海洋細菌の新たな有毒金属の解毒法 (英国の最新研究レポート)

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今回は私たちの母なる海に生息する細菌が、海の浄化作用に役立っていることを示す証拠を科学的に解明した研究の報告です。

英国のイーストアングリア大学の最新研究がプレスリリース(英語)されましたので、それを和訳したものをご紹介します。

シアノバクテリア(藍藻)〔出典:Wikimedia commons〕

ニュースタイトル「海洋細菌は有毒金属の抑制に光を当てる」

英国のイーストアングリア大学(UEA)が率いる研究が、海洋に生息する細菌が鉄や銅などの金属イオンの毒性から細胞をどのように保護するかについて新たな手掛かりを提供しています。

金属イオンは生命に不可欠ではあるが、他の分子と結合すると細胞を損傷する活性酸素種(ROS)- すなわち好反応分子をも生成する可能性があります。

ヒトでは、活性酸素種は加齢や癌などの病気にも関連しています。

鉄の毒性を減らすために、(シアノバクテリアの)フェリチンと呼ばれるタンパク質類がフットボール型をしたタンパク質の殻の中に金属イオンを解毒して貯蔵し、その置かれた環境内の鉄分が不足すると細胞によって引き寄せられ、安全でアクセス可能な沈殿(accessible deposit)を生成します。

カリフォルニアのエセックス大学とスクリップス研究所の研究者と協力してUEAチームは、ある特定の海洋細菌のフェリチンがこの解毒プロセスの反応を可能とする方法を発見しました。

珍しいことに、バクテリアは鉄ではなく高レベルの銅に反応してフェリチンを生成します。

UEAの化学学部(UEA’s School of Chemistry)の Nick Le Brun教授は、次のように述べています。「この新しい経路に含まれる鉄は、他の鉄含有タンパク質から銅に置換され、そしてバクテリアはフェリチンを生成することによって置換鉄の毒性を処理します。ここでのフェリチンは他のバクテリアよりも動物のものによく似ていることから、これは特に興味深いものです」。

この種のプロセスはこれまで科学者によって発見されたことはなく、様々な生物に多様なフェリチンメカニズムが働いていることを確認するものです。

エセックス大学のDima Svistunenko博士は、次のように述べています。「有害なROSを生成する鉄と酸素の化学的性質は、さまざまなシステムで研究されてきました。我々は全く新しい反応性を知ったのですが、これはタンパク質分子を横切る長距離の電子移動を含むこれまでにない解毒プロセスを指摘するものです」と。

チームによって行われたゲノムデータベースの検索はまた、他の多くの類似の海洋細菌がストレス条件下で同様のフェリチンを産生する可能性があることを明らかにしました。

この研究チームは現在、研究を拡大して新しいメカニズムがどれほど広範囲に及んでいるかを調査することを計画しています。

引用:
🔵 英語ニュース:Marine bacterium sheds light on control of toxic metals(January 14, 2019, University of East Anglia

🔵 元の学術論文:Reaction of O2 with a diiron protein generates a mixed-valent Fe2+/Fe3+ center and peroxide (PNAS, February 5, 2019 )

サプリメントで有名なスピルリナ(藍藻類の一種)〔出典:麻麩あざらし/写真AC〕


 

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