銀杏(ぎんなん)の効能発見! 皮膚病の抗菌活性あり!? 副作用は濃縮で皮膚に毒 (2019年最新研究)

ニュース/レビュー

イチョウの実である銀杏(ぎんなん)から抗菌活性が見つかりました。

病院では抗生物質の乱用によって抗生物質の効かない耐性菌(MRSA)が猛威を振るっていますが、研究者は考え方を変え、自然界の抗菌物質に今、注目が集まっています。

エモリー大学の学生がキャンパスのイチョウのから抗菌活性を見つけそれが論文として発表されました。

今回はその学内広報(英文)を翻訳しましたのでご紹介します。

なおこの原著論文はオープンアクセスなので誰でも無料で論文の全文をご覧になれます。(下にリンクを貼っておきます。)

ニュースタイトル「イチョウの実からの抽出物が皮膚病原体に抗菌活性をもつ」

イチョウの葉(出典:Ulrike LeoneによるPixabayからの画像)


エモリー大学(Emory University)の研究から、銀杏からの抽出物に、ニキビや乾癬、皮膚炎、湿疹などの皮膚感染症を引き起こす可能性がある病原体に対する抗菌活性があることが判明しました。Frontiers in Microbiology(微生物学フロンティア)誌に、この抽出物がキューティバクテリウム・アクネ菌(Cutibacterium acnes)、黄色ぶどう球菌(Staphylococcus aureus)および化膿性レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)の増殖を抑制することを示す研究結果を発表しています。

この論文の共同執筆者であるXinyi(Xena)Huang(黄女史)は、研究者をこの実験に導いたのは、200年近く以前の出版になる漢方薬に関する16世紀のテキスト、本草綱目(Ben Cao Gang Mu)であったとして、「これは、過去の知識からほこりを吹き飛ばし、そこに存在していた何かを再発見するものでした」と、述べています。

中国出身の黄女史は、エモリー大学で生物学を専攻し、彼女の上級論文プロジェクトを開始しました。その後、エモリー大学を卒業し、現在はメリーランド大学薬学部(University of Maryland School of Pharmacy)の学生です。. 

「私たちの知る限りでは、これはイチョウ種子の皮膚病原体に対する抗菌活性を示す最初の研究です」と、エモリー大学の人間健康研究センター(Emory’s Center for the Study of Human Health)および医学部皮膚科のカサンドラクェイヴ(Cassandra Quave)助教は述べています。

「この論文は、植物の複雑な化学物質の薬理学的可能性について、まだどれだけ探求する必要があるかを示すもう1つの例です。」

クェイヴ助教は民族植物学者で、先住民族がどのように植物を癒しの実践に使うかを研究し、有望な新薬候補を発見しています。

この論文の共同執筆者でありクェイヴ研究室の薬剤師であるフランソワ・シャサーニュ(Francois Chassagne)は、「我々の研究結果は、この16世紀のテキストに規定されているような局所抗菌剤としての銀杏種子の使用の正当性を担保するものです」として、

「銀杏種子抽出物が現代の医学的状況での使用を考慮することが可能になるまでには、多くのハードルが残っています。統計的分析によって、抗菌活性の原因となる可能性が高いと同定された主な化合物のGinkgolic acid C15:1(ギンコール酸またはイチョウ酸)は、その濃縮された形で、皮膚毒性を持つことが証明されています」と付け加えました。

シャサーニュ氏は更に「新しい抗生物質の探索における一つの可能性のある戦略としては、抗菌活性に結びついている特定のイチョウ酸の構造を変更する方法を調査し、その効能を改善しそしてまたヒト皮膚細胞に対するその毒性を減らすことを試みることです」と述べています。

クェイヴ研究室の化学者であるジェームズライルス(James Lyles)もこの研究の共同研究者です。

国立衛生研究所の補完統合医療センター(National Institutes of Health’s National Center for Complementary and Integrative Health)のウェブページによりますと、中国原産のイチョウは、少なくとも2億7000万年前にさかのぼる最古の樹種の1つです。木はその独特の扇形の葉と伝統的な漢方薬におけるその長い歴史で知られています。現代の研究者たちは、記憶力の増強から黄斑変性まで、すべての医療上の利点を求めてイチョウを幅広く研究してきましたが、それでも「イチョウがあらゆる健康状態の助けになるという決定的な証拠はありません」とのことです。

黄女史がキャンパスを横切って歩きながら、上級論文の構想を練っている時、イチョウの木が彼女の視線をとらえました。彼女はその木が伝統的な漢方薬に使われていることを知っていましたが、詳細は知らなかったので、それを論文の題材として研究することにしたのです。


1826年版の漢方薬の書物からヒントを得る

イメージ画像(出典:Photo by Clint McKoy on Unsplash)

黄女史は、エモリー大学の蔵書に1826年版の本草綱目、またの名はマテリアメディカ大要(Compendium of Materia Medica)があると知って、彼女の関心は高まりました。この伝統的な漢方薬に関する最も包括的な書物は、明代の全盛期の16世紀に李時珍(Li Shi-zhen)によって書かれ編集されたものです。当初のこの大要は膨大で、数十巻にも及ぶものでしたが、黄女史は中国の書店で販売されている非常に凝縮されたバージョンを見ただけでした。

エモリー大学のコピーは、キャンドラー神学校(Candler School of Theology)のピッツ神学図書館(Pitts Theology Library)にあります。この1826年版はロンドンの書店から直接購入したものです。この書物はページ番号が無く、漢字でブロック印刷されていますが、ある時点で英語のラベルが付いた表紙付きの10巻に改編されました。

黄はそのような古い版の本草綱目に出会えることを想像もしていませんでした。彼女は、「それの歴史を感じることができます」として、「紙はとても黄色く、薄くて、もろいので、ページをめくるときに破れないかと心配でした。」と述べています。

“穀物、野菜、果実”と題された巻は、手や足の荒れ、酒さ、カニシラミ誘発かゆみ、犬咬傷の膿瘍および膿疱などの皮膚障害への8用途を含む、イチョウ種子の伝統的な17用途を説明しています。李時珍は、挽いた種子を米酒などのアルコールと混合した、また砕いた種子を菜種油に浸したペーストを用意し、そのペーストを患部に塗布することを推奨しています。


驚きの発見

銀杏(ぎんなん)(出典:by あさづけ なすこ/写真AC)

以前の研究から、イチョウの種皮が腸内細菌性病原体に対して抗菌活性を示すこと、そして、イチョウ葉はいくつかの腸内細菌と皮膚病原体黄色ブドウ球菌の両方に抗菌活性を示すことが明らかになっています。

しかし、黄女史は、彼女が古代のテキストから集めた、皮膚疾患のための局所治療としてのイチョウ種子の使用に関する情報をテストしたかったのです。皮膚病原体は、抗生物質耐性菌を治療するための新しい手法を見つけるべく焦点を当てているクェイヴ研究室にとって、特に興味深いものです。

黄女史はテストに使用するイチョウのサンプルを集めました。種子からの抽出物は、水、エタノールまたは菜種油のいずれかを使用して、本草綱目の勧告にできるだけ近いところで処理されました。黄女史とシャサーニュ氏は、12種類の細菌株に対して、種実、未熟種子、種皮からのイチョウ抽出物の評価を含む、微生物実験を行いました。

この研究結果から、イチョウ種皮および未熟種子を試験した3株;つまりC.アクネス菌、黄色ブドウ球菌および化膿連鎖球菌に抗菌活性を示すことが明らかにされました。統計分析からは、イチョウ試料の抗菌活性イチョウ酸 C15:1濃度との間に正の相関関係を見出し、それが活性に関与していることも示唆されました。

黄女史は、「我々の調査結果はまだ基本的な机上論の段階にあります ―これらの抽出物は動物や人間の研究ではまだテストされていません ― しかし、本草項目が語るこの古代の物語は本物のようです」 として、「これは私が学生薬学者として、現代の研究に導かれるべく、古代の植物治療薬を使うことの価値を理解するためのものです」と言っています


引用ニュース&原著論文

🔵 エモリー大学内広報:Secrets of the Ginkgo Seeds – A campus tree leads a student to an ancient Chinese text and a laboratory discovery (EMORY UNIVERSITY)

🔵 原著論文(オープンアクセス;無料で全文をご覧になれます):Validation of a 16th Century Traditional Chinese Medicine Use of Ginkgo biloba as a Topical Antimicrobial.
Front Microbiol. 2019 Apr 16;10:775. doi: 10.3389/fmicb.2019.00775.
Chassagne F, Huang X, Lyles JT, Quave CL


イチョウ・銀杏関連のリンク

 

 

 

Seigoの追記

現代の病院では多剤耐性細菌性病原体(MRSAなど)が問題になっていますが、これは抗生物質の多用のためと言われています。

この問題に対処するための新しい解決策が探求されており、植物からの二次代謝産物が抗菌化合物の豊富な供給源であることが分かってきました。

このサイトでは自然界がもともともっている抗菌作用に着目し、新しいニュースがありましたら優先的に取り上げていきます。

イチョウと言えばイチョウの葉エキスなどのサプリで有名ですが、今回は実の銀杏(ぎんなん)のほうから抗菌作用が見つかりました。ただイチョウ酸を抽出すると皮膚毒性をもつということで、副作用を減らすことも課題のようです。

そういえば銀杏を食べて苦く感じる時がありますが、あれがちょっとした毒性だったのでしょうか・・・?

 

 

 

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