慢性閉塞性肺疾患(COPD)の原因がタバコ以外にもあることが判明! (2019年英国研究)

ニュース/レビュー

今回はタバコを吸わない人が喫煙者と同じように慢性肺疾患になる理由のがかりについての報告です。

英国ノッティンガム大学の新しい研究結果をプレスリリースしましたので、それを翻訳したものをここでご紹介します。

ニュースタイトル「タバコを吸わない人が喫煙者と同じように慢性肺疾患になる理由に関する新しい手がかり」

「ネイチャー・ジェネティックス」誌に発表されたこの新しい研究によれば、喫煙歴のない人が慢性閉塞性肺疾患(COPD)を発症する理由、および喫煙者の間で発症リスクの度合いに違いがある理由遺伝的な違いで説明できるそうです。

2年間の研究で、研究者は参加した400,000人の2000万個のDNAを測定し、呼気検査から得られた肺機能の測定値と比較しました。その結果、肺の健康とCOPDの発症に影響を与える139の新しい遺伝的差異が見つかりました。これらの差異は喫煙に加えて、COPDを発症するリスクを高める原因です。

COPDは気道の損傷によって息切れを増進させ、生命を縮める原因になる肺疾患です。喫煙はCOPD発症リスクを大幅に高めますが、この病気の5人に1人は喫煙したことがありません

イメージ画像(出典:Myriams-FotosによるPixabayからの画像)


レスター大学(University of Leicester)呼吸器学科の英国肺疾患財団(British Lung Foundation)で、この研究の主幹であるルイスウェイン(Louise Wain)教授は、「喫煙はCOPD発症のリスク要因として確立されていますが、喫煙者および非喫煙者が等しく発症することは余り理解されていません。我々の研究から、ある者はCOPDを発症するが、ある者は発症しないという理由に関する重要な手がかりを得ましたが、これはCOPD患者に見られる肺機能の低下を止める新たな治療法を開発するのに役立ちます。」と述べています。

研究者らは肺の健康と関係のあるDNAの違いの数に応じて、人々を10個の遺伝的リスクグループに区分しました。遺伝的リスクが最も高いグループの10人中8人の喫煙者がCOPDを発症しています。一度も喫煙したことのない人々は全体的に非常に低いリスクグループでしたが、最も高い遺伝的リスクグループでは、10人中2人の非喫煙者がCOPDを発症しています。全部で279のDNA差異が肺の健康とCOPDのリスクに影響を与えることがわかりました。

レスター大学とレスター病院との提携に基づくレスタープレシジョンメディシンインスティテュート(高精度医療研究所)のマーチントビン(Martin Tobin)教授は加えて、「私たちの調査結果は、両方のグループにとって有益な新しい治療法を開発するのに役立つ可能性があります」として、「これらの進歩は英国のバイオバンクの参加者の寛大さと、この研究に貢献してくれた国際的な研究プロジェクトなしには実現できなかったでしょう」と述べました。

チームは確認した遺伝子差異が、アフリカ系アメリカ人と中国人の集団を含む他の民族グループにおけるCOPDリスクの重要な要因でもあることを示すことができました。COPDは2億5千万人の人々に影響を及ぼしており、世界中で毎年5%(または約310万人)の死亡原因となっています。この研究で同定された遺伝子差異が新しい治療法の開発に使用できるとしたら、それは世界中の健康事情に影響を与える可能性があります。

イメージ画像(出典:kai kalhhによるPixabayからの画像)


この研究は、ウェルカムトラスト、メディカルリサーチカウンシル(Wellcome Trust, the Medical Research Council)、ブリティッシュ肺疾患財団(British Lung Foundation)、国立衛生研究所(National Institute for Health Research-NIHR)の支援を受けています。

ノッティンガムバイオメディカルリサーチセンター(Nottingham Biomedical Research Centre)のディレクター、イアンホール(Ian Hall)教授は、「我々は、レスターとノッティンガムの NIHR 生物医学研究センター(NIHR Biomedical Research Centres)間の国際コラボレーションと緊密な連携を以て、将来の医療を改善するための強力な研究が可能になることを実証しました」として、

「英国でCOPDを予防するための最も重要な対策は、喫煙を避けることです。喫煙をやめることで、喫煙者全員がCOPDを発症するリスクを減らすことができます。高レベルの大気汚染への曝露を減らすことも有益である可能性があります。私たちの研究によってこれが一歩近づいたことを嬉しく思います」と述べています。

引用ニュース & 原著論文

🔵 英語ニュース:New clues about why non-smokers, as well as smokers, develop chronic lung disease revealed( University of Nottingham 

🔵 原著論文 : New genetic signals for lung function highlight pathways and chronic obstructive pulmonary disease associations across multiple ancestries ( Nature Genetics vol.51, pages 481–493 (2019) )

Seigoの追記

COPDは(慢性閉塞性肺疾患:chronic obstructive pulmonary disease)は空気がうまく吐き出せなくなる生活習慣病らしいです。

日本では90%以上が喫煙が原因らしいですが大気汚染でも起こるようですね。

この研究では受動喫煙のことは考慮されているかちょっとわかりませんが、とにかくタバコを吸わない、吸ってる人の近くにいないというのがまず第一の予防策のようですね。

論文では、喫煙はCOPD発症リスクを大幅に高めるが、この病気の5人に1人は喫煙したことがないといっておりました。つまり単純計算で喫煙したことのある人はCOPDに約4倍かかりやすいといえるでしょう。ここだけ見ただけでも喫煙の悪影響というものがデーターとしてはっきり出た結果だと思います。

そして今回の研究で遺伝的要因がこのCOPDの発症に関与していることが分かりました。つまり遺伝子検査をしておけば自分がCOPDになりやすいかどうかの判断がつくようになるので、将来的にはあらかじめ予防策をとっておくこともできるようになるでしょう。

全粒穀物やお魚、野菜、果物といった健康的な食事、砂糖や加工肉を避けるなどがリスクを低下させるそうです。ということは炎症が関連しているのかな?

炎症を引き起こす食べ物に関しては先日記事にしましたのでご参考までに:

炎症を引き起こす6つの食べ物とは? 腸炎やリーキーガッドに関連【論文の裏付けデータあり】(当サイト) 2019.05.02

最近の日本では光化学スモッグなどの大気汚染は少なくなったものの、PM2.5による大陸からの大気汚染が深刻なので、それに対する対策も有効かも知れませんね。

 

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