腸内フローラがヒ素を解毒していることが判明! (モンタナ州立大学の最新研究レポート)
ニュース/レビュー
今回は腸内細菌によるヒ素の解毒に関する研究の報告です。
米国のモンタナ州立大学が最新研究をプレスリリース(英文)しましたので、それを和訳したものをご紹介します。
この記事のもくじ
ニュースタイトル「MSUの研究は腸内フローラが急性ヒ素中毒から守ってくれることを指摘」
モンタナ州立大学(MSU)で行われた研究によると、飲料水に含まれるヒ素に晒されているおよそ2億人の人々にとって、ヒ素による毒性からの防御に腸内細菌が大きな役割を持っていることが明らかになりました。5年間にわたりMSUの博士候補者Michael Coryellは、顧問のSeth Walk、および委員のTimothy McDermottと協力して、ヒ素を摂取した際ヒトの腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう、以後「腸内フローラ」と呼ぶ)にどのような影響が見られるかの研究を行いました。急性ヒ素毒性の完全な防御に対する内フローラの不可欠な役割について、12月21日の Nature Communications 誌に発表された論文で詳細に述べられています。
過去20年間、連邦毒性物質・疾病登録局の最も有毒な化学物質のリストにヒ素が含まれていることからわかるように、低濃度でもずっと摂り続けていると後年のがんや心血管疾患につながる可能性があるため、この研究は特に重要です。
微生物学および免疫学の博士候補であり、MSUの農業大学および文字科学大学の分子生物学プログラムの研究員であるCoryellは、ヒ素毒性の危険性を軽減できるような、プロバイオティックおよび腸内フローラに焦点を当てた治療法の開発に貢献したいと、次のように語っています。
「腸内フローラ研究者にとって次の大きな課題の1つは、実験室での結果を実際の解決策に発展させることです」
Coryell氏は、National Institutes of Healthから、2016年度のRuth L. Kirschstein個人研究奨励賞を受賞しました。
McUermottの農学部の土地資源環境科学省の過去の研究では、環境中の微生物が土壌や岩石中の天然ヒ素を、低毒性にも高毒性にも生化学的に変換できることが示されています。
本論文の筆頭著者であるWalk微生物免疫学科助教授は、体内に吸収される前のヒ素に対し人間の腸の中の微生物がどのような作用を及ぼしているかはよくわかっていないと言います。
「病気に影響を与える要因はたくさんあります。環境、食事、遺伝などですが、人間を対象とする研究では食事も違い別の場所の水を飲む異なった遺伝子を持つ人たちを調べるしかないため、我々が調査できる事柄はあまりないのです」
Coryell氏はまだ明らかになっていない影響を整理する目的で実験的コントロールを用意するためにマウスを使用しました。抗生物質で腸内フローラを破壊すると、ヒ素は排泄されるよりも組織に蓄積されやすくなることがわかりました。
「微生物活性が全く無くなった訳ではないのに、ヒ素をうまく取り除かなくなり組織に蓄積しやすくなったという点が非常に興味深いです。無菌環境で育ったマウスも同じ傾向を示しました。ところが、そこへヒトの腸内細菌を与えたところヒ素への防御効果が見られたのです」
Walk助教授は次のように語っています。「これは大きな進歩でした。さまざまな人の腸内フローラを無菌マウスに与え、ヒ素防御効果を調べることができます。腸内フローラによって、ヒ素防御効果が異なることが明らかになりました。ヒ素に汚染された同じ水源の水を利用していても、病気になるのが他の人より遅い人がいますが、それはより防御効果が高い腸内フローラを有しているからかもしれません。こうした考えはこれまでの疫学研究やモデルでは考慮されていません。まだ新しい分野なのです。しかし我々のデータがかなりはっきりと示しているのは、腸内フローラそのものとその構成要素の両方が重要だということです。そのため、特定の個人がどの程度病気を発症する可能性があるかを予測するためには、腸内フローラの役割とどれほどのヒ素防御効果を示すかを明らかにする必要があります。こうした結果によって土台が作られていくのです。
ヒ素のような毒性物質に対し腸内フローラがどのように防御に寄与しているかを解明することで、プロバイオティクスなどの治療法の確立につながれば、汚染されていても水源を変えることが実際的ではないような地域や村の人々を助けることができます。腸内フローラ研究は実効性のある腸内フローラ治療法へと着実に進んでいます。そして食物と水の汚染の問題はここモンタナ州だけのものではありません。世界中での大きな関心事でもあるのです」
引用ニュース & 原著論文
🔵 英語ニュース:Research shows gut microbiome protects against acute arsenic toxicity(Montana State University, JANUARY 4, 2019)🔵 元の学術論文:The gut microbiome is required for full protection against acute arsenic toxicity in mouse models(Nature Communications, 2018)
Seigoの追記
以前の記事『アルミニウムは腸に毒! その害を取り除いてくれる植物性乳酸菌の論文をご紹介」(2018年4月5日)で取り上げましたが、乳酸菌を含む腸内細菌はアルミニウムやヒ素や重金属などのトキシックな物質から守ってくれるんですね。でも抗生物質で腸内細菌がやられるとヒ素の毒から守ってくれなくなってしまうとは・・・
ヒ素汚染はアジア特にバングラディッシュで深刻で、皮膚や呼吸器、内臓の疾患やがんなどの病気になるそうです。
慢性ヒ素中毒の患者さんは世界で数千万人に上るとか。ヒ素は天然にも存在しますが農薬や工業(半導体など)にも利用されています。
イタリアやフランスやドイツでもぶどう畑にヒ素の入った殺虫剤を使ってワインを飲んだ多くの人が中毒にかかったこともあるそうです。
ヒ素を無毒化する方法が色々と研究されているので、早くヒ素中毒を激減させられたいいですね。
腸内フローラに関する書籍
ヒ素に関する書籍
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20余年アメリカで遺伝子治療&幹細胞の研究者をやってきました。
特に遺伝病の間違った遺伝子をピンポイントで修復し、元に戻す技術開発です。
理学博士(Ph.D. )
アメリカ生活で学んだアンチエイジングなど健康に関する知識をシェアしたいと思います。
巷の情報もご紹介、時にはブッた斬ったりしてしまうかもしれません。
またポイントなどの節約術や生活に便利なガジェット(スマホやアプリの紹介)も記事にしますので参考になれば嬉しいです。
皆さん、ご一緒に「究極のヘルシーライフ」を楽しみましょう♪
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