHz
別のハムスター線維芽細胞を用いたBHK細胞では450mW/ cm2の電力密度で細胞を露出すると、タンパク質合成、細胞増殖の阻害、より高い出力密度では細胞死が起こりました。[ Effects of millimeter-wave radiation on monolayer cell cultures. II. Scanning and transmission electron microscopy. ]
さて論文のタイトルにあるEffectですが、これは効果ではなく単なる影響なので、ポジティブな結果もあればネガティブな結果も含めて生体に影響(反応)があったということです。「細胞増殖が起こった」という結果については、細胞が増えて元気になったと感じられますが、がん細胞が増えるのは嫌ですよね。NK細胞や免疫を活性化したり、抗炎症効果や鎮痛効果があったりの報告もいくつかあって良さそうですが。これは確実に免疫に影響しているということなので、悪く作用してしまう可能性もあるかもしれません。また、血液脳関門や細胞膜の透過性が上るという報告もあり、膜の透過性が上がるということは膜が隙間だらけになります。すると薬が効率良く入り込むので効果的だということですが、これはウイルスが受容体を介さないで細胞にどんどん入ってしまうという可能性も逆にすればあるわけです。ですからやはり影響があった場合は慎重にすべきだと思い

上のレビューでは多くの論文で生体に変化が報告されているものの、信頼できる証拠が少なすぎるのでもっと研究されるべきとありますが、次にご紹介するレビューでは、影響は十分に出ているのだから気をつけてましょうと警告しています。

やはり酸化ストレスは老化を始め色々な病気の引き金になりますので、5Gはちょっと心配な案件ではあると思います。

5G通信システムに向けて:健康への影響はありますか?

無線周波数電磁界(RF-EMF)の使用は増えつつありますが、健康への影響はまだ調査中です。RF-EMFは、がんや急性および慢性疾患、血管の恒常性に関与する条件である「酸化ストレス」を促進します。証拠のいくつかはまだ議論の余地があるものの、WHO IARCはRF-EMFを「ヒトに発がん性の可能性がある」と分類し、より最近の研究では、細菌の抗生物質耐性を変えたり、生殖、代謝、神経学的影響が示唆されています。

5G通信システムの生物学的影響はほとんど調査されていませんが、5G開発のために国際的な行動計画が始まり、デバイスと小型セルが増え、将来的にはミリ波(MMW)が使用されるようになります。予備的観察により、MMWは皮膚温度の上昇遺伝子発現の変化細胞増殖酸化ストレス炎症および代謝プロセスに関わるタンパク質の合成を促進し、眼の損傷を引き起こし神経筋に影響を与える可能性があることが示されています。RF-EMF、特にMMWの健康への影響をさらに適切かつ独立して調査することが必要です。

ですが今ある調査結果で、生物医学的に影響があることを実証するのにも、予防原則を発動するのにも、暴露された被験者を脆弱であると定義するのにも、既存の制限を修正するのにも十分であるようです。RF-EMFへの曝露を健康リスクに結びつける病態生理学的メカニズムの適切な知識も、現在の臨床診療において有用だと思われます。

引用:Towards 5G communication systems: Are there health implications?

 

 

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