クロレラのような緑藻が内分泌かく乱物質(環境ホルモン)を除去できることが判明! (2019年米国研究)
ニュース/レビュー
ラスベガスから有害な内分泌かく乱物質(いわゆる環境ホルモン)を藻類(緑色に見える藻。単細胞)で除去できるという研究報告です。
この研究は論文審査のある学術専門誌に出版されそれをプレスリリース(英文)が発表されました。今回はそのプレスリリースを翻訳しましたので、ここで紹介します。
この記事のもくじ
プレスリリース「砂漠研究所の研究者はラスベガスの排水から緑藻を使って有害なホルモンを除去することに成功しました」
ネバダ州ラスベガス(2019年4月8日) – ラスベガスの砂漠研究所(DRI, Desert Research Institute)の新しい研究によると、淡水緑藻の一般的な種は廃水からある種の内分泌かく乱物質(EDC, endocrine disrupting chemicals;かつて環境ホルモンとも呼んだ)を除去することができると報告しています。
内分泌かく乱物質は天然のホルモンであり、多くのプラスチックや医薬品にも含まれています。それらは野生生物に、そして高濃度になると人間に有害であることが知られていますが、それは、生殖能力の低下や特定のがんの発生率の増加などの健康への悪影響をもたらします。それら内分泌かく乱物質は処理済み廃水中に微量(1兆分の1〜数十億分の1)に含まれ、そしてまたミード湖(Lake Mead)から採取した水サンプル中でも検出されました。
DRI(砂漠研究所)の研究者、シュエリアンバイ(Xuelian Bai)博士およびクムドアチャリャ(Kumud Acharya)博士が、ナノクロリス(Nannochloris)と呼ばれる淡水緑藻が処理廃水から内分泌かく乱物質を除去する可能性についての新しい研究をEnvironmental Pollution(環境汚染)誌に発表しました。
主任著者で水文学(すいもんがく;地球上の水循環を主な対象とする地球科学の一分野)の環境科学の助教を務めているバイ助教は、「この種の藻類は、世界中のあらゆる淡水生態系で非常に一般的に見られますが、廃水処理に利用した場合どうなるかの研究はあまりされていません」として「我々は、この種が藻池や廃水汚染物質の除去を助ける人工湿地での使用に適した候補であるかどうかを調査したいと思っていました」と述べています。
ナンノクロリスのサンプルはラスベガスの砂漠研究所の環境工学研究所で育てられています。この種の緑藻は、処理廃水からある種の環境ホルモンを除去することができることが判明しました。
7日間のラボでの実験の期間中、研究者たちはラスベガスのクラーク郡水再生地区(Clark County Water Reclamation District)から集められた2種類の処理済み廃水中でナノクロリス藻類を培養栽培し、一般的な環境ホルモン7種類の濃度の変化を測定しました。
限外ろ過技術を用いて処理された廃水サンプルでは、藻が急速に成長し、3つの内分泌かく乱物質(17β-エストラジオール(E2)、17α-エチニルエストラジオール(EE2)およびサリチル酸(SAL);以下の「図解つき要約」参照)の除去率に改善が見られました。 7日間かけて。オゾン処理を用いて処理された廃水中では、藻類も同様に成長せず、環境ホルモン濃度に大きな影響はありませんでした。
試験で調べた内分泌かく乱物質の1つであるトリクロサンは7日後に限外ろ過水から完全に消失し、7日後にオゾン化水中に残ったのは38%にすぎませんでした - しかしこれは藻の存在に関係なく起こる光分解(光への露出)によるものでした。
砂漠研究所の暫定副総裁兼水文学担当理事長であるアチャリャ氏は「重金属やその他の無機汚染物質を除去するための藻類の使用は過去に広く研究されています。」として、「我々の調査では、ナノクロリスを使用して廃水から環境ホルモンを除去することの可能性と限界の両面が判明しています。」と述べています。
これらの試験は実験室条件下で行われたが、2018年11月のEnvironmental Science and Pollution Research(環境科学;プロセスと影響)」誌に発表されたバイ博士とアチャリャ氏による以前の研究ではミード湖から集められたクワッガガイ(Dreissena bugensis)に対するこれらの7つの環境ホルモンの影響を調べたものです。彼らのこの研究結果からは、いくつかの内分泌かく乱物質(テストステロン、ビスフェノールA、トリクロサン(TCS)、およびサリチル酸(SAL))がイガイ(mussels)の体組織に蓄積していることが判明しています。
バイ博士は、「藻類は食物網の底部に位置しているため、クワッガガイやその他の動物プランクトンのようなより高い栄養レベルの生物に食料を提供します」として「我々の研究は、これらの汚染物質が生物濃縮する、または水生生態系の食物連鎖のより高いレベルで蓄積する可能性があることを明確に示しています。」と述べています。
バイ博士は現在、ラスベガスウォッシュから収集した遺伝子の抗生物質耐性を探求する新しい研究、ならびにラスベガスウォッシュおよびミード湖におけるマイクロプラスチックの研究に取り組んでいます。バイ博士は、ラスベガスの処理済み廃水は浄水法の基準を満たしていますが、彼女の研究が、処理済み廃水は100%きれいではないという事実に世間の注目を集めること、また、浄水設備関係者にとって、廃水から未処理の汚染物質を除去する新しい方法の開発に役立つことを期待しています。
「ほとんどの廃水処理施設は、これらの規制されていない汚染物質を低濃度で除去するようには設計されていませんが、高濃度では水生生物、さらには人間に健康への影響を引き起こす可能性があります。」「これは廃水が農業用にリサイクルされたり飲料水源に放出されたりする場所で懸念されます。」
原著論文からの図解つき要約
図解つき要約
🔵 ナノクロリスとの共培養は17β-エストラジオール(E2)、17α-エチニルエストラジオール(EE2)、およびサリチル酸(SAL)の除去を促進した。
🔵 トリクロサン(TCS)の除去には光分解と生物除去が大きな役割を果たしました。
🔵 藻類による分解は、E2、EE2、およびSALの除去に関与していました。
🔵 ナノクロリスによってエストロゲン性を排除することはできません。
プレスリリース & 原著論文
🔵 プレスリリース(英文):DRI researchers successfully remove harmful hormones from Las Vegas wastewater using green algae(Desert Research Institute)🔵 原著論文: Removal of seven endocrine disrupting chemicals (EDCs) from municipal wastewater effluents by a freshwater green alga.
Environ Pollut. 2019 Apr;247:534-540. doi: 10.1016/j.envpol.2019.01.075.
Xuelian Bai & Kumud Acharya
Organic farming promotes biotic resistance to foodborne human pathogens
J Appl Ecol. 2019;00:1–11. DOI: 10.1111/1365-2664.13365
Matthew S. Jones, Zhen Fu, ・・・Jason M. Tylianakis, William E. Snyder
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■■■■■Seigoの追記
内分泌かく乱化学物質(かつてマスコミは環境ホルモンと言ってました)については日本では報道されなくなりましたが、ラスベガスの研究者はしっかり研究を続けていて素晴らしいです。しかも緑藻が有害な環境ホルモンを除去することを発見してしまうとは。
日本でもこれから川などに環境ホルモンや医薬品の汚染が問題になってくると思いますが、いち早く緑藻によって対処できるといいですね。
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理学博士(Ph.D. )
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