トマトで肝臓がんが抑制できることを実証! 善玉菌も増加 (米国最新研究より)

ニュース/レビュー

今回はトマトのリコピンと肝臓ガン関するマウスの研究のご報告です。

米タフツ大学が最新研究をプレスリリース(英文)しましたので、それを和訳してご紹介します。

ニュースタイトル「トマトを食べて肝臓がんをやっつけよう」


サブタイトル:マウスの実験で、トマトのリコピンが高脂肪食によって引き起こされる脂肪性肝疾患、炎症および肝臓がんを減少させることが発見されました。

「生のトマトを含めトマトソースやペースト、ホールトマト缶詰、ケチャップ、そしてトマトジュースからの加工されたトマト製品のような自然食品を摂取することがリコピンの最良の供給源となります。」と、王翔洞(Xiang-Dong Wang)といいます。

レポーター:Alyssa DiLeo (2019/02/28)


がんとの闘いにおいて、意外なツールが武器庫にはあります: それは私たちが食べる食品です。その理由は食品中のある栄養素ががんを予防する役割を担っていることが判明してるからで、がんの発症を根絶することに最重点を置く世界がん研究基金が、がん症例の30〜50%が予防可能であると報告していることと繋がっています。

タフツ(Tufts; マサチューセッツ州)にあるジャン・メイヤー米国農務省ヒト老化研究センターのシニアサイエンティスト兼アソシエイトディレクターである王翔洞(Xiang-Dong Wang)は、食べ物ががんの発症、特に肺がん、肝臓がん、大腸がんの予防にどのように役立つかを研究しています。

ほとんどの種類のがんでその発症率は低下していますが、非アルコール性脂肪肝疾患や肥満、および糖尿病が並行して上昇しているので、米国では肝臓がんの発生率および死亡数の両方の上昇に対する懸念が高まっています。

関心の対象となっている食品の1つは、多くの果物や野菜に赤みがかった色合いを与え、天然に存在するリコピンを豊富に含むトマトとトマト製品です。

最近の「がん予防研究/Cancer Prevention Research」誌に発表された研究では、王氏の栄養・がん生物学研究所は食品全体の中でもリコピンを豊富に含むトマトのがん予防効果を調べました。

 実験方法 
乳児期のマウスに肝臓の発がん物質を感染させ、その後 西洋の食事のような不健康な高脂肪食でリコピンを含むトマトパウダーの入った餌と、入っていない餌を与えました。

研究者はその後、トマトパウダーが炎症とがんからマウスをどのように守ってくれるかについて調べました。人間の場合、リコピン摂取量は1日に2~3個分のトマトかトマトソースをかけたパスタに相当します。

質問「あなたの研究で何を発見したのですか?」

 結果 
王翔洞: リコピンが豊富なトマトパウダーが、マウスが食べた高脂肪食によって促進される脂肪性肝疾患や炎症、および肝臓がんの発達を効果的に減らすことができることを初めて実証しました。マウスにトマトパウダーを与えることによって、体に良い善玉菌の量や種類が増え、炎症に関連するいくつかの細菌の過剰増殖が防止されました。

興味深いことに、トマトパウダーを摂ることは肝臓がんの発症を防ぐのに同量の精製リコピンを摂取するよりも効果的であることが観察されました。これはビタミンEやビタミンC、葉酸、ミネラル、フェノール化合物、および食物繊維など、トマト全体の他の栄養素の潜在的な有益な効果が原因である可能性があります。

次のステップは、炎症や肝疾患のリスクを下げることのおけるトマトリコピンの役割について詳しく理解するために、人のハイレベルな無作為臨床試験を実施することでしょう。一方、リコピンを豊富に含む食品を丸ごと食べると、単離された — または精製された — リコピンよりもがんを予防するのに効果的であると考えられます。

質問「リコピンについて判明したことは?」

リコピンが最も多いのはトマトです。グアバやスイカ、グレープフルーツ、パパイヤ、および赤ピーマンなどもリコピンが含まれていますが、トマトと比較してはるかに少ないです。トマトやトマトソースなどでリコピンを多く摂ることは、心血管疾患、骨粗鬆症、糖尿病、および特定のがん(前立腺がん、肺がん、乳がん、大腸がん)のリスク低下と関係しています。

これらの関連付けは観察研究に由来していますが、多くの研究室ではリコピンが強力な抗酸化物質であり、抗炎症薬や抗がん剤であることが実証されています。

質問 「リコピンの利点を最大限に引き出す方法は?」

生のトマトを含めトマトソースやペースト、ホールトマト缶詰、ケチャップ、そしてトマトジュースからの加工されたトマト製品のような自然食品を摂取することがリコピンの最良の供給源となります。トマトを調理し、オリーブオイルのような脂肪を少量加えると、リコピンの吸収を増進することができます。

引用ニュース & 原著論文

🔵 英語ニュース:Eating Tomatoes to Fight Liver CancerTufts University

🔵 元の学術論文:Dietary Tomato Powder Inhibits High-Fat Diet–Promoted Hepatocellular Carcinoma with Alteration of Gut Microbiota in Mice Lacking Carotenoid Cleavage Enzymes (Cancer Prevention Research, 2018)

Seigoの追記

リコピンは抗酸化物質でいろんな効果が知られています。

この研究ではトマトパウダーで摂った方が、肝臓がんや炎症にいいんですね。

しかも善玉菌を増やしてくれるとは!

リコピンは果肉よりトマトの皮や種に多いのでトマトを丸ごと食べる方がいいようですね。

元の論文のサマリーにはサーチュイン(Sirtuin 1)遺伝子も増加したとありますので長寿遺伝子も活性化したデータが出ているようです。

肝臓がんを引き起こすNDMAが大阪府の水道水になぜ含まれている?

この実験で使われている肝臓がんを人工的に作った薬剤は「N-ジエチルニトロソアミン(NDEA)」という物質でニトロソアミン類に分類されるものです。

ニトロソアミン類の中で少し構造が違う「N-ジチルニトロソアミン(NDMA)」はやはり発がん性を持つと疑われている物質ですが、これが大阪府の水道水に含まれていたという報告がありました〔大阪府内の水道水中NDMAについて(大阪府公衛研)PDF書類〕。

NDMAやNDEAは下の図のようにたいへん単純な構造をしている化学物質です。大阪は琵琶湖が近いのでこういう発がん性物質によるテロに警戒する必要があるかもしれません。

N-ジエチルニトロソアミン(NDEA)〔出典:Wikimedia commons〕

ネットで手に入る有機のトマト製品


 

 

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