中国がインドに攻め入っていった場所はもともとチベット地域で水や油, 天然ガス資源が宝庫【有本香】

ニュース/レビュー

有本香氏が中国とインドのぶつかっている地点の情報を虎ノ門ニュース(6月18日)で詳しく解説しておりましたので、ここに記録しておきます。

『中印衝突 中国紙「インドが実効支配線超えた」と主張』- 有本香氏の解説

インド北部、赤い地方に中国が軍を送り込んだ(出典:ウィキメディアコモンズ)


 

 

インド北部カシミール地方の係争地で、中国軍とインド軍が衝突した問題で、中国共産党機関紙人民系の環球時報は、17日までにインド側を非難しました。国境地域で緊張が続いている原因として、インドは傲慢、尊大インドは傲慢、尊大、怖いものなしだ。」と指摘。衝突についてはインドが実効支配線の中国側で道路などの施設建設を強行し、中国軍人がこれを制止して引き起こされたと主張。中国側が死傷者数について公表していないことに関しては、両国の世論が死傷者の数を比較し感情的な対立が進むのを避けているとの見方を示しました。また環球時報はインドと衝突したいわけではなく、平和的に両国の国境紛争を解決することを望むとした上で、これは中国の善意であり弱腰なのでもないと強調しているということです。(産経新聞の概要)

有本:どっちが傲慢なのでしょうね(笑) 環球時報ですからいつものことですが・・・中印衝突というのを、ネットなどで情報を得てる方々はご覧になって、相当緊張しているんじゃないかと思ってらっしゃると思うんですね。緊張してることは間違いはないんですけど、中国とインドの国境地帯は何千キロにも渡りますが、1962年の中印国境紛争以来ずっと休戦状態なのです。38度線とはちょっと意味が違いますが、同じような状態とも言えるんですよね。何千キロもある国境のうちどこでも緊張状態があるわけではなく、時々小競り合いみたいなことが起きては緊張が高まるとまぁまぁって水入りになるようなパターンなんですよ。今回も結構緊張が高まったって言われるんですが、今朝の報道を見ると中国とインドの外務大臣が電話会談をしてお互い矛を収めましょうということを話し合ったと伝わってきていますが、今回 今までと若干違うのは、余談ですが2009年にも同じように中イの国境で緊張が高まったことがあって、その時にウエッジというJR東海がやってるメディアに書きました。インターネットでもアーカイブで読めると思うんですね。その辺りとかぶることをご説明したいんですが、(地図)今回を含めたびたび衝突が起きている地域はカシミール(カシュミール)と言われる地域なんです。これはジャンムー・カシュミールと言って俗にカシミールと言われる部分と、もうちょっと広いエリアを含むんですが、インドの一番北にあります(上の地図がインド全体から見たところ。下がインド北部の拡大地図(ジャンムー・カシュミール藩王国)。

ジャンムー・カシュミール藩王国(出典:ウィキメディアコモンズ)


カシミール問題は昔から時々ニュースになりますが、インドとパキスタンがカシミールの領有を巡って争っていると今まで常に報じられて来ていますが、実はカシミール問題とは中国とインドの問題なのです。複雑なところは省いて、今回インドが中国側から攻撃と言っても投石って言ってるんですけど、どんな石だよーという話で、でも20人ぐらいは無くなったって言ってるんですよね。その状態を受けて、ラダックにどんどん軍の車両をあげて兵士を送り込んだと。



つまりやるならやるぞということなんですよ。ジャンムー・カシミール州で同時にパキスタンとの国境でもありますし、中国と国境接してますね。その下に新疆(しんきょう)ウイグル自治区なんです。こういう場所なんです。

そしてアクサイチンがあってラダックがあり、その下にチベット自治区なんです。ですからこの国境の様相見ていただくとわかるように、ウイグル・チベット問題というのは民族・人権問題という要素以外にまさしく中国の国境地帯の安全保障上の問題なのですよね。インド人が兵を送り込んだラダックとアクサイチンも中国が一部実効支配したりしているのですけれども、ここはもともとチベットなのです。ラダックの人たちはほぼ全員チベット民族なのです。ですからここは伝統的にいうとチベットだった地域なんですよ。ラダックという地域はものすごい高くて、一番低い所でも標高3000メートルくらいです。ですから高地に適応しているチベット民族しか住んでないところなのですよ。そしてそこは今インドの州の一部になってるという話なんですが、ジャンムーカシミール州の下のヒマラヤに近いヒマーチャル・プラデーシュ州にチベット亡命政権があってダライ・ラマ法王がいらっしゃるんです。ですからチベットと国境を接している、上の方では新疆ウイグル自治区と接していて、さらにこの辺りはものすごい標高が高いんですよ。ですからアジアを全部見下ろす地域にあるんで、軍事的にもここを抑えるのは非常に意味があるんです。このチベットからずっとカシミールの半分くらいとラダックの周辺ですね、ここを中国とインドが俺たちのものだと言って頑張っている状況なんですよ。インドの首根っこを押さえるということですし、それからチベットは高いからアジアを全部見下ろせるだけじゃなくて、アジアの水瓶と言われています。ですから アジアに流れる大河を含めた15の河川は全部チベットに水源がある

それからもう一つ、上に新疆ウイグル自治区があるじゃないですか、新疆ウイグル自治区に油と天然ガスがあるんです。ですからそこ両方抑えてれば、水とエネルギーを全部握ってなおかつ一番高いところに立って、アジアを全部見下ろせて、インドの首根っこも抑えられると、こういう場所なんです。ですから中印衝突というのは、石を投げあって20人死んだとか実際大したことないんだとかみんな思っているけれども、なんで60年近くも緊張状態が続いているかというとそういう意味合いなんです。そしてチベット・ウイグル問題というのも民族・人権問題であると同時に、まさしく安全保障の問題なんです。安全保障というか中国の拡張主義ですね。中国としてはここどうしても自分たちのものにしたいという意味合いのある問題だということなんです。

ですからそのあたりも本当はマスメディアでもうちょっとちゃんと解説してほしいなあというふうにか寝てから思ってますけど。

インドは軍事費ランキングで世界第4位, 中国は2位

インドと中国はこれからも緊張が断続的に続くでしょう。なぜかというと中国はものすごい軍拡をしているってのは知ってますが、インドの軍拡も凄まじいんですよ。今世界で第4位です。無論去年の数字を見ても中国のまだ3分の1くらいなんですけど、ロシアを上回ってます。過去5年間でいうと倍以上になってるんじゃないですか。インドも近代化と同時に海軍を増強しようとしてるのです。ですからまだまだ総額では中国に及ばないですが、軍拡を続け今回もやるならやるぞという構えだし、もう一つ対GDPでいうと中国が1.87% に対してインドは2.42%。韓国も2.62%でしょ。日本だけがわけわからない、GDPが1%という自ら枠をはめているんだけれども。軍拡競争は是とはしませんけども周辺諸国含めてみんなこういう状況なのに全く意味のない1%枠ってなんですかって話なんですよね。

そしてインドは中国に勝るとも劣らない、あるいは中国をしのぐと言ってもいいような軍拡を続けていて、軍事的な中国との対抗をやってるだけではなく、コロナでロックダウンをしてました。中国からもたらされた疫病で経済活動止まっちゃったってことで結構反中感情が高まってるんですけど、ロックダウンの最中に(4月の下旬だったと思いますが)、インド政府は中国企業がインドの企業を買収できないようにしました。10年以上中国から流れ込むチャイナマネーものすごかったのですよ。特に情報系のアリババとかテンセントとかあの辺が大型の買収をしかけたりしてたんですけど、今後はほぼ業種に関係なく中国資本が、周辺諸国と言ってるんですけど、他の国はインドより貧しいわけですからほぼほぼ中国なんですけど、インド企業を買収にかかった時は全部政府の許可がいるってことにしちゃったのです。ですから中国マネーを明らかに警戒していて、経済侵略も防いでいこうという体制を今回とりましたので、これから中国とインドの関係は表向き友好的な態度も見せるかもしれませんが、相当激しくやり合うような時代に入っていくと思いますね。

引用:【DHC】2020/6/18(木) 有本香×佐藤正久×李相哲(Skype出演)×居島一平【虎ノ門ニュース】
(7月1日まで無料公開)
https://www.youtube.com/watch?v=1Ddcpqz57lE


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