全身に痛みをともなう難病「線維筋痛症」がインスリン抵抗性用の薬で改善することが判明!? (2019年最新研究)

ニュース/レビュー

線維筋痛症や慢性疼痛などの難病インスリン抵抗性の薬としてよく使われるメトホルミンで改善できるという研究論文が発表されましたのでご紹介致します。

この報告は論文に発表され、またそのレビュー記事(英文)がテキサス大学医学部ガルベストン校のサイトにリリースされました。今回はそのレビュー記事を翻訳しましたのでご紹介します。(翻訳のプロではないので読みづらかったらすみません m(_ _)m )

またこの発表された論文はオープンアクセスですので、どなたでも無料で論文の全文が閲覧できます!(英語ですが・・・😅 )
→ 最近はGoogle翻訳性能が良くなって読みやすい日本語に和訳をしてくれますので(完璧ではないですが)ご活用下さい。(Google翻訳はこちら

追記では実はメトホルミンにはアンチエイジング作用があることが分かってきたのでその事についても触れています。

ニュースタイトル「インスリン抵抗性によって線維筋痛症が誘起されるか?

イメージ画像(出典:by makieni/写真AC)


テキサス州 – ガルベストンのテキサス大学医学部(UTMB)のチームは、インスリン抵抗性を標的とした薬物療法で、線維筋痛症患者の痛みを劇的に軽減させることができました。

この発見は、慢性的な痛みを特定し管理する方法を劇的に変える可能性があります。UTMBのMiguel Pappolla神経科教授は、この発見は非常に予備的であるものの、線維筋痛症および関連する慢性疼痛(とうつう;ずきずきとうずくように痛むこと)の治療方法に革命的な変化をもたらす可能性があると述べています。この新しいアプローチは、健康管理にかかる数十億ドルを節約し、多くの人にとって、疼痛管理のための鎮静剤への依存を減らす可能性を秘めています。

本研究は、UTMBのチームとNIH(国立衛生研究所)を含む米国全土からの研究者との共同研究によって行われました。インスリン抵抗性を調べる一般的な血液検査、あるいは前糖尿病であることを利用して線維筋痛症の患者を健常者と区別することに初めて成功しました。その後、線維筋痛症患者をインスリン抵抗性を標的とした薬物療法で治療したところ、患者の疼痛レベルを劇的に減少させることができました。この研究結果は、PLOS ONEに発表されました。

線維筋痛症は、慢性的な痛みと身体障害を引き起こす最も一般的な疾患の1つです。線維筋痛症の世界的な経済的影響は、米国だけでも非常に大きく、関連する医療費は毎年約1000億ドルです。広範に研究が行われているにも関わらず、線維筋痛症の原因は未だ不明であり、疼痛軽減薬以外にこの症状に対する特定の診断法や治療法はありません。

Pappolla教授は次のように述べています。
「以前の研究では、インスリン抵抗性の患者さんに脳の小血管内で機能不全が認められましたこの現象は線維筋痛症にも見られるので、インスリン抵抗性がこの疾患の謎を解く鍵になるのではと考えました。全員ではないものの、大部分の線維筋痛症患者が、過去2〜3ヵ月間の平均血糖値を反映するA1cレベルによって識別できることが示されました。わずかに上昇したA1c値を示した前糖尿病患者は、線維筋痛症や他の慢性疼痛障害の特徴である中枢性(脳)疼痛を発症するリスクがより高いのです」

研究者らは、広範囲の筋肉/結合組織痛の治療を受けるために、疼痛クリニックに紹介された患者を特定しました。線維筋痛症の基準を満たす患者は、さらに年齢によって区分されました。 同年齢の対照集団と比較したところ、線維筋痛症患者のA1c値は有意に高いことがわかりました。

「線維筋痛症に関して広範な研究が行われていたことを考えると、以前の研究がこの単純な関係性を見逃していたことは不思議なことです。この見落としの主な理由は、線維筋痛症患者の約半数は、A1c値が正常範囲内に収まっていたためと思われます。今回の研究では、初めて年齢に合わせたA1c値の最適値を適用して解析を行いました。患者の年齢を調整することで、患者と対照者との違いをはっきりさせることができたのです」

インスリン抵抗性の薬であるメトホルミンが、線維筋痛症の薬に追加された結果、患者の疼痛レベルを劇的に減少させることが明らかとなりました。

ーーー 翻訳ここまで ーーー


引用ニュース&原著論文

🔵 英語ニュース:Does insulin resistance cause fibromyalgia?May 7, 2019

🔵 原著論文(オープンアクセス;全文が無料でご覧になれます) : Is insulin resistance the cause of fibromyalgia? A preliminary report (PLOS ONE  2019 )

Seigoの追記

メトホルミンという薬は初めて聞いたので少し調べてみました。

メトホルミンの構造(出典:Wikimedia Commons, By Ben Mills, Link


メトホルミンが肝臓での糖新生を抑制することなどによって糖尿病に効果があることは開発当初から知られていましたが、その薬理については複数の作用が考えられています。

メトホルミンなどのビグアナイド系薬はミトコンドリアの呼吸鎖複合体 I を標的にして、その活性を阻害することで細胞内のAMP/ATP比を増やして細胞内のエネルギーバランスを変化させる[3][4]。このため主に肝細胞において、細胞内のエネルギーバランスのセンサーであるAMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)を介した細胞内シグナル伝達系を刺激することにより、糖代謝を改善することが示唆されている[1]:17[5][6]。

抗老化
メトホルミンマウスや線虫、ハエにおいて特定の条件下で寿命を延ばすことが確認されている[18]
論文No.18: Vladimir N Anisimov (Nov 2013), Metformin – Do we finally have an anti-aging drug?, 22, 12, Cell Cycle, pp. 3483–3489, doi:10.4161/cc.26928
(ウィキペディアより)

抗老化作用があるということで、さらに調べると「糖尿病ネットワーク」というサイトにメトホルミンのアンチエイジング効果について記述がありましたので、以下に抜粋して紹介させていただきます。

メトホルミンが寿命を延ばすという研究報告

米国アルバート アインシュタイン医科大学のバルジライ教授は次の様に述べています。
メトホルミンに寿命と健康でいられる期間を示す健康寿命が延ばすアンチエイジングの効果があると期待しています。糖尿病患者だけでなく健常者でも、抗加齢の効果があるのではないかと考えられます。

英国で行われた大規模研究「UKPDS」では、メトホルミンは他の治療薬と比べ、2型糖尿病患者の動脈硬化を抑制し、心血管疾患の発症リスクを減少させることが確かめられた。

米国立老化研究所の研究では、メトホルミンを投与したマウスはそうでないマウスに比べ、寿命が5%延びることが明らかになっている。メトホルミンを投与したマウスは摂取カロリーが減り、コレステロール値が下がり、腎臓病やがんの発症が減っていた。

また、バルジライ教授らの研究チームが、約7万8,000人の糖尿病患者と約7万8,000人の糖尿病ではない人を対象とした大規模研究では、メトホルミンによる治療を受けている糖尿病患者は長生きすることが示された。メトホルミンを投与された70歳代の糖尿病患者は、糖尿病でない人に比べ死亡率が15%減少した。

バルジライ教授らの研究チームが今年開始する「メトホルミンによる加齢抑制」(TAME)研究は米国の15ヵ所の医療機関で行われる。70~80歳の高齢者3,000人を対象に、メトホルミンを服用する群と服用しない群に分け、5~7年追跡して調査する。寿命、心筋梗塞などの心疾患、がん、認知症などの発症にどれだけ差が出るかを調べるという。」

メトホルミンはガンを抑制し抗酸化作用がある

メトホルミンがん予防の効果があるという研究も多数報告されている。糖尿病患者はがんの発症リスクが高いことが知られているインスリンおよびインスリン様成長因子が一部のがんを促進し、また2型糖尿病患者は診断される前に血液中のインスリンレベルが高い状態が何年も続いていることが多いからだ。

メトホルミンインスリン産生量を増大させないため、がんの成長を抑える可能性がある。また、がん抑制遺伝子を活性化する作用があり、血管にダメージを与える活性酸素が増えるのを防ぐ抗酸化作用もあると考えられている。

メトホルミンの作用機序

メトホルミンの特徴は、インスリン分泌促進作用はないが、それ以外の幅広い膵外作用を併せもつ薬剤という点だ。メトホルミン糖新生の抑制筋肉など末梢での糖利用の促進し、腸管からのグルコース吸収を抑制することで、血糖降下作用を示す。

メトホルミンの作用機序がわかってきたのは最近のことで、AMPキナーゼという酵素を活性化させることが明らかになっている。この酵素は肝臓におけるブドウ糖を合成する糖新生を促し、中性脂肪やコレステロールを合成する経路に関係して、生命活動に必要なエネルギーを作り出すATPを増加させる作用をもつ。肝臓のAMPキナーゼが活性化されると、脂肪がエネルギー源として燃焼されるのが促される。

メトホルミンの副作用

メトホルミンは長い歴史をもつ治療薬だが、1970年代にビグアナイド薬であるフェンホルミンによる乳酸アシドーシスが報告され問題となった。乳酸アシドーシスは、さまざまな原因によって血中に乳酸が蓄積し、血液が著しく酸性に傾いた状態

メトホルミン乳酸を増加させるが、乳酸は肝臓で代謝されるため、通常はバランスが保たれている。しかし、乳酸代謝、肝障害、腎機能障害などがあると乳酸値のバランスが崩れ、乳酸アシドーシスが発現する危険性が高まる。日本ではメトホルミンの高齢者への投与は慎重を要するとされている。

しかし1990年代になって、世界的にビグアナイド薬が見直され、メトホルミンを使った大規模臨床試験が欧米で実施された。メトホルミン服用者での乳酸アシドーシスの発生頻度は低いことが明らかになった。

メトホルミンは、これまで広く使用されてきた経口糖尿病薬であるSU剤と比較して、体重増加が認められずインスリン抵抗性を改善する効果があるなど、メリットが多い。

参考資料:「メトホルミン」が寿命を延ばす アンチエイジング効果を確かめる試験(2016年01月14日)糖尿病ネットワーク、著者:Terahata(日本医療・健康情報研究所

メトホルミンを服用している糖尿病患者のほうが健常者より寿命が延びる!?

メトホルミンのアンチエイジング効果で健常者より長生きしてしまうという結果が出ているとは驚きですね。

米国アルバート アインシュタイン医科大学のバルジライ教授が3,000人を対象に調査を行っているそうなので結果が楽しみです。

メトホルミンと線維筋痛症に関する書籍


 

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