エボラ出血熱から回復した患者から万能ワクチンが発見される! (米国最新研究レポート)

ニュース/レビュー

今回は回復したエボラ患者からの抗体についての研究の報告です。

Medical Xpressのニュース記事(英語)から和訳したものをご紹介します。

ニュースタイトル「回復したエボラ患者から新しいワクチンへの道
」

エボラ出血熱から回復した患者から採取した抗体が、ヒトに感染する3つ全てのエボラウイルスの株を標的とすることが判明し、この死の病に対する万能ワクチンとなりうることが発表されました。

未治療の場合90%の症例で致命的となり得るエボラ出血熱は、出血性疾患の史上最悪の発生となった2014-15年の西アフリカでの感染拡大で、11,000人以上の人が犠牲になり、エボラ出血熱の流行は国際的なパニックを引き起こしました。

1つのウイルス株に対してある程度の防御を可能とするワクチンが開発され、8月に流行が発生したコンゴ民主共和国東部では、何万人もの人々がワクチン接種を受けましたが、500人以上が死亡しました。現在、科学者たちは、西アフリカでの流行の生存者から、ヒトに感染する3つのエボラウイルス株すべての形態を標的とする抗体を初めて同定できたと考えています。

ニューヨークのアルバートアインシュタイン医科大学の微生物学および免疫学教授のKartik Chandranは、彼らがエボラウイルスの「アキレス腱」を特定したと述べています。

「エボラ出血熱発生の予測不可能性を考えると、複数株のエボラウイルスによる感染を予防し治療するためのワクチンと薬が急務とされています」

エボラウイルス(出典:Wikimedia Commons)


Nature Structural&Molecular Biology 誌に掲載されたこの研究では、2種のエボラウイルス株に効果がある抗体について解析しました。抗体が認識するウイルスの正確な部分を特定できた結果、「おとり素材」を使うことで残る1株のウイルスの表面下にも潜り込むことがわかりました。

Scripps Researchおよびカリフォルニア州ラホーヤ免疫学研究所のErica Ollmann Saphireは、次のように述べています。

「分子構造によって、抗体がウイルス表面の潜在的な陥没穴に到達することがわかりました。おとり素材の下に到達することによって、抗体はさまざまな異なるエボラウイルスの間で共有される効果的な標的を見つけることができます」

いくつかの動物はヒトに感染する可能性があるウイルスの亜種を持っているため、エボラの流行は予測が困難です。

Chandran氏は、すべてのヒト感染型株について効果的な抗体を見つけることが、普遍的なワクチン、さらにはエボラ出血熱治療法への道を開く可能性があると言います。

「治療的な価値があり、広範囲に中和能を持つ抗体が、どのように機能するかを明らかにしました。我々の発見は、ひとたびエボラ出血熱の発生した際、どう戦うかの心構えを発展させる努力を支えるものです」

引用ニュース & 原著論文

🔵 英語ニュース:Survivor antibody clears path for new Ebola vaccineMedical Xpress )

🔵 原著論文:Structural basis of broad ebolavirus neutralization by a human survivor antibody (Nature Structural & Molecular Biology, volume 26, pages204–212 (2019))

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