市販の牛乳に含まれる老化促進物質(AGEs)を除去できる腸内細菌があることが判明!? (2019年最新研究)
ニュース/レビュー
ワシントン大学医学部が牛乳に含まれる毒性化学物質を分解することのできる腸内細菌を発見しました。
論文発表と同時にプレスリリース(英文)も大学のサイトに公表されましたので、それを翻訳してお届けいたします。(翻訳のプロではないので読みづらかったらすみません。)
この記事のもくじ
人間の腸内フローラがある食品添加物の影響を軽減
特定の微生物は、製造された食品に含まれる一般的な化学物質を分解する可能性があります
英文執筆者:Julia Evangelou Strait
セントルイスのワシントン大学医学部の新しい研究は、人の腸内細菌が加工食品を分解する方法、特に現代の食品の製造工程で生じることのある有害な化学物質を、どのように分解させるかについて、新しい知見を与えるものです。パンやシリアル、そしてソーダなどの加工食品を食べるとインスリン抵抗性や肥満など健康への悪影響が生じます。
10月9日の Cell Host & Microbe 誌に発表された研究で、フルクトースリジンを分解し、無害な副産物に変える特定のヒト腸内細菌株が特定されました。フルクトースリジンは、食品加工中に形成されるメイラード反応生成物と呼ばれる化学物質のクラスに含まれます。これらの化学物質のいくつかは、健康に有害な影響を与える物質と関係があります。これらの発見は腸内フローラの昨今の知見を利用して、より健康的で栄養価の高い加工食品の開発に役立つ可能性があることを示唆しています。
この研究は、既知のヒト腸内細菌と、加工食品成分を含む食事を与えられた無菌条件下で飼育されたマウスで実施されました。
ロバート・J・グレイザー博士大学教授およびエジソンファミリーゲノム科学およびシステム生物学センターの院長である、Jeffrey I. Gordon医師は次のように述べています。
「この研究は、私たちにとって不健康なものも含め、現代の食事成分が腸内微生物によってどのように代謝されるかについて、より深い見解を与えてくれます。現在、関与するヒト腸内細菌を特定し、どのようにして有害な食品化学物質を無害な副産物に代謝するかを明らかにしています。」
ヒト腸内フローラの共同体は、食物を化学物質の集まりと見なしています。これらの化学化合物のいくつかは、人間の健康だけでなく、腸内に住む微生物の共同体にも有益な効果をもたらします。たとえば、Gordon博士の過去の研究では、腸内フローラが赤ちゃんの初期発達に重要な役割を果たしており、健康な腸内細菌が「健康な成長」や「免疫機能」そして「骨および脳の発達」に寄与することを示しています。しかし、現代の食品加工では、健康に有害な化学物質が生成される可能性があります。このような化学物質は、 糖尿病 や 心臓病 に関与する 炎症 に関連しています。研究者らは、ヒト腸内細菌と典型的なアメリカの食事に含まれ一般的に消費される化学物質との複雑な相互作用を理解することに興味を持っています。
今回の研究で、Collinsella intestinalis (コリンセラ・インテスティナリス菌) と呼ばれる特定の細菌が化学物質フルクトースリジンを無害な成分に分解することが示されました。
筆頭著者の、Gordon研究室のポスドク研究員、Ashley R. Wolf博士は次のように述べています。
「フルクトースリジンは、超高温殺菌牛乳(※下に補足あり)、パスタ、チョコレート、シリアルなどの加工食品で一般的に使われています。血中の大量のフルクトースリジンおよび類似の化学物質は、糖尿病やアテローム性動脈硬化症などの老化の病気に関連しています」
※ Seigoの補足:牛乳の殺菌についての基礎知識
🔵 超高温殺菌牛乳:130℃、2秒間の条件で熱殺菌を施した牛乳(日本牛乳の95%はこの方法を使用。この殺菌で1〜2ヵ月常温で保存できるようになる。この条件でホエイたんぱくは熱変性するが、ビタミン類は短時間の超高温殺菌では保たれるので栄養価が保ちやすいといわれている。
🔵 高温殺菌:75℃、15秒間の熱処理
🔵 低温殺菌:62〜64℃、30分間の熱処理
「この特定の細菌株は、このような状況で繁栄し、数が増えるにつれ、フルクトースリジンはより効率的に代謝されます」とGordon医師は話しています。
「この最初の研究から得られた新しいツールと知識は、より健康的で栄養価の高い食品を開発し、有害かもしれない化学物質を無害なものに処理し、ある種の腸内細菌を特定し活用するための将来の戦略に使えます。また各自の腸内フローラ共同体が、食品加工中に生じた特定の製品の影響に対して、脆弱なのか耐性なのかを区別することができるようになるかもしれません」
同時に、Collinsella intestinalis の近縁種がフルクトースリジンに同じように反応しなかったことが示され、この課題が複雑であることを著者らは強調しています。これらのゲノム配列が若干異なる近縁種は、フルクトースリジンが豊富な環境で繁栄しません。個々の微生物の特定の能力を特定および活用して、ある種の現代の食品製造中に生成される潜在的に有害な一連の化学物質を無害化する方法を確立するには、今後の更なる研究が必要です。
ーーー 翻訳ここまで ーーー
引用ニュース & 原著論文
🔵 プレスリリース(今回翻訳したニュース):Human gut microbes could make processed foods healthier(Washington University School of Medicine)October 9, 2019🔵 原著論文 : Bioremediation of a common product of food processing by a human gut bacterium.
(Cell Host & Microbe, Oct. 9, 2019. )
Seigoの追記
用語説明:メイラード反応、AGEsとは?
メイラード反応とは還元糖〔上白糖や異性化糖(コンビニ食品に含まれる果糖ぶどう糖液糖など)〕とアミノ化合物(アミノ酸やペプチド、タンパク質など)を加熱したときなどに見られる褐色物質のことです。この反応は体内でも起きますし(体がサビつくなどと言われます)、食品を加工(熱をかけるなど)しても起きます。そしてその反応によって出来た物質を終末糖化産物〔AGEs (エイジス) , Advanced Glycation End Products〕と呼びます。
AGEsは 糖尿病 や アテローム性動脈硬化症 、 慢性腎不全 、 アルツハイマー型認知症 などの変性疾患を悪化させると言われ、いわゆる老化を促進する物質として気にされている方も多いと思います(参考文献)。
そしてついにAGEsの1つが今回の発表で明らかになり、その物質名はフルクトースリジンといいます。
このフルクトースリジンは、牛乳やパスタ、チョコレート、シリアルなどに入っているようです。
フルクトースリジン(AGEs)を無害にしてくれるのがコリンセラ菌の中でもたった1種類
Collinsella intestinalis (コリンセラ・インテスティナリス菌) という菌だけが、フルクトースリジンを無害化できるそうです。他のコリンセラ菌は無害化する反応は見られなかったそうです。もしこの菌が腸内に存在せずフルクトースリジンを分解できなければ、 糖尿病 や 心臓病 に関与する 炎症 が増加してしまう可能性があるそうです。しかし少しでも コリンセラ・インテスティナリス菌 が腸内にいれば、フルクトースリジンに反応してその数を増やし早く無害化してくれるそうです。
AGEsが多い世の中ですが、腸内細菌の研究が進めば、それに対処することが簡単にでき、安心して食品をいただけそうですね!
AGEs, メーラード反応, 腸内フローラに関する書籍
20余年アメリカで遺伝子治療&幹細胞の研究者をやってきました。
特に遺伝病の間違った遺伝子をピンポイントで修復し、元に戻す技術開発です。
理学博士(Ph.D. )
アメリカ生活で学んだアンチエイジングなど健康に関する知識をシェアしたいと思います。
巷の情報もご紹介、時にはブッた斬ったりしてしまうかもしれません。
またポイントなどの節約術や生活に便利なガジェット(スマホやアプリの紹介)も記事にしますので参考になれば嬉しいです。
皆さん、ご一緒に「究極のヘルシーライフ」を楽しみましょう♪
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