ミトコンドリアの機能不全は病気(特に骨粗鬆症)を誘発することが判明! (2019年米国研究)

ニュース/レビュー

今回は、ミトコンドリアがエネルギー生産がうまくいかないと骨粗しょう症が進むという研究報告です。

ペンシルベニア大学のプレスリリース(英文)が発表されましたので、それを翻訳したものをご紹介します。

ニュースタイトル『ミトコンドリア損傷と骨粗しょう症の関係』

副題:ペンシルベニア大学獣医学部からの新しい研究は、アルコールやタバコの煙、そしてある種の薬や毒素への暴露が骨を弱める可能性のあるメカニズムを示しています。

 

英文執筆者: Katherine Unger Baillie (University of Pennsylvania)

(ペンシルベニア大学の研究者によると、ミトコンドリアの損傷は骨粗しょう症に見られる骨の劣化に関連しています。免疫細胞の一種である機能不全のミトコンドリアを持つマクロファージ(右)は、コントロールマクロファージ(左)よりも破骨細胞(骨を破壊する細胞)になる可能性が高かった。)

骨粗しょう症のいくつかの危険因子、例えば歳をとったり女性だったり、家族の病歴というのは避けられないものです。しかし、タバコを吸ったりアルコールを飲んだり特定の薬を飲んだり環境汚染物質にさらされたりといったことは避けることができます。しかしこれまでのところ、研究者たちはこれらにさらされことが骨量の減少とどのように関連しているかについての明確な見解を得ていません。

ペンシルベニア大獣医学部の研究者が率いる新しい研究は、これらの要因と骨粗しょう症が関係しているかもしれないというメカニズムを明らかにしています。ミトコンドリア(主要な細胞小器官およびエネルギー発生器官)の損傷は、骨の破壊に関与する破骨細胞と呼ばれる細胞の生成の急増につながると研究者たちはFASEB Journalで報告しています。彼らは培養細胞や動物モデルにおいてこれらの影響を明らかにしました。

ミトコンドリアは1つの細胞中に300〜400個ある、酸素呼吸をしてエネルギーを作り出す細胞小器官です。(出典:by はるまき/イラストAC)


「正常な人の骨の破壊と再生の過程は非常にバランスの取れた方法で進んでいきますが、一部の人々には何らかの形でより多くの破骨細胞を作ってしまい、骨損失や骨粗しょう症になるかもしれません」と獣医で筆頭著者のNarayan Avadhani氏は語りました。「ミトコンドリアの機能が影響を受けると、エネルギー生産に影響を与えるだけでなく、破骨細胞の過剰生産を誘導する一種のストレスシグナル伝達を引き起こすことをこの論文で示しています。」

Avadhaniの研究室は、がんや肝疾患を含む様々な現象に対するミトコンドリア機能障害の影響を調べました。ここでは、マウントサイナイIcahn School of MedicineのMone Zaidi研究室と共同で、ミトコンドリアの問題がマクロファージとして知られる免疫細胞にどのような影響を与えたかを詳しく調べました。

マクロファージは免疫系の最前線で、体内への外来侵入者を飲み込みそして消化します。しかしマクロファージも多様化し、状況が適切であれば破骨細胞に変化します。

マクロファージの働きによってミトコンドリアの損傷が骨粗しょう症にどのように関連し得るかを理解するために、研究者らはラボで育てたマウス・マクロファージにおいて、ミトコンドリアのエネルギー産生を担う重要な酵素のチトクロームc酸化酵素への損傷を誘発しました。これによりマクロファージが炎症反応に関連した様々なシグナル伝達分子の放出を導き、そして破骨細胞になる方向に進むことように思われました。

この研究で損傷を誘発したミトコンドリアのチトクロームc酸化酵素の構造(出典:Wikipedia Commons, CC BY-SA 3.0, Link )


何が起こっているのかをよく見ると、それらは骨の再構築プロセスを調節するのを助け、骨の分解を誘発する手段として、骨を構築する細胞によって解放される重要な分子「RANK-L」による異常を観察しました。ミトコンドリアが損傷を受けるとRANK-Lレベルが低くても、それらはストレスシグナル伝達を受け、はるかに速く破骨細胞に変わりました。これらの破骨細胞は、より高い骨吸収率、すなわち分解をもたらしました。

「いくつかの点でミトコンドリアのストレスシグナル伝達がRANK-Lに取って代わる可能性さえあります」とAvadhaniは言います。「われわれは今はわからないが、それについてさらに調べるつもりです。」

研究者らは、マウスモデルでそれらの発見を確認し、機能不全のミトコンドリアをもたらす突然変異を持つ動物は破骨細胞の産生を増加させたことを示しています。その他に、マクロファージはより高いレベルの食菌作用(免疫細胞が侵入者をのみ込んで「食べる」プロセス)をもっていました。研究者らは、この食作用能力の増強が、ミトコンドリアに欠陥がある人々に起こりうる他の生理学的問題のいくつかに原因があると考えています。

喫煙や一部の医薬品など、骨粗しょう症を促進すると思われる同じ環境リスク要因のいくつかはミトコンドリア機能にも影響を与える可能性があるため、チームはこのストレスシグナル伝達が骨の健康に影響を与える経路であると考えています。

破骨細胞機能と骨の健康の様々な側面のスペシャリストであるマウントサイナイのZaidi氏のグループによる将来の研究は、ミトコンドリア機能を保護することがどのように骨粗しょう症から守ることができるかを調べるのも価値のあることでしょう。

引用ニュース & 原著論文

🔵 英語ニュース:A link between mitochondrial damage and osteoporosis (University of Pennsylvania – Penn Today) May 9, 2019

🔵 原著論文:Cytochrome c oxidase dysfunction enhances phagocytic function and osteoclast formation in macrophages (The FASEB Journal, 2019)

Seigoの追記

この論文は、ミトコンドリアのエネルギー産生をしているチトクロームオキシダーゼCを人為的に壊すと、骨芽細胞が(RANK-Lの低レベルとは関係なく)なぜか破骨細胞になり(またはその細胞の比率が増え)、その結果 骨密度が落ちて骨粗しょう症の症状が進んだという論文なので、自然の現象ではないです。

また骨粗しょう症の誘発するような行動(例えば、タバコを吸ったり、アルコールを飲んだり、特定の薬を飲んだり、環境汚染物質にさらされたり)の場合に、ミトコンドリアの損傷が起きているのかの検証は行われていません。

なのでこの論文のような現象が実際の骨粗しょう症で起きたかどうかは分かっていませんが、ミトコンドリアの損傷が骨粗しょう症につながることがあるということを知識として持っていると、それを予防するアイディアに気づきやすくなるかも知れませんので、ご留意ください。

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