BCGの接種国は新型コロナの感染率が低い? トルコは接種しているのになぜ感染者が多い?

ニュース/レビュー

BCGを接種している国は新型コロナの感染率が低く、重篤化も抑えられているのではないかという情報をまとめてみました。

BCGは100年近い歴史があるので、それをしっかり理解するには、日本に導入されたころのお話から記述するのがいいと思いましたので、すこし歴史的な事も加えてみました。

日本株のBCGが一番ラッキーか?

著者の母子手帳に記載されているBCG接種記録


上記は私の母子手帳に載っているBCGを接種した記録ですが、生まれてから毎年チェックして、ツベルクリン反応がポジティブになるまで繰り返し(毎年)接種されたようです。

そして今回ニュースになっているのは、BCGは本来結核菌に対するワクチンなのでウイルスを対象としていませんでしたが、感染の状況からどうやら新型ウイルスに対して抵抗力を作るかもしれないと推察されるようになり、日本やイラクで新型コロナに対する感染率が低いのは「日本株」のBCGを使っているからかも知れないとささやかれています。

そして先日、BCGが新型コロナによる感染や重篤化を防げるかを調べるために、オーストラリアが臨床試験を開始すると発表しました。

これは、日本、イラク、旧東ドイツなど、他の国に比べて重篤者が少ないことに気がついたことに起因しているようです。

BCGは国によって種類が違うようで、大きく分けると前期分与株、後期分与株に分類されているそうです。またスタンプ式と注射式の違いもあります。次にどの国がどんな株を使っているか見ていきましょう。

2種類のBCG株

BCGは、大きくは以下の二つに分類されています。

🔵 前期分与株
Tokyo172-1株(日本株)
ロシア株BCG-I株(ソ連株

🔵 後期分与株
デンマーク株 Danish 1331株(デンマーク株)
パスツール株

⭐️ 以下、ネットで接種株を調べましたが正しいか分からないので参考までに
ドイツは分裂時代、東と西でソ連株とデンマーク株で違っていました。

🔵 前期分与株(ハンコタイプ これらの国では感染者や死亡者が少ない
日本(日本株)
イラク(日本株
タイ(日本株
台湾(日本株
ロシア(ソ連株
旧東ドイツ(ソ連株

🔵 後期分与株(注射タイプ?)
中国(デンマーク株)※香港亜種?
※中国が日本型だとネットで言っている方もいます。
イラン(パスツール株)
旧西ドイツ(デンマーク株)
※EUの多くの国で強制ではありません。国によってツベルクリン反応による接種。

ドイツでは東ドイツ側では感染者が少ないが、西ドイツ側で多い結果となっています。

🔵 両方
韓国(どちらかを選択できる)

🔴 米国はBCGを基本的に接種してないので、感染者が多いのではないかと推測されている。

🔴 WHOはデンマーク型を推奨している。

引用:Bookservice.JP -Rinkaku-

虎ノ門ニュース、2020年4月1日、上念司さんからの情報

上念司さんのコメント:
錠年始日本で今増えている感染者数は、日本国籍を持っている人の数が人口比では考えられないほど少ない。
3分の1くらいが外国籍ではないかということで多すぎです。
これは人種によるものではなく、BCGではないかと。
BCGは打っても感染確率は変わりないです。重症化を防ぐのでは。
血液の抵抗力を活性化しているのではないか。

紹介されたニュース:
『トルコ 感染者1万人越「医療崩壊」懸念も』共同通信より
3月30に感染者数が合計10827人に増え、死者も168人に達している。
検査体制を強化したことも感染者が増えた一因

実はトルコはソ連株のBCGを打っていて、日本株とソ連株が効くらしいですが、トルコは接種率は高いです。
そのトルコでコロナが増え、BCG仮設崩れるか ??? ・・・と疑い調べて来ました。

上念司さんが作ったトルコのBCG摂取率のグラフ(出展:YouTube, https://youtu.be/)


ユニセフのデータから、トルコは1980年代、予防接種の接種率は50%以下でした。これが1989年くらいに100%近くなりました。

接種率が上がった理由は、JICA (ジャイカ, 国際協力機構)が1980年代に協力したからです。

森田さんのレポートによると、1980年代のトルコは日本の1940年代と同じで、予防接種もあるけど打ってなかったらしいです。トルコで年齢的に今40歳より上の人は予防接種受けてない人が多いです。
なので予防接種打ってない世代がこの(感染者の)1万人に多く含まれているかもしれません。そうだとすればBCG関連を裏付ける統計的な相関を見れると。(因果でなく相関です。)

ただでさえ高齢は感染リスクが高いのに、BCGしてないでよりリスクが高くなっているのが現状かと、このデータから言えると思います。

引用:【DHC】2020/4/1(水) 上念司×大高未貴×居島一平【虎ノ門ニュース】、37分18秒から始まります ↓


BCG日本株の誕生の歴史

BCGの効果をもっと詳しく知るために日本株のBCGができた歴史を振り返ってみたいと思います。

1924年に日本にやってきたBCGはすぐに日本人に摂取されたわけではない

前回の記事では北里柴三郎 大先生のすごい功績をたくさん列挙しましたが、今回も北里 大先生とつながりのあるBCG(結核用のワクチン)のお話です。

北里先生はアメリカやイギリスからの巨額のオファーを断って日本を守るために帰ってこられました。そして福沢諭吉先生と共に感染症の研究を日本でも始められるように新しい研究施設や医学部を創設していきました。

その中で結核用のワクチンであるBCGがヨーロッパから日本へ届けられましたが、それが実際に日本人に接種されるまでの最低約5年間はテスト&テストの連続で、どのように接種するのが一番副作用が少なくて日本人に効果的かがいろいろ試されたようです。

BCG日本株の誕生

BCG日本株はどうやって誕生したか?

志賀 潔(しがきよし)によって1924年にもたらされました。志賀潔は北里先生のお弟子さんで、彼が赤痢菌を発見するのを手助けしました。志賀は直接カルメット(Calmette; BCGのCは彼の頭文字からきている)から分与された菌株(日本株のもとになる株)を持ち帰ったのです。

その菌株は3ヵ所に分与され〔北里研究所の渡辺義政,東京帝国大学付属 伝染病研究所の佐藤秀三, 今村荒男, その後今村は東京帝国大学付属伝染病研究所から大阪医科大学(後の大阪帝国大学)に移動〕日本人に適したワクチン接種法が検討された。

日本に持ってこられた元株は、国立予防衛生研究所,その後を引き継いだ国立感染症研究所維持・保管することと定められていました。BCGの元株カルメットの原法に忠実に従ってウシ胆汁・馬鈴薯培地に継代培養して維持されていました。しかし,元株の継代培養を重ねることによって変異が起こる可能性があり,WHOの勧告もあって,国立予防衛生研究所での継代172代目の元株を用いて凍結乾燥菌をつくり,これをシード・ロットとするとことに決めたのです。
これがBCGの日本株(シード・ロット Tokyo172;BCG Tokyo172)の誕生です!

(参考資料:「BCGの歴史:過去の研究から何を学ぶべきか」2004年(PDF書類)

そして実際にBCGの集団接種が始まるのは、戦後の1949年頃からでその後ほとんどの日本人が予防接種を受け、ツベルクリン反応がプラス(陽性)になるまで(結核に対する抗体ができるまで)接種されるようになったのです。ただ最近は結核感染の危険が減ってきたためか、幼児期のBCG接種は1歳までに1回だけとなっているようです(ツベルクリン反応テストもしない)。

BCGの効果は十数年程度しかもちません。そのため、大人になってからBCGで結核の発病を予防する効果は期待できません。BCGは、現実的には、重症化を防ぐことが目的であるため、重症化しやすい乳幼児に対してこそ価値があるのです。〔参考:あおい小児科院内勉強会「今も現役!結核って何?」〕

新型コロナと結核の比較

新型コロナウイルスと結核菌(BCGのターゲット)の比較


新型コロナウイルス 結核
致死率 2.3% 発病した人の10%
潜伏期間 1〜12.5日 6ヵ月〜2年
患者1人から感染する人数 1.4〜2.5人
(エアロゾル感染, 飛沫感染, 接触感染)
(免疫細胞のマクロファージ内で繁殖できる。)
状態 パンデミック
(2020年初頭)
日本では毎年約18.000人が感染
遺伝形態
ゲノムの長さ
RNAウイルス
30k bases
結核菌
DNA 4.4Mbp
症状 発熱や咳 (初期)せき, 痰, 微熱(後期→)血の混じった痰, 喀血(血を吐くこと), 呼吸困難で死に至ることも
特記 高齢・併存疾患・がん患者は重症化するリスクが高い 発病するのは10人に1~2人, 免疫細胞のマクロファージ内で繁殖できる
参考資料
🔵 厚生労働省「新型コロナウイルスについて
🔵 あおい小児科院内勉強会「今も現役!結核って何?

BCGの効果が持続するように「生ワクチン」が使われる

上記で書いたように、志賀潔によってBCGは日本にもたらされましたが、それではなぜわざわざ人の手によってそれを持ってこなければならなかったのでしょうか。ワクチンを冷凍保存して配送業者に頼めば輸送費用を節約できるはずです。

実はBCGは生ワクチンではないと効果が出なかったからなのです。インフルエンザなどは不活性型ワクチンなどが使われますが、結核に関しては弱毒型の生ワクチンでなければ有効にならないからです。

日本でも死菌を用いたワクチンが試されましたが、全て無効でした。
ウィキペディアにも次のような記述があります。

_____________________________

弱毒生菌ワクチン(生ワクチン)には、他のタイプのワクチン(死菌ワクチンや成分ワクチン)とは異なり、
  1. 弱毒性の微生物が体内に定着しうる
  2. ウイルスや細胞内寄生体が実際に細胞内に感染を起こしうる
という特徴がある。このため、
  1. 効果が半永久的に持続する
  2. 死菌ワクチンでは誘導できない細胞性免疫(マクロファージや細胞傷害性T細胞などによる免疫。細胞内感染の排除に必要)が誘導可能である
という利点がある。結核菌は細胞内寄生体であり、特に活性化マクロファージによる細胞性免疫が感染防御に重要であることから、死菌ワクチンや成分ワクチンでは十分な免疫が得られないため、弱毒生菌ワクチンが必要である。

_________________ ウィキペディア「BCG > 結核予防効果」からの引用終わり

この半永久的に続く免疫系の活性化が、今回の新型コロナウイルス防御に一役買っているとするなら素晴らしいことです。

過去には膀胱がんの治療にもBCGが使われた例があり、免疫系を活性化させる作用が他の病気にも貢献することは以前から知られていた事実です。〔参考 :「抗体医薬」と「自然免疫」の驚異、岸本忠三・中島彰著、ブルーバックス(2009年)259ページ〕

ただし欠点もあって、「弱毒性の微生物が体内に定着する」ということですから、もしエイズなどの免疫不全になった場合、その「弱毒性の微生物」が増えて体に悪さをするというデメリットもあります。

Seigoの追記

現在、日本では毎年約18,000人が新たに結核を発症し、約10%の約1,800人が結核で命を落としているそうです(2017年)。

BCGを日本人全員に接種しているので(正確には全員ではないですが)、結核に対する抗体ができているはずですが、結核患者をゼロにすることには未だに成功していません(天然痘は撲滅できましたが)。人類が結核を抑え込もうと100年以上の長い戦いが続いているにも関わらず、まだ撲滅できていないということは、やはり結核というのは「手強い相手」であると言えるでしょう。

ただし普通の生活では結核という病気を忘れてしまうほどマイナーになったということは、BCGの素晴らしさをほめるべきでしょう。そして、今回発見された新型コロナに対する抵抗性は、人類の努力から生み出された「ケガの巧妙」とも言えるものなのかもしれません。(もちろんまだ、BCGが新型コロナに効果があると科学的に証明されたわけではありません。抑え込む傾向があるというだけです。)

BCGは水銀を含まないワクチンである

BCGを調べていてもう1つ素晴らしいなと思ったのは、BCGは水銀を含まないワクチンであるということです。

日本はBCG接種をするときに、注射タイプではなくハンコ型(9つの針が並んでいるタイプ)が使われる場合が多いですが、それには水銀(チメロサールなど)が入っていません。【参考資料:チメロサールを含む国有ワクチン(PDF書類)〕今ではインフルエンザワクチンにも水銀を使わないものが出てきており、自分で選べる事になっていると資料には書いてありました。こういうことを豆知識として知っておくと、後年の水銀による弊害を避けることができるかも知れません。

水銀は脳血管門を壊して脳に入りこみ、体内に蓄積すると言われているので、頻繁に接種が必要な場合は水銀なしのものを選びたいものです(米国のインフルエンザは水銀なしと謳っていても微量に含まれている場合があるので注意。水銀が規定量以下だと記述する必要がないという変な規則ができたため。)。その点、ハンコ型BCGははじめから水銀が入っていないので、それも安心材料の1つです。北里柴三郎 大先生のお弟子さんが日本人のためを思って作って下さったに違いありません。

北里柴三郎 大先生の日本に対する熱い想いが、約100年後に起こる新型コロナウイルスのパンデミックからも日本を防御する結果になったのでしょう!

北里柴三郎 先生、誠にどうもありがとうございました。そして遅くなりましたが、ヨーロッパから日本へまっすぐ帰ってきていただいて(大金持ちになるポジションを捨てて)、日本の感染症予防に尽力していただき誠に感謝致します m(_ _)m

そして次は今生きている日本人が、世界を引っ張って感染予防をしていかなくてはなりませんね。

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