アルミニウムは腸に毒! その害を取り除いてくれる植物性乳酸菌の論文をご紹介《論文速報シリーズ》

健康情報

植物性乳酸菌がアルミニウムの毒から体を守ってくれるという論文を紹介させていただきます。

アルミニウムという重金属がアルツハイマー型認知症を引き起こしているという仮説があります。

アルミニウムは缶詰歯磨き粉などから体の中に入ってきてしまいますから、それでアルツハイマーになってしまうのは何かと心配ですよね。

アルミニウム・デトックスとしてもアルツハイマー予防としても乳酸菌が効果があるという可能性はとても心強いです。

また論文中に出てくるタイトジャンクション・タンパク質というのは細胞をしっかり繋げて腸から悪いものが器官や血液などに侵入するのを防いでくれますが、アルミニウムでダメージを受けると腸の透過性が上がってしまという結果がこの論文で報告されいます。

これってリーキーガッツ(腸漏れ)症候群ですよね?

つまり腸がスカスカになると食べ物や菌や物質が器官や血液に漏れ出てしまう訳ですよね。

これについてもいつか記事にしたいと思いますが、「リーキーガッツがアルミニウムでも起きるのか」と勉強になった次第です。


論文のポイント

  • アルミニウムは人や動物の健康に深刻な害となるかもしれません。
  • CCFM639株が腸の障壁を強くし、酸化ストレスや炎症反応を和らげてくれるかどうか調べました。
  • その結果この株がアルミニウムによる毒性を軽減することがわかりました。
  • 腸のバリアを保護し、アルミニウムによって起こる酸化ストレスや炎症反応を和らげることによってアルミニウムの吸収を阻害できます。

イントロ(前書き)

アルミニウムは食べ物や飲み物から体に入ってきます。

ヨーロッパでは1週間に0.2-1.5mg/kg/体重

中国では大人1.3mg/kg、子供3.3mg/kg

ヨーロッパの規定は1週間1mg/kgなので、中国は取りす可能性があります

 過剰なアルミニウムをとると、どこへ蓄積するか? 
・脳
・肝臓
・腎臓
・脾臓
・骨
・上記を含むほとんどの組織に蓄積する
(引用論文はこちら

 アルミニウムが蓄積すると、どんな病気を引き起こす可能性があるか? 
・アルツハイマー病
・透析脳症
・小球性貧血
・骨軟化症
(引用論文はこちら

腸管は体にアルミニウムが入って最初のバリアーとなるところなので、アルミニウムの40%が腸粘膜に蓄積しています。(ラットのデータ。ヒトではない)

腸のバリアーとは、重金属など有毒な物質から体を守るため単一層の上皮細胞タイトジャンクション(TJ)タンパク質からなります。

アルミニウムが吸収される酸化ストレス腸の炎症を起こします。

同時にTJタンパク質にダメージを与えたり、腸のバリアー機能を損なったり、細胞にアポトーシス(細胞の自殺)を起こしたりしてしまい、腸の透過性を増加させてしまいます。

プロバイオティクス(善玉菌)様々な体に良い効果があり、中でも

カドミウムや鉛などの重金属の毒性を和らげるという報告があります。

他にも免疫力をアップしたり、酸化ストレスを軽減したり、TJタンパク質を分配することで腸のバリアー機能をアップし、腸の透過性を減らしたりしてくれます。

TJタンパク質は大きなグループで、足場タンパク質のzonula occludens-1 (ZO-1)、バリアー機能の維持に重要な膜貫通タンパク質のオクルディンやクローディンからなります。

いくつかの乳酸菌はTJタンパク質の発現や分配を部分的に調節することで、腸のバリアー機能をよくすることが示されています。

前回の研究では植物性乳酸菌 (Lactobacillus plantarum CCFM639) がアルミニウムの結合と抗酸化能力をアップすることによって、インビボとインビトロでアルミニウムの毒性から守るということを実証しました。

マウスでは腸で有意にアルミニウムの吸収を阻害し、アルミニウムの組織での蓄積を減らし損傷を緩和します。

私たちは L. plantarum CCFM639が腸を守り、炎症反応を調節することでアルミニウムの吸収を防ぐと仮説を立てました。


実験方法

ヒト結腸腺がん細胞 HT-29 cellsを使用
4 mMのアルミニウムイオン
植物性乳酸菌 (Lactobacillus plantarum CCFM639) : 1 × 108 CFU/穴

黒毛のマウス(C57BL6)6週齢 ♂ [ インビボ(生体内)実験 ]
アルミニウムイオン200 mg/Lを水に溶かして摂取
L. plantarum CCFM639 1 × 109 CFUを0.2 mLのスキムミルクに入れ1日1回摂取

《グループとして》
・コントロール
・アルミニウムのみ
・乳酸菌のみ
・アルミニウム+乳酸菌
・アルミニウム+デフェリプロン(キレート剤)をそれぞれ


ヒト結腸由来の培養細胞:0−24h(インターベーションアッセイ:アルミニウム暴露とともに)
ヒト結腸由来の培養細胞:0−24h、24–48h(セラピーアッセイ:アルミニウム暴露後)
マウス腸細胞(インビボ;生体内):0−8週間、8−16週間(インターベーションアッセイ)

《分析法》
・MTT試験による細胞毒性の評価(HT-29細胞)
・アネキシンV-FITC/PI キットによるアポトーシスの測定(HT-29細胞)
・免疫蛍光染色によるTJタンパク質の測定(HT-29細胞とマウス腸細胞)
・Real-time quantitative PCR (RT-qPCR)によるメッセンジャーRNAの測定(マウス腸細胞)
・ELISAによるエンドトキシンアッセイで膜透過性を測定(マウス腸細胞)
・酸化ストレスの測定(HT-29細胞)
・スーパーオキサイドディスムテーゼ(SOD)
・カタラーゼ(CAT)
・マロンジアルデヒド(MDA)
・放射性免疫沈降法による炎症誘発性サイトカインの測定(HT-29細胞とマウス腸細胞)


結果

<アルミニウム処理で腸由来の細胞は死ぬが、乳酸菌処理すると死なないばかりかアルミニウムにさらされてない細胞と同じレベルになった>

細胞毒性の測定ではアルミニウムで死んだ細胞が多かったが、乳酸菌処理すると有意にアポトーシスに対しての防御効果を示しました。アルミニウム処理をせず乳酸菌のみでは生存率など特に変化はありませんでした。

<乳酸菌処理するとTJタンパク質はアルミニウムによる損傷を顕著に軽減する>

小腸と結腸の免疫蛍光染色の実験では、アルミニウムによって3種のTJタンパク質の強度と密度が減りますが、乳酸菌処理すると治りました。キレート剤のデフェリプロンの効果の方が低かったです。またメッセンジャーRNAの発現はアルミニウムによって減り、デフェリプロンと乳酸菌では回復が見られましたが、特に乳酸菌での治療はコントロールに近いレベルまで増えました。

乳酸菌処理するとエンドトキシンがあまり増えない

血清中のエンドトキシンによって膜の等価性を評価しました。

アルミニウムにさらされるとエンドトキシンは非常に増えますが、乳酸菌処理によって浸透性は著しく低下し、特に乳酸菌はデフェリプロンより優れていました。

<アルミニウムで酸化ストレスが増加するが、乳酸菌処理すると酸化ストレスが軽減した

インビトロおよびインビボの両方の酸化ストレスアッセイでは、アルミニウムはROSおよびMDAのレベルを著しく増加させ、SODCATの活性が低下しました。特にインビトロでのROSレベルは、コントロールと比べてそれぞれインターベーションアッセイ2.66倍およびセラピーアッセイ3.13倍に増強しました。

乳酸菌とデフェリプロンによって血清におけるMDAレベルの有意な低下およびSODおよびCAT活性の増加がもたらされました。しかし乳酸菌はこれらの酸化ストレス因子に対してデフェリプロンより顕著な効果を示しました。

アルミニウムで炎症性サイトカインが増加するが、乳酸菌処理すると炎症性サイトカインが有意に軽減した>

アルミニウムは細胞と腸で炎症性サイトカインTNF-αIL-1βおよびIL-6のレベルを有意に増やしました。

インビトロで、乳酸菌は3つのサイトカインの全てのレベルを回復させることができました。乳酸菌のみはサイトカインはコントロールと同じレベルでした。

インビボでは乳酸菌、デフェリプロンの摂取は、大腸のIL-6を除いて、サイトカインのレベルは良くなり、特に乳酸菌はデフェリプロンよりも前炎症性サイトカインに対するアルミニウムの影響を低くする効果が上がりました。


考察(ディスカッション)

植物性乳酸菌 (L. plantarum CCFM639) アルミニウム排泄を増やすことができ、体の第一の防御線として働く腸障壁を保護できることが観察されました。一方、L. plantarum CCFM639は、酸化ストレスと炎症反応を緩和する能力もあります従ってL.planarum CCFM639がアルミニウムの吸収を減少させ、腸からアルミニウムを守り、TJタンパク質を保護し、酸化ストレスを緩和し、抗炎症により腸の健康を保護することができると仮説のもとに研究しました。

また乳酸菌は腸に行く前に胃酸や胆汁を通って生き残る必要がありますが腸に届く頃には菌が減少してしまうかもしれません。多くの研究では、善玉菌の経口投与は1日あたり108 CFU以上でなければならず、効果を得るにはヒトまたは動物の腸内で106 CFUを超える必要があることが示されています。なので本研究では109 CFUを使いました。

毒性物質による腸バリアーの機能不全を改善できる善玉菌の証拠は増加を示しています。乳酸菌は腸内微生物の有益なメンバーとしてよく知られたグループの1つであり、非常に一般的にプロバイオティクス食品に使われています。これまでの研究では、ラクトバシラス属がTJタンパク質の調節によって正常な粘膜バリアが維持できるとが示されています。 アルミニウムは細胞間の漏出を引き起こし、腸のバリアーを横切るアルミニウムの移動を促し、TJタンパク質を損傷します。さらにアルミニウムは細胞の損傷とアポトーシスを誘導し、これが上皮層の漏出を引き起こし、より多くの量のアルミニウムが全身循環に入ります。したがって、腸バリアの完全性を維持することは、腸の吸収を阻害する上で非常に重要な役割を果たします。結果としてL.planarum CCFM639がインビボでTJタンパク質レベルを有意に増加させることを示しました。よってTJタンパク質の調節は、CCFM639がバリア機能を保護する1つの方法であり得ます。

アルミニウム毒性のメカニズムに酸化ストレスや炎症反応も含まれます。 アルミニウムは酸化ストレスを引き起こし、SODおよびCAT活性の低下およびより高いレベルのMDAをもたらします。また、腫瘍壊死因子TNF-α)、インターロイキン-1βIL-1β)およびIL-6を含む前炎症性サイトカインの産生を刺激します。さらに炎症誘発性サイトカインは、酸化的ストレスに重要なNF-kB経路を活性化し、次いで活性酸素種(ROS)を生成します。同時に、ROSの生産は炎症過程を悪化させるでしょう。酸化的ストレスは密着結合をゆるくし、細胞透過性の増加をもたらす可能性があります。善玉菌腸炎症に有益な効果をもたらすことを示す証拠が増えています。それらはまたNF-kB経路の阻害を引き起こし、それにより酸化ストレスを緩和します。この研究ではL. plantarum CCFM639はセラピーアッセイでアルミニウムを加えませんが、ROSおよび炎症性サイトカインの生成を有意に阻害し、MDAレベルを低下させ、SODおよびCATの活性を増加させました。CCFM639は酸化ストレスと炎症に対して直接的な保護効果があります。この株のこれらの2つの特性はアルミニウムによる酸化ストレスと腸内の炎症から守るだけでなく、酸化ストレスと炎症によって誘発される連鎖効果に対しても防御することができます。

またL. plantarum CCFM639とデフェリプロンは腸内で良好で似たようなアルミニウム隔離能がありますが、前者はアルミニウム吸収を低下させ、腸の健康を維持するより優れた保護効果があることが示されました。 L. plantarum CCFM639のより良い防御効果は、抗酸化活性および抗炎症作用の増強によるもので、酸化ストレスと炎症に対する腸の健康をさらに保護しますが、デフェリプロンはアルミウム排泄を増加させるだけです 。したがってL.planarum CCFM639は、デフェリプロンよりも包括的な防御効果を有します。さらに乳酸菌は発酵食品に広く使用されており、一般に安全とされています。したがって醗酵豆乳、ヨーグルトなどの発酵食品中の機能的な善玉菌やスターター培養物としてこの株を開発することが可能です。しかも栄養価を高めるために果物および野菜ジュースに補充することができ、アルミニウム毒性に対して保護してくれるという利点もあります。


今回 引用した論文

この論文はオープンアクセスなのでスマホやパソコンで誰でも全文を見ることが可能 👍

論文タイトル:Potential of Lactobacillus plantarum CCFM639 in Protecting against Aluminum Toxicity Mediated by Intestinal Barrier Function and Oxidative Stress
タイトル和訳『 植物性乳酸菌 (Lactobacillus plantarum CCFM639) の腸のバリア機能と酸化ストレスによってもたらされるアルミニウムの毒性に対する防御の可能性 』

雑誌名:Nutrients. 2016 Dec; 8(12): 783.
著者:Leilei Yu, Qixiao Zhai, Fengwei Tian, Xiaoming Liu, Gang Wang, Jianxin Zhao, Hao Zhang, Arjan Narbad and Wei Chen

論文へアクセス(英語)

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