新型コロナウイルスがSARSに似ているので復習/日本人は症状が軽い理由

ニュース/レビュー

虎ノ門ニュースで青山さんが中国のデータは100倍少なく、感染者は2000ではなく20万人だとおっしゃっておりました(2020/01/27)。

またこれがたとえ大げさだとしても、人から人への感染を隠していた可能性が高くなってきたので、中国からの情報の信頼性は低いです。このような状況からすると、前回の2002年のSARSの公表された情報も信頼できないので、SARSの時の感染の仕方を勉強/復習しながらデータの再検討してみました。

信頼できる情報の1つの導き方として、前回のSARSの情報は中国からだけではなく、各国の感染者のデータも発表されておりますので、そのような外国のデータは中国政府のによる改ざんが難しいと考え、外国のデータだけを使って正しい死亡者数や死亡率を計算してみました。

それではまず、最初のSARSに感染した人からどのように全世界に広がったかをザ! 世界仰天ニュース(2020年1月28日)の情報からまとめていきます。

SARSの発症のヒストリー【保存版】

2002年11月  中華人民共和国広東省(香港と隣接した省)で海鮮卸売業を営んでいた周(しゅう)さんが、最初の感染者ではないかと考えられています。5日ほどせきと熱が続いた後ついに倒れ病院へ行き、肺炎と診断されました。新型ウイルスに感染しているとは気づかず隔離されることもありませんでした。

– しかし症状が全く良くならないので呼吸器専門の科がある別の病院へ移されました。4日後に周さんが最初に入院した病院では異変が起き始めていました。周さんをみた医師看護師一度食事を担当しただけの看護師一度点滴を変えただけの看護師たち30人以上が同じ症状を発症(40℃以上の熱、せき、呼吸困難)して倒れました。そしてついに(周を最初の運んだ)救急隊員が死亡してしまいました。

– 転院した周さんは新しい病院でようやく隔離されました。しかし新しい病院でもスタッフが次々と倒れていきました。その上、周さんにはどんな治療法も効果がありませんでした。そして周さんはひそかに「毒王(どくおう)」と呼ばれるようになりまます。じつは周さんは感染病を広げてしまう体質だったのです。

– それは「スーパースプレッダー(強力にまき散らす人)」と言って、SARSウイルスを一人で10人以上に感染させてしまう患者をこう呼びます。「スーパースプレッダー」が大量に感染物質を排出するのか? それとも環境など他の要因があるのか? などの問題は未だに分かっていません。

– SARSウイルスが世界各地へ猛スピードで広がった原因は、周さんの他にもう一人スーパースプレッダーがいたからでした。周さんが最初に入院した時の腎臓内科医リュウ・ジェンルン医師スーパースプレッダーだったのです。熱やせきの症状が出たリュウ医師は自ら胸のレントゲンに特に異常が見つからなかったのでただの風邪と判断してしまいました。(この時彼はすでにSARSに感染していたと言われている)

1つのエレベーターから感染は世界に広がった

リュウ・ジェンルン医師は姪の結婚式に出席するために香港へ訪れてしまったのです。そしてメトロポールホテルに宿泊し、エレベーターに居合わせた人に次々と感染させてしまったのです。その時にいた客が、カナダのトロントからの中国系カナダ人老夫婦、シンガポールから観光に来た女性3人組、ベトナムへ向かう中国系アメリカ人、全員で7人に感染させてしまったのです。しかも不幸なことにそのうちの4人がスーパースプレッダーだったのです。この人たちが全世界に散らばり感染が爆発的に増えました。

死のエレベータ
このメトロポールホテルのエレベータはスーパースプレッダーの人が去った後でも、このエレベータを利用した別の人に感染させたのではないかと疑われていて、合計16人の方が感染してたと言われています。このことを考えると、スーパースプレッダーの人が狭い空間で咳などをした場合その飛沫はすぐに地面に落ちるわけではなく、しばらくミスト状になり空気中をただよう可能性が高いと考えられます(これを最近ではエアロゾルという言い方をする?)。

今回の横浜に停泊しているクルーズ船での爆発的な発症の広がりは、もしかしたらスーパースプレッダーが利用した狭い空間(エレベーターなど)を多くの人が利用して感染が広がった可能性が考えられます。(追記:2020年3月1日)また日本の感染が拡大している地域では、エレベータや公共の便所、トレーニングジムなどでは特に注意が必要でしょう(満員電車では窓を開ける)。スーパースプレッダーの人が咳をした場合(花粉症の人の咳と区別がつかない可能性大)その人の飛沫が長い間空間をただよう可能性のある所では、マスク目を守るメガネ(花粉症対策用メガネなど)などが着用が必須と考えられます。そしてむやみにボタンや壁に触らないことです。


香港からベトナムへ

2003年2月23日  ベトナムへ向かった中国系アメリカ人はハノイの病院で意識不明になりました。病気の進行の早さに医師は戸惑いWHOのハノイ事務所に連絡。電話を取ったのはイギリス人のカルロ・ウルバニ医師でした。

WHOは謎の肺炎が中国で発生しているという情報をこの時点で掴んでいましたが、中国政府は事実をまだ公表していませんでした。これにより被害が広がっていました。WHOのウルバニ医師はハノイに入院している中国系アメリカ人の状態を調べ、香港から来ていたことを知り、中国で密かに流行っている謎の肺炎を疑いました。もし同じ病だったら国外へ流出したということで、ベトナムでも大きな集団発生する可能性を危惧しました。

ウルバニ医師はこの情報をWHOの関係者へ伝え、特に北京で働いていたWHOの医師 押谷 仁(おしたにひとし)医師(日本人)に伝えられた。彼は中国の等の肺炎解明のため北京入りして中国政府とやりとりをしていたが、ほとんど情報を与えてもらえていなかった。ウルバニ医師からの連絡でこれは未知なるウイルスではないかと意見が一致しました。

ベトナム・ハノイで発症した中国系アメリカ人の周りでは、彼と接した7人のスタッフが倒れました。ウルバニ医師はそのスタッフから得られたサンプルを日本やアメリカの検査機関に送りましたが、ウイルスを特定できませんでした(つまり未知のウイルス)。ウルバニ医師は患者がいる病棟をわずかなすき間がないくらい密封し、立ち入り禁止にしました。しかし防護服はなかったため、外科手術用のマスクを二重にしただけでした。

押谷医師は中国政府との2度目の話し合いに出席し、感染者は今まで聞いていた数の2倍以上(305→700人以上)、死者は5→25人と5倍に訂正されていました。押谷医師は広州に入らせて下さいと頼みましたが、中国側の研究者は「もう終息しているから大丈夫だ」と言いました。しかし上記の訂正した人数は公表しないように求められ、無用なパニックは避けたいと中国側が述べました。

ウルバニ医師はハノイの患者の症状から感染状況を推移して、このウイルスの特徴付けをしました。

① ウイルスは飛沫感染によって広がる
② 潜伏期間は3〜5日ではないかと予測

ウイルスの実態は分かり始めたものの感染を止めることは出来ず、ハノイの病院のスタッフは19人のうち14人が倒れました。ウルバニ医師は自らの危険を顧みず患者に寄り添い励まし続けました。

そんな中ベトナム保険省が感染症専門チームの入国を許可し、ウルバニ医師は押谷医師に真っ先に応援を頼んだのです。

2003年3月11日  完全閉鎖されていたハノイの病院に押谷医師が訪れました。しかしウルバニ医師の体には異変が起こり始めていました。

2003年3月12日  中国での発生から約4ヵ月後、WHOはウルバニ医師からの情報をもとに、この感染の診断基準を定め世界に向けて警告を発しました。そして始めてSARS(サーズ)という病名が名付けられました。

SARS
重症 急性 呼吸器 症候群


SARSの感染源は?

SARSの感染源は中国南部の動物市場という説もあり、そこでは様々な野生動物が食用として売買されています。

コウモリ → ジャコウネコ → 人間 のルートを通じてSARSが感染した疑いはあるが、未だに特定はされていません。
  • 患者1人から感染するのは通常は多くて3人です。

感染の仕方は?

人から人への感染は飛まつ感染が主体とされ、せきやくしゃみ、会話などにより患者のウイルスが粘膜(口やはな、目)に付着し感染するというもの。

日本でのSARSの報道が始まる(2003/3/17)

2003年3月17日 日本の報道機関から次のように放送された。

「アジアを中心に原因不明の肺炎が広がり、少なくとも9人が死亡、150人以上が感染しています。」

SARSの正体が判明

コロナウイルスの3Dコンピュータ画像(出典:Wikimedia Commons, by Nilses – Eigene Herstellung, パブリック・ドメイン, リンク


 

SARSの原因はコロナウイルスの一種と判明。

これにより迅速に患者をSARSと認定することができ、早い隔離が可能となりました。

SARSにはワクチンも薬もありませんでしたが、これで世界的パニックは一気に終息していきました。

SARSウイルスは封じ込めが有効

感染者を診察したと思われる病院は相次いで閉鎖。

入院患者も隔離され消毒が徹底されました。

ウイルスを防ぐ特別なマスクが売られ、台湾の地下鉄ではマスク着用を義務づけられました。

世界の感染者数と死亡率

2002年〜2003年にかけてパンデミックを起こしたSARSの各国のデータです。
感染者 死者 死亡率
中国 5327 349 6.6%
香港 1755 299 17.0%
台湾 346 37 10.7%
カナダ 251 43 17.1%
シンガポール 238 33 13.9%
ベトナム 63 5 7.9%
 合計 8098 774 9.6%
中国以外のデータまとめ 2711 425 15.7%
中国のデータだけ死亡率が以上に低いことが分かりますので、ここでも情報の改ざんをしている可能性が高いです。

世界32の国と地域で感染者8098人、死者774人に上りました。

ベトナム・ハノイの病院では5人が死亡しましたが一番最小限です。しかしウルバニ医師は感染し、3月29日に命を落としてしまいました。

そしてすべての発端となり毒王と呼ばれていた周さんは1ヵ月の闘病の末、無事に回復して退院しました。彼に関わった130人以上が感染したと言われています。

SARSのワクチンは?

SARSに関するワクチン未だ製造に成功していません。

人から人へ感染する間に変異するため有効なワクチン作りは困難なようです。

SARSのスーパースプレッディングが恐い

インフルエンザの感染者がいると、その人は2〜3人にインフルエンザを移すと言われています。SARSも同じくらいの約3人だろうということですが、じつはSARSにはスーパースプレッディングという現象が見られ、一人の感染者が何十人にも感染を広げる現象が見られました。

その人は免疫状態が悪くウイルスを大量に放出するので、もし別の人がエレベータなどに鉢合わせになると閉鎖された空間に一緒にいただけで簡単に感染が広がることが認められました (周さんはエレベータの中で咳をしていた。一緒に乗っていた人はマスクなし)。

この一部のスーパースプレッディングをする人たちスーパースプレッダー)の存在よってSARSは感染爆発を起こしたのです。

ただし今回の新型コロナウイルスと違う点は、SARSの場合は必ずせきなどの症状が出ている人がスーパースプレッディングを起こしているようでしたが、今回の新しいウイルスに見られる症状のない人がウイルスを放っているという現象は、今までの感染症の中であまり聞いたことがありません。

せきをしたり大声で喋ったりしなければ、感染は広がらないのでしょうか?(先日バスガイドをしていた女性(外国籍)に新型コロナウイルスの感染が認められましたが、熱心にガイドして喋っていたのであれば、バス中に飛沫が充満する可能性があります。同じバスに乗っていた日本人のバスの運転手が発症したのはバスガイドより後なので、ガイド→運転手という感染ルートが考えられます。)

バスガイドがスーパースプレッダーでないことを祈ります。

SARSが終息したのは封じ込めが上手くいったため

感染の鎖を断つために各国が取った策は感染者接触した人を見つけ出し、隔離することでした。

例えば、シンガポールでは感染者と間近に接触した人を見つけ出し、外出の禁止を命令。さらに監視カメラで自宅にいることをチェックしました。

徹底的な対策で、薬やワクチンがないにも関わらず封じ込めは成功し、SARSは急速に終息したのです。

2003年7月5日 WHOはSARSの封じ込め成功を発表しました。

なぜ日本人にはSARSにかかりにくかった?

この科学的な1つの解答は台湾の研究者より出されました。

ニュース題名『SARS「中国南方系遺伝子が関与」日本人は北アジア系感染者ゼロの理由 台湾の教授分析』

【台北=河崎真澄】アジアを中心に猛威を振るった新型肺炎(SARS)には中国南方系のヒトの遺伝子が直接関与しているとの研究結果を、台湾の馬偕記念病院(台北市)の林媽利・医学研究部教授がまとめ、24日に発表した。日本人に一人も感染者が出なかったのは、日本人の遺伝子が「北アジア系」に属するためだと林教授は分析している。

林教授はSARS患者37人を含む台湾人に356人の血液検体を集めて分析した。遺伝子に「HLA-B46」と呼ばれる組織抗原が含まれる人は相対的にSARS感染への抵抗力が弱い上、感染後は症状が重く一方でこの組織抗原のない人SARSへの抵抗力が強く感染しても症状が軽いことが分かった。

〔産経新聞 2003年9月25日〕

SARSは中国の、特に南部地方の人が持っている白血球の血液型「HLA-B46」に感染しやすいことが判明!

日本人は「HLA-B46」の人が少ないので感染しづらいとのこと。

「HLA-B46」でない人がもし感染したとしてもSARSへの抵抗力が強く、症状が軽いそうです。

ただし北九州から近畿地方の日本人は「HLA-B46」を持つ人もいるので注意が必要です。

現在(2020年1月下旬)中国から団体旅行客は来ていませんが、個人旅行客は飛行機でも、特にフェリーで九州地方にたくさん来ているので、感染には注意が十分必要でしょう。

このレビューの参考資料

・国立感染症研究所、疾患別情報、 SARS(重症急性呼吸器症候群)

・ザ! 世界仰天ニュース, 日本テレビ, 2020年1月28日

・クローズアップ現代, NHK, 2020年1月28日

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