宮崎駿映画『天空の城ラピュタ』にでてきた「土から離れては生きられないのよ!」は本当だった!? (2019年最新研究)

ニュース/レビュー

今回は土壌に生息する菌が部屋の中に持ち込まれ、それがホコリに付いた有害な化学物質(発がん性物質を含む)を分解する能力を持ち合わせていたことが発見されたのでご報告いたします。

オハイオ州立大学がその調査結果を論文発表し、またそのレビュー記事(英文)を大学サイトに発表しました。今回はそのレビュー記事を翻訳しましたのでご紹介します。(翻訳のプロではないので読みづらかったらすみません m(_ _)m )

ニュースタイトル「ダストアップ(攻撃)! 微生物がホコリについた有害化学物質と相互作用する」

イメージ画像(出典:Free-PhotosによるPixabayからの画像)

英文執筆者:Laura Arenschield

家やオフィスにあるほこりは、人の内分泌系に問題を起こす化学物質が大抵いつでも少しは含まれている可能性がある科学者は言います。

しかし新しい研究によると、私たちが外から屋内に持ち込んでいる微生物(私たちの皮膚や外にいる、顕微鏡で見るレベルの細菌や微生物)は、化学物質を分解するのに役立つかもしれないということです。

科学ジャーナル1つである Environmental Sciences (環境科学): Process Impacts 誌にオンラインで掲載されたこの研究は、フタル酸エステルという化学物質を菌が分解することができることを初めて示したものです。

菌は湿気の多いところでは早く増殖し、増えながら有害な化学物質を分解します。しかし湿度の高いところでは(微生物の増殖も促し)、カビやカビくさい空気などさらにもっと問題になる可能性があることをこの研究は見出しました。

この研究はまだ、有害な化学物質を室内でどうやって処理するかを理解するための始まりにすぎません。

この研究の共同研究者で、オハイオ州立大学屋内環境品質研究所のカレンダンネミラー所長(Karen Dannemiller)は、「菌は皮膚から落ちたり、外から持ち込まれることは知っていましたが、そこに居るだけで何もしないと思っていました。この研究はいつもそういうわけではないことを示しています。」と述べました。

それどころか菌は何もしないのではなく、ほこりの中にある有害な化学物質(現代生活に密接に関わっている化学物質)を食べていることを研究者たちは発見しました。

フタル酸エステルは、プラスチックやビニールを作るために一番よく使用されています。この成分は芳香剤や多くの接着剤シャンプーパーソナルケア製品などに含まれています。これはある化学物質のグループの総称ですが、様々な研究から人の 生殖器官を含む内分泌系に影響を与える ことが明らかになっています。このグループの1つであるジエチルヘキシルフタレートDEHP)は がん を引き起こすことがあります。

共同研究者で、オハイオ州立大学環境科学科(environmental science at Ohio State)のアシュレーボープ博士(Ashleigh Bope)は「この化学物質は公衆衛生上の影響があるため、注意する必要があります」とし「これらの化学物質は水や土壌などの他のシステムで分解できることはわかっていますが、室内でも多いので生分解が実際に室内で起こっているかどうかを確認することが重要でした。」と述べています。

これら全ては、フタル酸エステル類を室内で分解する方法を調べ始めた時には頭の中にありました。彼らはまず、マサチューセッツ州の住居から使い古しのナイロン製の中敷のミディアムパイルをを切り取ることから始めて、オハイオ州の3つの家族からカーペットを集め、掃除機用バッグからほこりのサンプルも採取しました。

結果

研究室で、彼らは持ち帰ったほこりに何があるかを調べました。と、もちろんフタル酸エステルも見つけました。特定のフタル酸エステルが他のものよりも高レベルで出てきました;それはDEHPガンを引き起こすフタル酸エステル)でした。それから菌とフタル酸エステルとの相互作用を調べるために異なる湿度の下でカーペットの断片を保管しました。

DEHPの構造と性質〔画像はクリック/タップすると拡大できます〕(出典:論文No.28(追記覧あり)&日本語版と英語版のウィキペディア, by Dschanz – Own work using: BKchem, Public Domain, Link


湿度がより高く菌が増殖するほど、フタル酸エステルを分解していることを発見しました。共同研究者でダンネミラー研究室環境科学の大学院生サラハイネ氏は菌を活発にするには湿気が必要で、化学物質を取り除くのはいいことかもしれないけど、また別の問題を引き起こすかもしれないと述べています。

研究者らはカーペットを50~100%の間の湿度に保ちました。これは普通の家の湿度よりはるかに高いです。(米国環境保護庁は住宅には相対湿度30〜50%を推奨)。湿度が高ければ菌は爆発的に活発になります。カビが増えます。真菌類も生えます。

ヘインズ氏は「フタル酸エステル類が分解されていることがわかりましたが、分解による副産物はさらに有害かもしれません」として、「相対湿度が上がった条件では特に、もっと見る必要があります。菌が増殖する可能性が高いため、家の中で高い相対湿度にすることはお勧めできません。」と述べています。

オハイオ州立大学の土木・環境・測地工学科のダンネミラー助教授は、この研究は化学物質と菌から人々を守ることができるようにいつかより良い屋内環境を創るための準備をするものであると述べています。

「これらの相互作用を理解することは、大きな視点で、ゆくゆくはこれらの有害な化合物にさらされるのを防ぐためのより良い建築設計につながる可能性があるということです」として、「化学物質と菌の両方がそこにあることを知っていますが、では可能な限り健康に最も良い建物をどのようにして作るかということではないでしょうか?」と彼女は述べています。

引用ニュース&原著論文

🔵 英語ニュース:A dust-up: Microbes interact with harmful chemicals in dust)Apr 10, 2019

🔵 原著論文 :Degradation of phthalate esters in floor dust at elevated relative humidity (Environmental Science: Processes & Impacts ,2019 )

Seigoの追記

フタル酸エステルという物質も知らなかったのですが、それはプラスチック製品に入っていて、さらにフタル酸エステルの一種であるDEHP発がん性があるという研究結果が出ているにも関わらず、私はそのことに関して一切知らなかったことにショックです。

ウィキペディアで日本語のDEHP(フタル酸ビス)のページには発がん性があるとは書いてないのですが、英語のページにはありました。

英語のウィキペディア「Bis(2-ethylhexyl) phthalate」の一部を抜粋して翻訳:

DEHPはヒトにおける癌を引き起こす可能性のある物質でもありますが、ヒトの研究は、様々な条件で(DEHP)にさらされた条件と、限られた研究のため決定的な研究結果は出ていません。インビトロおよびげっ歯類の研究では、DEHPが細胞増殖の増加、アポトーシスの減少、酸化的損傷、および初期化細胞の選択的クローン拡大を含む多くの分子事象に関与していることを示している。[参考文献28]
論文No28:「DEHPの癌の危険性の人への関連性に関するメカニズムの考察」(Mutat Res. 2012 )〔この論文(英文)は全文が無料で閲覧可能です〕

英語のウィキペディアに引用の論文No.28によりますと、ラットとマウスの両方で、肝臓におけるDEHPの発がん性について十分な証拠がでているようです。ラボではヒトの細胞を使って発がん性が認めらという結果が出ているものの、疫学的なデータがないので発がん性があるとは言えないようです。(研究の進行になにかの圧力がかかっている可能性もあります)

どんな家具にDEHPは含まれているか(英語のウィキペディアより)

DEHPは家庭や学校の主な室内空気の汚染物質になっているそうです。

DEHPが含まれる家庭用品
テーブルクロス、フロアタイル、シャワーカーテン、ガーデンホース、レインウェア、人形、玩具、靴、医療用チューブ、家具張り、およびプールライナーなど

一般家庭でDEHPへの接触は次のような製品との間に生じる:
化粧品、パーソナルケア製品、洗濯用洗剤、コロン、香料入りのロウソク、および芳香剤

引用:「Bis(2-ethylhexyl) phthalate」(英語のウィキペディア)からの抜粋を翻訳

日本のウィキペディアに上記の記述はありませんでした。

日本ではなにが使用禁止になったか(日本語のウィキペディアより)

2002年厚生労働省が使用を禁止を通知
食品用の器具容器包装およびおもちゃについてDEHPを原材料とするポリ塩化ビニルの使用を禁止。【参考文献】

主に3種類のみが2002年より使用禁止を促す通知が政府から出たようです。実際にそれに従っているか、さらに外国から来る製品に規制がかかっているかなどの最近のデータは見つかり次第このサイトに掲載します。

※ 上記の米国のウィキペディアで書かれていたテーブルクロスや化粧品、洗濯用洗剤に入っているDEHPはどうなっているのでしょうか。いずれも直接または間接的に肌に触れるものですし、粉じんとなって部屋の中を舞う可能性もあります。次にもしやと思い、DEHPシックハウスに関係しているか調べてみました。

DEHPはシックハウスの原因とある揮発性物質です

🔵 DEHPの室内濃度が高いとアトピー性皮膚炎の有病リスクが上がりアレルギー性結膜炎に対しても同じく有病リスクが上がることが証明されています。

– 引用論文:「Exposure to house dust phthalates in relation to asthma and allergies in both children and adults.」(Sci Total Environ. 2014)
– 北海道大学のサイトから全文が閲覧できます:(PDF書類)

🔵 日本の多くの住宅では壁や天井の内装材として PVC(ポリ塩化ビニル、いわゆる「塩ビ」) が使用されていることから,室内ダストに含まれる DEHP 濃度は諸外国よりも高い。

– 引用論文:「Associations of phthalate concentrations in floor dust and multi-surface dust with the interior materials in Japanese dwellings.」(Sci Total Environ. 2014)
– 北海道大学のサイトから全文が閲覧できます:(PDF書類) 

DEHPの発がん性の問題などはウィキペディアにも入ってないので、あまりこの物質は使われていないのかと思いきや、北海道大学の調査に寄りますと外国よりも日本の室内DEHP濃度が高いそうです。とてもショックです。

この情報は次の日本語のレビューに記述してありましたのでリンクを貼っておきます。

– 引用論文:「2.環境汚染とアレルギーに関する疫学的知見 ― 特に室内空気質に焦点をあてて ― 」(アレルギー誌, 2014年) この日本文(PDF書類, 和文)は全文が閲覧できます。

菌による化学物質の分解

水や土の中ではフタル酸エステルの分解が起こるという研究はされていたようですが、室内では初めての研究だったようです。

室内では床に落ちているダストに含まれている菌で試験したそうですが、その菌たちが上記の発がん性物質DEHPなどを見事に分解したそうです。

じゅうたんにいる菌が加水分解などいろいろな方法でフタル酸エステルを分解できることが、菌の遺伝子の活性化の状況からも分かるそうですが、ただ菌以外の非生物的分解と、微生物的分解の両者が働いて分解工程が進むことが確認できたそうです。

そして湿度が高すぎると嫌なカビや菌がふえることがあり、分解されたフタル酸エステルが余計毒性が増してしまってはダメなので、どうしたら毒性の化学物質も嫌なカビや菌も除けるかが、今後の研究の課題のようです。

宮崎駿映画『天空の城ラピュタ』にでてきた「土から離れては生きられないのよ!」は本当だった

この研究結果を聞いて、私はシータがムスカに叫んだ名ゼリフを思い出しました。

シータ「今は、ラピュタがなぜ滅びたのか私 良くわかる。ゴンドアの谷の歌にあるもの。

『土に根をおろし、風と共に生きよう。種と共に冬を越え、鳥と共に春を歌おう。』

どんなに恐ろしい武器を持っても、たくさんの可愛そうなロボットを操っても、土から離れては生きられないのよ!

私は映画を見た時はその意味がよく分かりませんでしたが、今やっと分かってきたような気がします。

土壌から持ち込まれた菌が部屋の中のダストとして床に存在していて、実はそれがプラスチック製品から出た発がん性物質を分解してくれていたとは・・・。

土から来る恵みはスゴイですね。

私たちは土から離れすぎたようですね。

土にもっと近い生活に戻って、もっと発がん性物質の少ない、そして病気の少ない生活環境にしていきましょう 😄

 

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