薬が河川に流れると新たな汚染物質に変化することが判明! (2019年米国研究)

ニュース/レビュー

医薬品やパーソナルケア製品に入っている成分が、下水や河川に住む微生物によって新たな汚染物質を生み出しているという報告が発表されました。

米国ラトガース大学がこの最新研究をプレスリリースしましたので、それを翻訳したものをここで紹介します。

ニュースタイトル「医薬品およびパーソナルケア製品は、河川に新たな汚染物質を生み出す可能性があります

デラウェア川(出典:wezloによるPixabayからの画像)


トイレの水を流すとき、体から出た微量の薬やパーソナルケア製品が下水処理場や小川、河川、湖、湾、そして海に行き着くなんて多分考えもしないでしょう。

しかし「環境毒物学と化学」(“Environmental Toxicology and Chemistry”)誌によると、ラトガース大学の科学者たちは、危険性が調べられていない下水処理場のバクテリアが、水生環境に影響を与えるかもしれない新しい汚染物質を作り出していることを発見しました。

この科学者達は下水処理場から出る汚泥にいるバクテリアが、よく使われている二つの医薬品【ステロイド性抗炎症薬であるナプロキセン(naproxen; 鎮痛・解熱剤)及びグアイフェネシン(guaifenesin; 咳止め)】を分解する能力をテストしました。彼らはまた、パーソナルケア製品に入っている一般的な成分2つ【多くの日焼け止めの重要成分であるオキシベンゾン(oxybenzone; 紫外線吸収剤、および多くの化粧品に防腐剤として含まれるメチルパラベン(methylparaben)】もテストしました。

この研究によると、汚泥中で酸素を必要としない細菌はメチルパラベンを分解したが、この微生物は他の三種類の化学物質を部分的に分解 - その過程で新たな汚染物質を生成しました。

ラトガース大学ニューブランズウィック校(Rutgers University-New Brunswick)環境学部の教授兼、当研究の主幹であるアビゲイル・W・ポーター氏(Abigail W. Porter)は、「医薬品およびパーソナルケア製品の部分的な分解は、結果として絶え間ない河川の汚染をもたらす可能性があり、環境に生物学的影響を与えるので重大事です」として「これらの汚染物質とそれらの潜在的なリスクはまだ研究されていません。」と述べています。

イメージ(出典:Speedy McVroomによるPixabayからの画像)


この細菌は酸素の少ない沈殿物によくいるタイプの微生物です。米国環境保護庁(EPA)によると、医薬品やパーソナルケア製品などの新たに懸念されている汚染物質は、地表水で少量見つかる場合が多くなっています。これらの化合物には水生生物や人間の健康に影響を与える可能性が懸念されます。

本論文を共著した環境学部のリリー・ヤング(Lily Young)名誉教授は「私たちの調査結果は、同様の化学構造を持つ他の広く使用されている医薬品やパーソナルケア製品を評価するのに役立ちます」として、「分解プロセス中に形成される可能性のある化学物質を予測または評価することにより、環境中のそれらを識別および定量化できます。」と述べています。

ラトガース大学の科学者たちは、無酸素状態で繁殖するバクテリアなどの嫌気性微生物がどのように医薬品やパーソナルケア製品を分解するか興味を持っています。

チームは2つの細菌群;1つは下水処理場の汚泥内のもの、もう1つはニュージャージー州Tuckerton沖の清浄な海洋環境における低酸素地下堆積物中のものである。研究者らは以前、細菌が抗炎症薬ナプロキセンを変えてしまうことを示しました。

研究者らはこれら2つの微生物群に様々なタイプの細菌がいることを発見しました。しかしどちらの微生物群もまったく異なる構造を持つ4つの化学物質を同じように変換しました。今後の研究では、変化した化学物質の長期持続性を評価するために、さまざまな環境の場所から採取した堆積物サンプルを調べることになるでしょう。

引用ニュース & 原著論文

🔵 英語ニュース:Medicine and Personal Care Products May Lead to New Pollutants in WaterwaysRutgers University )

🔵 原著論文 : Pharmaceuticals and Personal Care Products can be Transformed by Anaerobic Microbiomes in the Environment and in Waste Treatment Processes. (Environmental Toxicology and Chemistry, 2019)

Seigoの追記

1つの見方かも知れないが、医薬品の成分が「完全に分解されていない」から問題があるようにこの論文はいっているようにきこえました。

嫌気性細菌が下水や河川の底にいるが、充分分解されないので(好気性細菌がいないから?)有害な成分が残ってしまっているように感じます。

日本でも河川をキレイにする目的で微生物を投入することがありますが、もしかしたら、微生物の種類が増えると、医薬品やヘルスケアー製品に含まれる物質もうまく分解してくれるのかもしれませんね。

とにかく環境汚染の問題は今後もこのサイトでチェックしていきます!

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