ケルセチンとある薬で脳の老化細胞が除去され認知症が改善する!? (ジョンズホプキンス大最新研究)

ニュース/レビュー

アルツハイマー病マウスが2種の薬剤だけで脳機能が回復したという報告がジョンズホプキンス大学医学部が発表しました。

その論文はNature Neuroscience(ネイチャー・ニューロサイエンス) 誌に発表され大学のサイトにはそのレビューが掲載されました。

このレビュー記事(英文)を翻訳したものをここでご紹介します。(翻訳のプロではないので読みづらかったらすみません m(_ _)m )

アルツハイマー病マウスにおける脳機能の回復

マウス実験から、ある種のアルツハイマー病のマウスの脳からもう分裂しない細胞を選んで取り除くと、脳の損傷や炎症が軽減され、認知機能低下のペースが遅くなる可能性があることが明らかになっています。研究者によると、これらの結果は、老化した細胞が人のアルツハイマー病によって起こるダメージの一因であるという証拠を新たに示しています。

国立老化研究所(National Institute on Aging)付属神経科学研究室の主任研究員で、ジョンズホプキンズ大学医学部の神経科教授であるマトソン博士(Mark Mattson, Ph.D)は「この結果は、老化した細胞を除去することはヒトのアルツハイマー病を治療するための有望な道であることを示します。」と述べています。

この研究は4月1日に Nature Neuroscience(ネイチャー・ニューロサイエンス) 誌に掲載されました。

アルツハイマー病の脳の収縮(右)〔出典:Wikimedia Commons, by derivative work: Garrondo (talk)SEVERESLICE_HIGH.JPG: Link


アルツハイマー病は、推定580万人のアメリカ人が罹患している脳の加齢性変性疾患です。加齢性認知症の最も一般的な原因としては、周囲のニューロンを殺してしまうアミロイドタンパク質の凝集が特徴です。プラークというアミロイド蓄積と関連する神経細胞死の領域は、この病気の顕著な特徴です。今日まで、この病気の成功した治療は知られておらずプラークが形成され始めるにつれて、患者は進行性記憶喪失、学習障害、そして後期段階では妄想および偏執症(へんしゅうびょう;不安や恐怖の影響を強く受けており、他人が常に自分を批判しているという妄想を抱くものを指す。ウィキペディアより)を経験します

研究者らは、プラークの近くにオリゴデンドロサイト前駆細胞(ミエリン鞘を作るオリゴデンドロサイトになる前の細胞)と呼ばれる特定の脳細胞が多数出現することを発見しました。健康な脳では、オリゴデンドロサイト前駆細胞神経細胞を支える細胞に成長し、傷を治したりゴミを取り除く保護層でそれらを包みます。アミロイドタンパク質によって作り出される環境は、これらの前駆細胞が分裂や通常の機能を果たすのを止めてしまいます。アルツハイマー病などの病気ではオリゴデンドロサイトが周囲の脳組織により多くのダメージを与えてしまうような炎症性シグナルを送り出します。

「私たちはアミロイドがニューロンを傷つけていると信じています、そしてオリゴデンドロサイトはそれらを修復するために近づいてきますが、何らかの理由でアミロイドが仕事を完了せず老化を引き起こしてしまいます」とMattsonは言います。

研究者らは、正常に働かない老化したオリゴデンドロサイト前駆細胞を選択的に除去できれば、アルツハイマー病の進行を遅らせることができると推測しました。

また凝集素たアミロイド斑のようなアルツハイマー病の特徴のいくつかを持つように遺伝子操作されたマウスでその推測を調べて見ました。

老化を防止する薬剤

ケルセチンの分子構造(画像をクリック/タップすると拡大できます。出展:Wikimedia)


研究者らは、老化した細胞を除去するために米国食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration)によって承認された2つのダサチニブケルセチンを混ぜた薬による治療を考えました。ダサチニブはもともと抗がん剤として開発されたもので、ケルセチン多くの果物や野菜に含まれる化合物です。

この薬物の組み合わせは、以前の他の病気の研究において老化細胞を排除する効果的な方法として証明されています。

実験方法

研究者らは9日間アルツハイマー病のマウスのグループに薬を投与した後、マウスの脳の切片から、そこにある損傷の徴候と老化したオリゴデンドロサイト前駆細胞の存在を調べました。

結果

この実験では、薬で治療したマウスには治療を受けなかったマウスとほぼ同じ量のアミロイドプラークがあったと報告されています。しかし研究者らは、これらのプラークの周りにある老化細胞の数が、薬で治療されたマウスでは90パーセント以上減少したと述べています。

彼らはまた、薬が老化したオリゴデンドロサイト前駆細胞を次々と死なせることを見つけました。これらの研究から、ダサチニブケルセチン治療によって、老化したオリゴデンドロサイト前駆細胞が効果的に排除されたことを示しました。

研究者らは次に、ダサチニブとケルセチンの治療の身体的効果がアルツハイマー病に伴う認知機能の低下からマウスを守るかどうか実験しました。

これをするために、遺伝子操作されたマウスに月齢3ヵ月半から開始して、11週間毎週1回、ダサチニブとケルセチンを組み合わせて与えました。マウスが迷路をどのように辿るかを観察することによってマウスの認知機能を定期的に評価しました。

11週間後、薬の治療を受けなかったマウスは、ダサチニブとケルセチンで治療したマウスと比べて、迷路をクリアするのに2倍の時間がかかることが判明しました。

11週間後に再び行ったマウスの脳の分析から、未治療のマウスと比べて、ダサチニブとケルセチンで治療したマウスの炎症が50%少ないことが判明しました。

研究者らは、これらの結果はマウスの脳から老化細胞を排除することが認知機能を守り、アルツハイマー病様プラークに関連する炎症を軽減することを示していると述べています。

マトソン博士は、細胞老化はアルツハイマー病などの加齢性疾患の研究に新たな関心が集まっている分野です、と述べています。それはより古い細胞が急速に新しいものと交換される皮膚のような末梢組織において最も広く研究されてきたものです。これらの組織では、老化細胞は老化の正常な部分として蓄積し、しわ、硬さやおよび脆弱性などの老化した肌のよく知られた何らかのサインを引き起こします。

マトソン博士は、アルツハイマー病の症状と特徴を持つように遺伝子操作されたマウスは、人の(脳の)状態の生物学的反応が全く同じではないことを注意しています。例えば、脳細胞はアミロイドプラークが形成されても、マウスの場合は死にませんが、人間では死んでしまいます。

ーーー 翻訳ここまで ーーー


引用ニュース & 原著論文

🔵 英語ニュース:Restoring brain function in mice with symptoms of Alzheimer’s disease

🔵 原著論文 :Senolytic therapy alleviates Aβ-associated oligodendrocyte progenitor cell senescence and cognitive deficits in an Alzheimer’s disease model, (Nature Neurosciencevolume 22, pages719–728 (2019)  )

Seigoの追記

たいへん興味深い報告なのでポイントを以下に整理しました。

🔵 オリゴデンドロサイト前駆細胞神経細胞を支える細胞に成長し、傷を治したりゴミを取り除く保護層でそれらを包みます。

🔵 アミロイドタンパク質オリゴデンドロサイト前駆細胞が分裂や通常の機能を果たすのを止めてしまいます。

🔵 アルツハイマー病などの病気ではオリゴデンドロサイトが周囲の脳組織により多くのダメージを与えてしまうような炎症性シグナルを送り出します。

🔵 玉ねぎなどの野菜に含まれるケルセチンと、抗がん剤の一種であるダサチニブをアルツハイマー・マウスに与えると、βアミロイドは減少しませんでしたが、老化したオリゴデンドロサイト前駆細胞減少しました(取り除かれた)

🔵 ケルセチンダサチニブを11週間(週1回)投与されたマウスは、脳の炎症が50%減り迷路テストでは2分の1の時間になるまで回復した。

脳のできてしまった老化した細胞を除去することによって認知症が改善したとのことです。老化した細胞をうまく掃除できないことが認知症の原因になっている可能性が有力になってきたわけです。

2つの薬剤のうちの1つが有名なケルセチンだったとは驚きです。ケルセチンを多く含むお茶やサプリを見つけましたので、以下にリンクを貼っておきます。

ケルセチンが多く含まれるお茶とサプリ

老化を止める食品として紹介されたケルセチン

たけしの家庭の医学の「全身の老化を止める科」(2019年1月22日放送)で紹介されたのがケルセチンでした。それを以下の記事にまとめてあります。ご興味のある方はどうぞ ↓

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