地球に優しい食生活とは?「プラネタリーヘルシーダイエット」を提唱したEATランセット委員会

健康情報

地球と人が末長くヘルシーに生きていけるような食生活の提案が、2019年1月16日ランセット(英医学誌)に掲載されました。

このレポート「人新世〔じんしんせい = Anthropocene(アントロポセン):「人類の時代」という意味の造語 〕における食べ物:ずっと続けられる食料システムとヘルシーダイエットに関するEATランセット委員会Food in the Anthropocene: the EAT–Lancet Commission on healthy diets from sustainable food systems)」は、16ヵ国の37人の研究者と世界の食糧システムを科学的に変革する非営利団体EATによるものです。

現在、食料システムは環境も人々の健康も脅かされているのが現状です。
カロリー的には食料生産は人口の増加に追いついてはいるものの、8億2000万人以上の人の食事は不十分ですし、さらに多くの人が栄養不足や質の悪い食事によって肥満や感染症、心臓病、脳卒中、糖尿病などの非感染病に陥っている状態です。不健康な食事は安全でないセックスやアルコール、そしてドラッグを組み合わせたよりも罹患率や死亡率のリスクとなりえます。
また環境的にも安全とは言えないので、現在の食料システムを早急に変える必要があるということです。

知っておくべきこと

・食べ物の生産の仕方や廃棄量などは人や環境に大きな影響を与えます。正しく食事をとることは、気候変動に関する国連やパリ協定の目標を達成するためにも重要です。

植物性が多く、動物性の少ない食事は人の健康に良いだけでなく地球にとっても末長く良いことになります。そして小さな変化のようでいて大きな良い影響です。

・現在、農地は世界で約40%と陸で最も多くを占め、食料生産によって温室効果ガス排出量30%、水の消費70%にもなります。農地化することが森林など種の絶滅の原因となっています。

赤身肉(牛・豚・羊)の生産は他と比べても特に環境的な負担が高い、つまり放牧に広い土地が必要なので森林が失われます。また家畜の排泄物は水を汚染したり、ゲップのメタンガスは二酸化炭素の20倍も温室効果を持ってしまいます。

・世界では毎日8億2000万人以上の人が飢餓で、1億5000万人の子供が長い間飢餓で苦しみ、5千万人の子供たちはひどい状況におかれています。

・かたや世界で20億人を超える大人が肥満で、糖尿病やがん、心臓病などの非感染症疾患が世界の主な死亡原因となっています。

・良い食べ物は変化を起こすためのパワフルな推進力となりえます。EATランセット委員会の推奨する食生活によって適切な需要を促進し、明確な市場シグナルを農家にフィードバックできます。

惑星的ヘルシーダイエットとして果物や野菜、ナッツ、豆などの植物系を多くし、お肉と乳製品は少しだけにします。これで不健康な食品の過剰摂取を防げます。

惑星的ヘルシーダイエットにすることで年間1100万人の早死を防ぐことができ、2050年までに末長く地球規模の食料システムに移行し、全ての人にヘルシーな食事を提供します。

惑星的ヘルシーダイエットでは1日あたり2500kカロリーを肥満や非感染病などの病気のリスクを減らすのにオススメしています。

私たちにできることは?

ヘルシーで続けられる美味しいものを選びましょう

植物を食べるのを増やし、いろんな種類を食べましょう
とりあえずできることは、食べるものや捨てるものを変えることです。全ての栄養素を摂り、食料システムの多様性をサポートするために色々なものを食べましょう。

幅を広げてみよう
価格や文化、年齢、個人の嗜好などいろいろあります。3万種以上の植物で生涯にわたっていろいろ味わって楽しめます。

タンパク源に植物を
タンパク質として少なくとも1日に125gの乾燥豆、レンズ豆、ナッツを食べましょう。

肉を減らす
お肉はたんぱく質や鉄、ビタミンB12を摂るのに重要ではありますが、摂りすぎは健康と地球に害を及ぼすかもしれません。
週に赤身肉(牛、豚、羊)98g、鶏肉203g、魚196gを超えないように心がけましょう。

裕福な国では肉類・乳製品は減らしましょう。

控えめを心がける
食べ過ぎは太ったり健康上の問題を起こすかもしれませんし、環境にもよくないかもしれません。家族と分け合い、一人分を食べましょう。

再生農業を支援
再生農業を実践している農家のお肉などを買うことで気候変動対策の助けになります。このタイプの農業は土壌炭素を増やし(注:大気中の二酸化炭素を減らす)、水の汚染を防ぎ、生物の繁栄を提供してくれます。

一皿一皿が投票
市場は需要に従うので私たちは健康と地球に良いものを買うようにしましょう。環境に配慮する農家を支援することでさらに健康と環境に利益となることを考慮してください。

1週間先を計画
いろんな美味しい料理を楽しむために計画的にお店で買うのがよく、来週のメニューを決めておけば時間もお金も節約になり、無駄も省けます。

家で作ろう(手作りをしましょう)
家族と過ごす時間ができるいいチャンスで、しかもユニークなレシピを子供たちへ伝えられます。

無駄にせず、望み過ぎず
残り物はお弁当に詰めたり、別の料理に使ったりして節約することは地球にも人にも良いことです。食べ物の無駄が減れば、世界に食料が行き渡り地球を救うことができます。

プラネタリーヘルシーダイエット

1日あたり2500kカロリー

たんぱく質
できれば植物から摂る。
魚または代替オメガ3脂肪酸を週に数回
控えめに鶏肉と卵を
赤身肉を少量、特に加工肉は少量で

1日あたり少なくとも
500グラム(5サービング)の果物と野菜を摂る。(じゃがいもを除く)
200(100~300)グラムの果物
300(200~600)グラムの野菜
75(0–100)グラム乾燥豆、レンズ豆、エンドウ豆を含むマメ
50(0–75)のナッツ

1週間に
98グラム以下の赤肉(豚肉、牛肉、子羊肉)
203グラム以下鶏肉
196グラム以下の魚を目指します。

1日当たり
250(0–500)グラムの乳製品

脂肪
飽和脂肪の摂取を少なく、部分硬化油が含まれていない植物由来の不飽和脂肪酸
1日当たり
40(20~80)グラムの不飽和脂肪酸
11.8グラム以下の飽和脂肪酸

炭水化物
主に全粒穀物
精製穀物の摂取量を少なく、糖からのエネルギーは5%未満に
1日当たり
232グラムの全粒穀物米、小麦、トウモロコシ
50(0~100)gの塊茎またはでんぷん質の野菜(ポテトとキャッサバ(タピオカ)を含む)

参考文献

Food in the Anthropocene: the EAT–Lancet Commission on healthy diets from sustainable food systems
2019 Jan 16. pii: S0140-6736(18)31788-4. doi: 10.1016 / S0140-6736 (18) 31788-4.

上記の論文はタイトルをクリックするとジャーナルの論文に飛びますが、要約と参考文献のみ閲覧可能で本文を閲覧するのは有料のようです。

その他の参考文献と日本語レビュー

🔵 EAT (eatforum.org) ホームページ

🔵 EAT-Lancet Commission on Food, Planet, Health (eatforum.org) レポート・サマリー

🔵 健康にも地球にも優しい食生活「プラネタリー・ヘルス・ダイエット」とは (Forbes)

🔵 肉は1日ひと口だけ? 人も地球もヘルシーになる食生活のススメ(ニューズウィーク日本語版)

Seigoの追記

お肉は普通はもっとずっと多く食べている方が多いのではないでしょうか。
でもこのダイエットの推奨する量でビタミンなどの栄養素やたんぱく質は足りるのでしょう。
鶴見先生もだいたいそのくらいの量を勧めておられたと思います。

お肉に対して3倍くらいは野菜を食べましょうとよく言いますが、そうすればお野菜の抗酸化物質やアルカリ化でお肉の弊害を無くしてしまえます。
プラネタリーヘルシーダイエットではファーマーズマーケットなどで買うのも勧めているかと思いますが、割とオーガニックに近いものになるかと思います。また全粒穀物を摂ることで捨てていた部分の栄養分もしっかり摂れ無駄がないですね。

ランセットがすごく理想的な食事を勧めているので感心しました。
欲を言えば牛乳は生(非加熱)がいいですねー
花粉症などのアレルギーも含め色々な病気が期待以上に減るかもしれませんね。
地球と人に優しい高次元の「プラネタリーダイエット」、カッコイイ名前ですね!

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