健康は医者に聞かずに天気に聞け!? 健康気象予報士が季節病を解説

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雨風の強い日や季節の変わり目に、体調不良を感じてお困りではありませんか?
かつての私は、天気がもたらす病=気象病について深刻に悩み、体も心も絶不調の時期がありました。
古くから伝わる養生法に、「病は気から」「気軽ければ病軽し」という言葉があります。ここでの気は、気分や気持ちという意味のほかに、気象の変化が含まれていると説くことも可能です。
本記事では、健康予報をテーマに、私が見聞きした気象病の体験談や健康気象予報士になるまでの道のりをご紹介します。
(執筆者:K)
今なお、革新し続けている「健康予報」というジャンル。「スギ花粉情報」や「熱中症予防情報」、「インフルエンザ情報」などの大くくりなものから、細分化された「ぜんそく予報」など、種類はさまざまです。
健康予報とは、健康に悪影響のある天気を予測し、気象病のリスクを軽減するための生活情報のこと。
健康予報のメリットが特に活かされるのは、次の3つのケースです。
  1. 天気のポイントを把握しながら、日々の健康チェックを行いたい
  2. 持病、特定の健康被害に対する備えをしておきたい
  3. 気象病・季節病を長期予防するための専門アドバイスを受けたい

健康と気象は連動している


そもそも私たちの体調は、天気にどれほど左右されるのでしょうか?
日本人の約割は「天候過敏症」だとする調査があり、大多数の人が肉体的・精神的な症状に悩まされています。人間の体は、気温や湿度の変化に影響されますが、それ以上に大きな原因をもたらす要素が気圧の低下です。気圧とは、そのまま「空気の圧力」を指しています。
気圧が体に与える影響は、次のようなイメージ。
高気圧=空気の圧力が高く、体に重く押しかかっている状態
低気圧=空気の圧力が低く、体から解き放たれている状態
気圧の変化を体が感知すると、体内のバランスが乱れることが、気象病の主な原因です。特に低気圧の状況下では、体の恒常性=平衡感覚を失いやすくなります。低気圧のもとでは、空気の圧力から解放される分、体の内側から外側へ向かう反発力が強くなると想像してみてください。この時に、持病の悪化や心身の異常を感じるのは、体内に押し留めていた症状が「天気を引き金にして放出した」と解釈することも可能です。
また、自然によって生かされている私たちは、体そのものに自然の要素を取り込んでいる存在です。大きなスケールを持った天気に同調し、体内のリズムが一定調子で揺れ動くのは当然のことかもしれません。

気象病・季節病の体験談


天候感度は人によって違いますが、異常気象時代ゆえに、誰しも油断禁物です。そこで生きてくるのは、実際に私たちが体験している気象病・季節病のエピソードです。
どんな天気や季節の時に、どのような症状が出やすいのか? またどれほどの影響があるのか? 体験談に自分との共通点があれば、何らかのヒントを得られるかもしれません。
[春の季節病]生活環境も気象も変化大につき、関節痛・ストレスを経験!
春は天気が移ろいやすく、気温差の大きい日が何日も続きます。特に寒冷前線が通過した後には、気温が10度前後下がることも珍しくなく、急な冷えによる関節の痛みを感知。冬の寒さと春の陽気が次々に入れ代わり、季節の変わり目は特に神経性の症状が出やすくなります。のぼせ・めまい・不眠・ストレスのほか、ワンシーズンを通じてイライラしやすい日々が続きました。
[夏の季節病]高温・高湿により、消化器疾患や季節性アレルギーを発症!
湿気の多い夏は、胃腸の機能が低下し、食欲不振やむくみなどの不調が出やすくなります。腹痛や下痢が頻繁に起こるのも、夏ならではの困りごとです。梅雨期にあたっては、ダニやカビの繁殖が活発になるためか、ひどい湿疹が続くことに年々悩まされています。
[秋の気象病]台風上陸による気圧の急変で、胃腸障害・抑うつ・呼吸困難に!
2018年の台風21号が、日本のはるか南から近畿地方に接近・上陸するまでの数日間。暴風や高潮が観測され、25年ぶりに非常に強い勢力のままで上陸する中、私は遠方にあるはずの台風の影響を受けていました。
鈍い頭痛に始まり、空気の湿度が高まるにしたがって、胃腸の痛みや消化不良も感じるようになります。台風の上陸時は、強い上昇気流(台風で気圧が急激に下がる)によって体の内側と外側の圧力バランスが崩れ、自律神経が乱れるきっかけに。頭痛はしだいに激しさを増し、気分の落ち込みや時おり呼吸の苦しさも認められました。
[冬の気象病]低温・乾燥をもたらす冬型の気圧配置で、循環器系の不調や肌荒れが表出!
西高東低の冬型の天気は、日本付近にシベリアからの寒冷な季節風をもたらします。室内と屋外の気温差が大きくなることで、短い時間ではありますが、脳や心臓への負担を感じるようになりました。そのほかにも、乾いた空気が長時間支配するため、粘膜の不快感や肌の乾燥が気になっています。

私が「健康気象予報士」になったワケ!


私が気象と健康の因果関係に注目し、体調維持に役立てたいと思ったのは約10年前のこと。いつも体調が優れず、心はボロボロで、肌もカッサカサしていた、人生の真冬期です。それが今や天気に抗わず、調和的に生きる方法を見つけてからは毎日が楽チンでハッピー。
では、なぜ私が健康気象予報士になったのか、そのいきさつをお話します。

原因不明の体調不良から“お天気を味方につける”まで


ことのはじまりは、酷い肩こりやめまいなどの体調不良でした。が、いずれの病院でも不調の原因が分からず、しまいには心療内科への受診を薦められる「?」な流れに。もしもその時に受診していたのなら、自律神経失調症などの診断が出て、薬漬けの日々を送っていたのかもしれません。幸いにもそこで、数々の民間療法や東洋医学を学び、症状だけに捉われることなく「全体=私そのもの」を治そうと考えるに至りました。私が体験した症状は一見、気象病とは無関係のように思われますが、決してそうではありません。体は常に天気の影響を受けており、気象現象と一体になって、毒素や老廃物を排出していることを体感したのです。今では、自分の体が注意すべき気象を把握できているため、事前の民間療法のみで楽しく乗り切れています。

健康気象予報士の職業はまだほとんど知られていませんが、天気と病気予防の間をとりもつ専門家です。天気を単なる物理現象として予測するだけではなく、人間の体も自然の一部と捉え、因果関係を明らかにします。気象病のセルフケアをするにあたっては、衣食住の見直しをしていくのが、遠回りのようで最も近道です。天気のポイント解説や健康アドバイスを行うことで、もっと質の高い健康を感受していただきたいと思っています。

「健康天気予報」で病気予防を


現代医学は、症状だけにコミットする対処療法が中心ですが、今後はますます病気予防に重点が置かれていくと思われます。体調管理は自分でできるものですし、健康天気予報の知恵があれば誰でも気象を味方につけることができます。特に「自分の不調を治したい」と思われている方は、私のように天気との向き合い方を変えることで、新しい健康への道が拓けるかもしれません。
最後に、注意すべき天気のポイントとセルフケアの方法をまとめます。気象病の予防や日々の体調管理のために、ぜひお役立てくださいね。
⚠️ ① 気温が前日よりも5度以上下がる場合
注意すべき症状 → 関節痛やリウマチなどの「天気痛」、末梢血管の収縮による血流の悪化、自律神経の乱れなど。
セルフケア → 頭寒足熱で血流の流れを良くするための衣服の調節と、半身浴を実施。体を温める根菜や海藻類、豆類を積極的に摂る。
⚠️ ② 朝から昼間にかけて気温が上がらないか、日中にかけて下がる場合
注意すべき症状 → 気力・意欲の低下、食欲の減退、頭痛、肩こり、めまいなど。
セルフケア → 朝食をしっかり摂取した上で、適度な朝の運動をする。ぬるめのお湯にじっくり浸かって、副交感神経を優位に働きかける。
⚠️ ③ 湿度が50%以下となる場合
注意すべき症状 → 喘息や湿疹、肌荒れ、便秘、インフルエンザ、のどや鼻の粘膜の異常など。
セルフケア → カリウムが豊富な野菜や旬の果物を摂るなどの内ケアと、加湿対策=外ケアを同時に行う。
⚠️ ④ 低気圧や台風の接近、通過により気圧が下がる場合
注意すべき症状 → 持病の悪化、古傷の痛み、頭痛、めまい、むくみ、吐き気など。
セルフケア → ①と同じ
⚠️ ⑤ 寒冷前線の通過により、激しい現象が予想される場合
注意すべき症状 → 低血圧や心臓疾患、抑うつ、難聴、頭痛など。
セルフケア → ①と同じ
⚠️ ⑥ 地上付近の気温が上空よりも低い場合
注意すべき症状 → 持病の悪化、血行障害、肩こり、腰痛など。
セルフケア → 下半身の冷え改善のため、靴下やレッグウォーマー、ズボン下などを重ね着する。
⚠️ ⑦ くもりや雨の日が続いて、日照不足となる場合
注意すべき症状 → 気分の落ち込み、骨や皮膚の異常、体のだるさ、不眠など。
セルフケア → 就寝前にストレッチなどを行い、睡眠の質を高める。乳酸菌を多く含む食品を摂るなど腸内環境を整えるほか、少食・プチ断食の実践も気分のリフレッシュに効果的。
〈参考文献〉
福岡義隆『健康と気象』(2008年)成山堂書店
村山貢司『健康気象学入門』(2009年)日東書院
村山貢司『体調管理は天気予報で』(2012年)東京堂出版

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