【最新論文】腸で血液が作られる?

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「ヒトの腸の血液幹細胞から血液中の血球が最大10%まで供給される可能性」
コロンビア大研究

これまで科学者は血液細胞は骨髄細胞の中の造血幹細胞から作られるというのが常識でした。

移植の問題

腸移植はクローン病など長疾患の患者さんの腸がダメになった場合のただ一つの長期的な治療法です。
ですが拒絶反応や免疫抑制によって命に危険な合併症などの副作用を起こしやすいです。
臓器を移植すると免疫システムがそれを異物とみなして攻撃するのです。
強い免疫抑制剤はその反応を弱めてくれるものの、感染症や他の合併症にかかりやすくなってしまいます。

ドナー由来の血液細胞はレシピエントにどう役立つ?

腸移植を受けた患者さんの血液中の白血球を分析してわかったのは、ドナー由来の腸からの血液細胞は成熟しており、しかも患者さんの体に合うように教育されていました。
同じように移植後に作られた患者由来の血液細胞もドナーの腸を受け入れられるように教育されるかもしれません。

Sykes氏は

「明らかに患者さんの免疫システムから移植を、そして移植から患者さんを守るという相互関係があります。」

腸にある造血幹細胞は最終的にレシピエントからの循環プールに置き換わることもわかりました。

この発見は移植を改善する?

ドナーの血液細胞が多いと拒絶反応が低くなるので、この結果は移植をうまくいかせる新しい方法の指針になります。
患者さんの血液からドナーの細胞が含まれてるとわかった時、腸の血液幹細胞の貯蔵庫が発見されました。
研究者はドナーの血液細胞を同じドナーの腸の造血幹細胞に戻しました。
ドナーの腸の細胞からできた血液細胞はレシピエントのための移植にいいかもしれません。
患者さんの血液中にドナー由来の血液細胞があるほど、拒絶反応は起きにくいようです。

「ドナーの細胞が患者さんの血液の中に多いと今受けているような免疫抑制は必要ないかもしれません。免疫抑制を減らせれば結果を改善できるかもしれません」(Sykes氏)

ドナーからの造血幹細胞を加え移植用臓器も2者間のクロストークを増やし、移植を受け入れやすくするかもしれません。
「それは患者さんの人生を劇的に改善するでしょう。私たちの究極のゴールは免疫寛容を得て免疫抑制を完全に取り除いて、患者さん自身の力で移植を治癒することです。それこそが本当の聖杯です。」(Sykes氏)

次は?

研究者は腸移植の造血幹細胞の数を増やし、ドナーの血液細胞を血液中に増やして免疫抑制剤を減らせるような研究を計画中です。
造血幹細胞を持ってない臓器の移植にも適用できるかもしれません。

(注)
この研究で腸移植を受けた21人の患者を分析しました。
造血幹細胞の新しい集団の発見はすごいことですが、現在の治療の変化を正当化するものではありません。

「循環プールによって維持される機能性造血幹及び前駆細胞が含まれるヒト腸管移植」という研究は、11月29日にCell Stem Cellに掲載されました。

引用文献
Human Intestinal Allografts Contain Functional Hematopoietic Stem and Progenitor Cells that are Maintained by a Circulating Pool

Seigoの追記

う〜ん、これは腸造血説が証明されたと言えるかもしれません。

この説は古くはエジプトでもあったそうですが、日本で生物学者の千島喜久男博士や森下敬一博士が提唱しておりました。

血液は骨髄で作られると教わってきましたが、千島博士は骨髄造血は飢餓状態で稀に起こった現象で骨髄は造血器官ではないと否定、小腸こそが本当の造血器官だとしています。

なので血液の病気を治すには小腸を治しましょうということらしいです。
真実でないことを真実だということになってることって結構あるのかもしれませんね。

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