夜勤で肥満になったり腸内フローラに悪影響を及ぼすことが判明!? (Nature誌)

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腸内フローラの性質がまた1つ明らかになりました。

動物は脳内に体内時計というものを持っていて、それが腸にある免疫細胞と連動して、腸内フローラや脂質の代謝を制御していることが分かりました。しかしもし夜に働いたりすると免疫細胞の調節が上手く働かず、腸の調子が崩れやすく、また脂質の代謝にも失敗して肥満になりやすいのではないかという研究結果が示されています。

今回この研究はトップクラスのジャーナル「Nature」に発表され、シャンパリモー財団(民間の医学生物研究財団)が設立したポルトガルにある「シャンパリモー未知研究センター (Champalimaud Centre for the Unknown) 」による研究で、プレスリリース(英語)の翻訳バージョンを紹介します。(翻訳のプロではないので読みづらかったらすみません。

 

眠らぬ夜は腸に悪い

英文執筆者:Liad Hollender

なぜ夜勤労働者のように不規則なスケジュールで生活すると、腸の炎症や肥満になりやすいのでしょうか?
腸の免疫機能」と「脳の概日リズム」の間に新たに見つかった関係が、その答えを出してくれるかも知れません。


夜勤で働く人や、時差の生じる外国へ頻繁に旅行する人は、太りすぎて腸の炎症を起こしやすいことが知られています。この確固たる現象の根本的な原因には、光サイクルに反応して作られる脳の概日リズムの活動と生理学的プロセスを関連付けようとする多くの研究の対象になっています。

ポルトガル、リスボンの「未知のシャンパリモーセンター (Champalimaud Centre for the Unknown) 」に所属するHenrique Veiga-Fernandesのグループは、腸の健康に強く関わると知られている免疫細胞グループの機能が、脳の概日リズムによって直接制御されることを発見しました。彼らの発見は本日(2019年9月18日)、Nature 誌に掲載されました。

「睡眠不足や不規則な睡眠習慣は、劇的な健康への影響をもたらす可能性があり、腸の炎症状態など、免疫機能に大いに関連する一連の疾患を引き起こす可能性があります」と、主任研究員のVeiga-Fernandes氏は述べています。

「なぜこのようなことが起こるのかを理解するために、腸内の免疫細胞が概日リズムの影響を受けているかどうかを調べることから始めました」

大きな時計と小さな時計

体内のほぼすべての細胞は、一般に「時計遺伝子」として知られているものの発現を通じて、概日リズムに従う遺伝子機構を内蔵しています。時計遺伝子は、時刻を細胞に知らせる小さな時計のように機能し、それにより細胞が協働する器官やシステムを助け、例えば、食事や睡眠の時間になったら何が起こるかを予測します。

これらの「細胞時計」は自律的に動きますが、「全員が同調している」ことを確かにするため、同期する必要があります。

「体内の細胞は、外光に関する直接的な情報を得られないため、個々の細胞時計がオフになる可能性があります」とVeiga-Fernandes氏は説明します。

「日中の光に関する直接の情報を受け取る脳の時計の仕事は、体内のこれらの小さな時計とシステムが同期するようにすることです。これは私たちの健康にとって欠かせません」

腸内に存在するさまざまな免疫細胞の中で、チームは3型自然リンパ球系細胞ILC3s, Type 3 Innate Lymphoid Cellsが時計遺伝子の働きの影響を特に受けやすいことを発見しました。

「これらの細胞は腸内で重要な機能を果たします。感染と闘い、腸上皮の完全性を制御し、脂質吸収を制御します」とVeiga-Fernandes氏は説明します。

時計の働きを阻害すると腸内のILC3sの数が大幅に減少することがわかりました。これにより、重度の炎症腸バリアの破れ脂肪蓄積の増加が生じました」

これらの確固とした結果を得たことから、チームはすぐさま、腸内のILC3sの数が脳の概日時計の影響を非常に強く受けている理由を調査することにしました。この問いに対する答えは、正に彼らが探していたミッシングリンクでした。

適切な時、適切な場所に

チームは、脳の概日時計の機能の破壊がILC3s遺伝子群の発現にどのように影響するかを分析したところ、非常に特殊な問題が発生していることがわかりました。分子の「郵便番号」が失われていたのです。腸に局在するために、ILC3sは分子の「郵便番号」として機能するタンパク質を、膜上に発現する必要があります。この「タグ(郵便番号)」は、腸内に一時的に存在するILC3sに、移行先を指示します。脳からの概日リズムの入力がない場合、ILC3sはこのタグ(郵便番号)を発現できず、目的地に到達できませんでした。

Veiga-Fernandes氏によると、これらの結果は非常にエキサイティングです。夜間に日常的に活動している個人の腸の健康が損なわれる理由を明らかにするからです。「このメカニズムは進化的適応の美しい例です。 1日の活動期間中でも食事をしている間は脳の概日時計はILC3sの活性を低下させ、健康的な脂質代謝を促進します。しかし、食事中に腸が損傷する可能性があります。そこで脳の概日時計は食事の時間が終わるとILC3sが腸に戻るように指示しますILC3s侵入者と戦い上皮の再生を促進するために必要になります」

「ですから、夜に働く人が炎症性腸疾患に苦しむ羽目になるのは当然であると言えます。この特定の神経-免疫の繋がりは脳の時計によって非常によく調節されているものであることが、習慣の変化がこの重要な古来からの免疫細胞に対し、すぐさま影響を与えるという事実に関係しています」

この研究は、Veiga-Fernandes氏のチームによって生み出された、免疫系と神経系の間に新しく描かれた全ての繋がりに加わる画期的な発見です。

神経系が免疫系の機能を調整できるという概念はまったく新しいものです。本当にワクワクしました。この繋がりについて明らかになるほど、我々が健康でいるためにこのことがどれほど重要かがはっきりします。次に見つけるものを楽しみにしていますと彼は結んでいます。

ーーー 翻訳ここまで ーーー


引用ニュース & 原著論文

🔵 英語ニュース:HOW SLEEPLESS NIGHTS COMPROMISE THE HEALTH OF YOUR GUT (Champalimaud Centre for the Unknown )

🔵 原著論文:Light-entrained and brain-tuned circadian circuits regulate ILC3 and gut homeostasis,Nature, 2019 )

腸内フローラと概日リズムに関する書籍

Seigoの追記

どうやら目から入った信号は脳で処理され概日リズムを作っているそうですが、それと腸にある3型自然リンパ球系細胞ILC3s)が連動して脂質の代謝や腸内フローラに影響を与えているようですね。

しかしILC3sによる調節は明るいうちは上手く働くのですが、暗い(夜)になってしまうとうまく働かなくなってしまうようです。そうなると脂質の代謝や腸内フローラのコントロールが上手くいかなくなって肥満や腸のトラブルへと繋がっている可能性があるそうです。

この研究はまだ発見されたばかりなのでこれからの新しい情報を待ちたいと思います。

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