【悲報】抗うつ剤でうつが悪化することが判明!? 腸内細菌に影響しセロトニン輸送をブロックする (2019年最新研究)
ニュース/レビュー
抗うつ剤がある腸内細菌に作用しセロトニンの輸送を阻害していることが判明しました。将来は腸内細菌の補給によってうつが治る可能性がでてきました。
これはUCLAの研究チームが論文に発表したもので、そのレビュー記事(英文)が大学のサイトに掲載されました。今回はそのレビュー記事を翻訳しましたのでご紹介します。(翻訳のプロではないので読みづらかったらすみません。)
この記事のもくじ
研究はセロトニンと一般的な抗うつ薬が腸内フローラにどのように影響するかを示しています
英文執筆者:Stuart Wolpert, UCLA
UCLAの生物学者によるマウスを用いた新しい研究は、セロトニン及び抗うつ薬などのセロトニン標的薬剤が、腸内フローラ、すなわち人体の腸に住んでいる100兆もの細菌やその他の微生物に大きな影響を与える可能性があることを強く示唆しています。セロトニン — 神経伝達物質, または細胞間でメッセージを送信する化学的伝達物質 — は、感情や幸福を感じさせる役割など、人体で多くの機能を果たします。セロトニンの90%は腸で生成されると推定されており、腸の免疫に影響します。
シニア著者のElaine Hsiaoと、筆頭著者で博士研究員であるThomas Fungが率いるチームは、セロトニンを感知することができ細菌細胞に輸送できる腸内細菌を特定しました。マウスに抗うつ薬フルオキセチン(fluoxetine)またはプロザック(Prozac)を投与するとセロトニンの細胞内への輸送が減少することを発見しました。Turicibacter sanguinis (ツリシバクター・サンギニス )と呼ばれるこの細菌のことは、ほとんどわかっていませんでした。この研究は今週 Nature Microbiology 誌に掲載されました。
これまで分かっていたこと:ある腸内細菌がセロトニンの産生を促す
「私たちの以前の研究は、特定の腸内細菌が腸によるセロトニン産生を助けることを示していました。この研究では、なぜそれが起こるのかを知ることに興味を持ちました。」と、UCLAカレッジの統合生物学・生理学、微生物学、免疫学、分子遺伝学のHsiao助教は話しています。彼女は、UCLAのDavid Geffen医学部で消化器疾患の研究を行っています。彼女の研究グループは、2015年に Cell 誌に、マウスでは主にツリシバクター・サンギニス と Clostridia(クロストリジウム綱, 以後クロストリジウム菌 と呼ぶ)からなる特定の細菌の混合物が、セロトニンの産生を増加させるために腸細胞にシグナルを送る分子を産生することを報告しました。Hsiaoのチームが細菌なしでマウスを飼育したとき、腸のセロトニンの50%以上が失われていました。ツリシバクテリア と クロストリジウム菌 を主とする細菌混合群を与えたところ、セロトニンは正常レベルに増加したのです。
この研究により、チームはなぜ細菌が腸細胞にセロトニンを作るように信号を送るのかと疑問に思いました。微生物はセロトニンを利用するのでしょうか、そうだとしたら、何のために?
新しい研究結果
この新しい研究では、研究者たちはセロトニンを一部のマウスの飲料水に加え、他のマウスの内臓にはセロトニンのレベルを増加させる突然変異(特定のセロトニントランスポーター遺伝子を変更することで作成)を起こさせました。マウスの腸内フローラを解析したところ、腸内により多くのセロトニンが存在するとツリシバクテリア と クロストリジウム菌 が著しく増加することを発見しました。
これらの細菌がセロトニンの存在下で増加するということは、セロトニンを感知する細胞機構が存在すると考えられました。研究の共著者であるNIHの神経疾患・脳卒中研究所のLucy Forrestのグループと共に、哺乳類のセロトニンを輸送タンパクと構造的に類似したツリシバクター菌の複数の種のタンパク質を突き止めました。研究室でツリシバクター・サンギニス を培養したところ、細菌がセロトニンを細胞に取り込むことを発見しました。
別の実験で、研究者らは、哺乳類のセロトニン輸送体阻害剤である抗うつ薬フルオキセチンを ツリシバクター・サンギニス の入ったチューブに加えたところ、細菌のセロトニン輸送能が著しく低下することを見出しました。
チームはまた、ツリシバクター・サンギニス をセロトニンまたはフルオキセチン(抗うつ薬)にさらすことによって、細菌の胃腸管でどれほど増殖できるかを検討しました。セロトニンの存在下では、細菌はマウス体内で非常によく増殖しましたが、フルオキセチンに曝露すると低いレベルでしか増殖しませんでした。
Fungは、「これまでの研究では、特定の細菌が腸内のセロトニンレベルを促進することが示されていました。我々の新しい研究は、特定の腸内細菌がセロトニン、及び抗うつ薬のようなセロトニンに影響を与える薬物に応答できることを示しています。これは、伝統的に神経伝達物質として認識されている分子を介した、細菌と私たちの細胞との間のコミュニケーションのユニークな形です」と話しています。
ツリシバクター菌 に関するチームの研究は、抗うつ薬が腸内フローラを変える可能性があることを報告する数々の研究と一致しするものです。
Hsiaoは、nature 誌が扱うブログ上に、「今後、抗うつ薬と微生物の相互作用が健康と病気に影響を与えるかどうかを知りたい」と記載しています。
ーーー 翻訳ここまで ーーー
引用ニュース & 原著論文
🔵 英語ニュース:Study shows how serotonin and a popular anti-depressant affect the gut’s microbiota(UCLA)September 5, 2019🔵 原著論文:
Intestinal serotonin and fluoxetine exposure modulate bacterial colonization in the gut.(Nature Microbiology, 2019 )
Seigoの追記
ある腸内細菌の発見:セロトニンの分泌を促進&セロトニン輸送能
Turicibacter sanguinis (ツリシバクター・サンギニス )という腸内細菌がセロトニンの分泌や輸送に深く関わっていることが分かり、腸内のセロトニン量が増えるとますますこの菌も増えるそうです。幸せ感が増してくると、どんどん相乗的に増すのはこの菌が関わっているのかも知れませんね。逆にうつ状態の方はこの菌が少なくなっている可能性が高く、この菌を補うだけでうつ状態から開放される可能性もありますね。感情のコントロールも腸内細菌によってある程度はできる時代が来るのかも知れません。
ここで1つ別の視点で話させていただきますが、セロトニンは幸福感を感じる神経伝達物質として知られています。しかしこのセロトニンの分泌を促す初めのきっかけを作っているのは腸内細菌なのでしょうか? それとも私たちの腸細胞なのでしょうか? 「ニワトリが先か?卵が先か?」の話に似ていますが、答えは分からないところが面白いのかもしれませんね 😉
抗うつ剤でうつが悪化することが証明された?
この研究からこのようなことが言えるのではないでしょうか。抗うつ剤はもともと脳に作用することを期待して作られ、そして主な作用は「セロトニン再取り込みを阻害する」というものです(詳しい作用機序は専門ではないので分かりませんが薬の説明にはこのように書いてあります)。しかしセロトニンは脳ではなく、90%が腸で作られることを考えると、上記の研究で判明したように、セロトニンの分泌や輸送に関わる腸内細菌が抗うつ剤で抑制されてしまうと、脳にセロトニンを供給することが難しくなってしまい、ますます「うつが悪化する」という結果となってしまうことになります。
抗うつ剤の評判がなぜ悪いのかが、このような腸内細菌の研究からも説明がつくのかもしれません。
抗うつ剤関連の書籍
20余年アメリカで遺伝子治療&幹細胞の研究者をやってきました。
特に遺伝病の間違った遺伝子をピンポイントで修復し、元に戻す技術開発です。
理学博士(Ph.D. )
アメリカ生活で学んだアンチエイジングなど健康に関する知識をシェアしたいと思います。
巷の情報もご紹介、時にはブッた斬ったりしてしまうかもしれません。
またポイントなどの節約術や生活に便利なガジェット(スマホやアプリの紹介)も記事にしますので参考になれば嬉しいです。
皆さん、ご一緒に「究極のヘルシーライフ」を楽しみましょう♪
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