(2019年最新研究)アトピー性皮膚炎は1つの常在菌から分泌されるペプチドで改善する!?

ニュース/レビュー

腸内フローラの研究が盛んですが、今回は皮膚の上にいる菌のバランスもアトピー性皮膚炎などの湿疹を抑制するのにも重要である研究報告です。

米国の複数の研究機関が参加した共同研究が論文に発表され、それをレビューしたMedical Xpressの記事(英文)を翻訳しましたのでご紹介します。(翻訳のプロではないので読みづらかったらすみません m(_ _)m )

原著論文のアドレスも下に貼っておきます。

湿疹の再発の背後に肌の細菌のバランスの不均衡が影響している可能性があるという研究

英文執筆者:Bob Yirka (Medical Xpress)

米国の複数の機関と提携している研究チームが、皮膚の常在菌バランスが崩れることと湿疹の再発との関連性を見つけました。Science Translational Medicine 誌に掲載された論文の中で、このチームは皮膚の常在菌叢と湿疹に関係している黄色ブドウ球菌の研究について触れています。

過去10年間で、科学者たちは人の常在菌叢についてたくさん学んできました。例えば腸内細菌の研究は広く様々な病気と(驚きの)関連があることに導いてくれました。この新たな取り組みで、研究者たちは皮膚の常在菌と湿疹として知られるアトピー性皮膚炎との繋がりを調べました。

湿疹は時々炎症の一種である肌荒れの斑点として現れます。多くの場合、水疱ができ、かゆみ、かき傷、出血を引き起こします。非常に多く研究されているにもかかわらず、医学者はその原因や治療法を究明できないままです。彼らはこの研究から、免疫系が刺激に過剰に反応して皮膚バリアを攻撃すると再発が起こることを知りました。

オレンジ色に見える球体が悪玉菌の黄色ブドウ球菌(電子顕微鏡写真)〔出典:skeezeによるPixabayからの画像〕


過去の研究では、湿疹と常在菌は関連があるかもしれないことが示唆されていました。この新しい取り組みで、研究者らは湿疹が皮膚の常在細菌の悪いバランスと関係しているかどうかを特定するための手順を踏みました。彼らは、ある特定のタイプの細菌である黄色ブドウ球菌と湿疹との関係を研究しました。

以前の研究で、黄色ブドウ球菌は湿疹で苦しんでいる人々の肌に多く存在することが示されました。それは、湿疹の人々は皮膚のバリアを作るのを助ける細胞が少ない傾向があるという発見にもつながりました 。 そういうわけで黄色ブドウ球菌が増えるのです。

黄色ブドウ球菌と皮膚の常在菌の関係をより理解するために、ヒトの皮膚からサンプルを収集して、マウスの皮膚に細菌のコロニーを繁殖させました。彼らは黄色ブドウ球菌が、黄色ブドウ球菌の個体間のコミュニケーションという意味の「クオラム・センシング(quorum sensing)(追記に説明あり)」と呼ばれる機構を利用していることを発見しました。

その細菌は皮膚のバリアを破壊する毒素や、酵素を放出するのを感知するのにそれを使い、細菌が皮膚の内部へ入るのを許し再発を引き起こします。研究者たちはまた、皮膚に住んでいる他のバクテリアは、クオラムセンシングを妨げるタンパク質を使って実際に毒素を撃退することを発見しました。研究者たちがある種の善玉菌(CoNS)を培養し、それを湿疹のマウスの肌に塗ると、再発を防止しました。

ーーー 翻訳ここまで ーーー


引用ニュース & 原著論文

🔵 英語ニュース:Study shows skin microbiome imbalance likely behind eczema flareupsMedical Xpress

🔵 原著論文 : Quorum sensing between bacterial species on the skin protects against epidermal injury in atopic dermatitis (Science Translational Medicine ,01 May 2019  )

Seigoの追記

原著論文のアブストラクトを読むと悪玉菌と善玉菌の種類が書いてありましたのでここで整理しておきます。

皮膚に存在する悪玉菌と善玉菌

悪玉菌黄色ブドウ球菌Staphylococcus aureusアトピー性皮膚炎などを引き起こす。ヒトから分離される15種のブドウ球菌のうちでは、最も病原性が高い黄色ブドウ球菌だけがコアグラーゼ陽性である(ウィキペディアより)。

善玉菌コアグラーゼ陰性ブドウ球菌Staphylococcus hominis; Coagulase-negative staphylococci, CoNS): ペプチドを産生し、黄色ブドウ球菌からの毒素産生を阻害する。

上記の記事では湿疹がある皮膚に善玉菌をつければ治ってしまうという驚きの治療効果を披露していました。

つまり善玉菌が産生しているペプチドを塗れば湿疹やアトピー性皮膚炎が治る可能性があるわけです!

コアグラーゼ陰性ブドウ球菌が産生する (湿疹を改善する) ペプチド

SYNVCGGYF(9つのアミノ酸が連なった分子):

セリン-チロシン-アスパラギン-バリン-システイン-グリシン-グリシン-チロシン-フェニルアラニン

また原著論文のアブストラクトには、アトピー性皮膚炎の方は上記の善玉菌と悪玉菌のバランスが崩れていて悪玉菌優性になっていると報告がありました。

手を一生懸命洗ったり、「抗菌」グッズが生活環境にあふれていますが、これからは菌を殺すのではなく、善玉菌を活かすという考えに変えていくのがいいでしょうね。

まさにこれからは見えない物(菌にも)にも気づかってあげる時代が来たんですね。

クオラム・センシングとは

クオラム・センシング(英語: quorum sensing)とは、一部の真正細菌に見られる、自分と同種の菌の生息密度を感知して、それに応じて物質の産生をコントロールする機構のことです[1][2][3]。日本語では「集団感知」などと訳されることがあります。(引用:ウィキペディア

魚の集団も群れをなして行動しますが、これもクオラムセンシングの一種かも知れません。科学的ではありませんが、テレパシー的なものと言ったほうがピンと来るかも知れません。個人(個体)が集団全体を感知できないはずですが、まるで1つの個体のように振る舞うことができるのです。

これも見えない物が見える時代になっていく最初の一歩の現象なのかもしれませんね。

皮膚常在菌の関連書籍

左の本では登場人物としてつぎのような菌が出てくるようです。

善玉菌(表皮ブドウ球菌) ヒョウくん
⇒勤勉な優等生。うるおい成分を作って、宿主の肌を潤わせてくれる。
○日和見菌(アクネ菌) あっくん
⇒普段は善玉菌を手伝う可愛いやつ。気まぐれすぎるのが玉にキズ。
悪玉菌(黄色ブドウ球菌) おうちゃん
⇒肌の炎症を起こす不良。ただし、善玉菌の支配下で悪さはできない。

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