降圧剤のACE阻害薬は初期治療に不向きで安全性に劣ることが判明!? (ランセット2019年論文)

ニュース/レビュー

よく使われるACE阻害薬など5つの血圧降下剤を使用した490万人規模の調査が行われ、その結果がランセットに報告されました。

これはコロンビア大やイェール大の共同研究チームが発表した論文で、プレスリリース(英文)がイェール大学のサイトに掲載されました。今回はそのレビュー記事を翻訳しましたのでご紹介します。(翻訳のプロではないので読みづらかったらすみません。

「すべての高血圧薬が同じに作られているわけではない」というビッグデータの研究

英文執筆者:Kendall Teare

非常に高い血圧の患者や高血圧症を持っている方はたくさんの薬が用意されています。そのためどれを使うべきかを知るのが難しいことが多々あります。さて、イエール大学共著のランセットの論文は、この重要な選択を決定するために、さまざまな高血圧薬の安全性と有効性に関する詳しい情報を提供しています。この研究は、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬初期治療に最適な選択肢ではない可能性を明らかにしています。

今までにない規模のLancet研究で、4ヵ国の9つの施設にあるデータベースから490万人の患者のデータをまとめました。研究者はそのデータから、よく使われるACE阻害薬を含む5種類の最初の選択肢となる高血圧薬の安全性と有効性を比較しました。彼らはこれらの薬剤が高血圧の3つの主な健康への影響(心臓発作、心不全、脳卒中)をどれだけ予防し、それぞれの薬が46の望ましくない副作用をどの程度引き起こしたかを見ました。

これは高血圧治療のより良い選択を患者さんに知らせることができるという考えを提供する、注目に値する大規模な色々な国に適用可能な研究です。」と、イェールの心臓病学者でランセット研究の著者のハーラン・クルムホルツ博士は言いました。「違いはサイズだけでなく、信頼できる結果を最適化する より進んだ方法です。」

ビッグデータは22,000の典型的な観察研究に必要なパターンを明らかにした、と研究者は言います。

重要な発見の1つは、チアジドまたはチアジド様利尿薬ACE阻害薬よりも心臓発作、心不全、および脳卒中の予防に優れ、ACE阻害薬よりも安全であることでした。

科学者たちによると、個々を考えると治療の安全性と有効性の違いは小さいように思えるかもしれませんが、規模が大きくなればなるほど顕著で​​す。研究者は、現在ACE阻害薬を使う240万人が代わりにチアジドまたはチアジド様利尿薬を使用していたら、3,100以上の主要な心血管系の問題を回避できたかもしれないと報告しています。

これらの薬は安く長い実績があることを考えると、この発見はACE阻害薬から治療を始めるという一般的な習慣を明らかに避けるようになるはずです。この発見は、高血圧の初期治療でACE阻害薬よりもチアジド系利尿薬を選択する人々をサポートするということです」とクルムホルツは結論付けています。

この論文は、Columbia Universityに基づく研究およびデータ共有の共同研究である、Observational Health Data Science and Informatics(OHDSI)ネットワークのメンバーによって共著されており、ネットワーク全体にわたるOHDSIの進行中の大規模エビデンス生成および評価の一部ですデータベース(LEGEND)プロジェクト。ビッグデータ分析を使用して、数億の患者記録に関する観察研究を実施します。

ーーー 翻訳ここまで ーーー


引用ニュース & 原著論文

🔵 英語ニュース:Not all hypertension drugs are created equal, reports big-data studyYale University)October 25, 2019

🔵 原著論文:
Comprehensive comparative effectiveness and safety of first-line antihypertensive drug classes: a systematic, multinational, large-scale analysis.The Lancet, 2019 )

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Seigoの追記

取り上げられている薬剤は全て対症療法ですね。

なぜ高血圧になっているかは理解しようとせず、ただ薬で血圧を下げることで対処する。お医者さんはこれで本当にいいと思っているのでしょうか?

上記レビューから読み取れる血圧降下剤のポイント
🔴 
血圧降下剤は3つの予防(心臓発作、心不全、脳卒中の予防)する代わりに、46の望ましくない副作用がある。

🔴 ACE阻害薬を使う240万人が代わりにチアジドまたはチアジド様利尿薬を使用していたら、3,100以上の主要な心血管系の問題を回避できたかもしれないと報告 → つまりACE阻害薬は3,100以上の主要な心血管系の問題を引き起こしたということ。

以前に懇意にしていた教授が高血圧のためACE阻害薬を飲んでいたのですが、その薬の意外なメリットとして心臓を保護する作用があることをお話しして下さいました。

> 「ACE阻害薬の新たな展開 その心保護作用」医薬ジャーナル社 (1992/01)【Amazon】

1つだけ意外なメリットがあったとしても、それ以上に何十の副作用があることはあまり語られません。結局、対症療法の薬を長期的にとっていれば副作用の方が後になって問題となります。

それよりもなぜ高血圧になったのか? 老人にとってはそれが必要だから上がっているという考え方はないのでしょうか? 体の末端の組織が血液を必要としていているので血を送ろうと血圧が上がっていた場合、もし薬剤で抑えてしまったら、後に悪いことになるのは目に見えています。服用後に集中力が落ちて車の運転がおろそかになったり、脳に血液があまり行かなくなりボケが加速したり、そちらのほうが恐いです。

原著論文であるランセットのサマリーの上記のレビューより詳しく書いてありましたので、それをふくめて下にまとめておきます。

🔴 よく利用される5つの降圧剤を比較:
– チアジドまたはチアジド様利尿薬
– アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)
– アンジオテンシン受容体遮断薬
– ジヒドロピリジンカルシウムチャネル遮断薬
– 非ジヒドロピリジンカルシウム

🔴 クラス間に有効性の違いは見つからなかった

🔴 チアジドまたはチアジド様利尿薬ACE阻害薬よりもよりも優れた初期有効性を示した

🔴 ジヒドロピリジンカルシウムチャネル遮断薬は、他の4つのクラスよりも著しく劣る


故・安保徹先生の降圧剤に対するご意見

脳梗塞を引き起こす降圧剤
高血圧が悪者になったのは、 脳出血 を起こすことからです。

 脳出血 血圧が高すぎて起こるガンバリ病です。脳の動脈の一部が破れて脳の中にあふれた血液が塊をつくり、周りの脳の組織を圧迫します。寒さと過酷な肉体労働が原因の病気でした。

ところが、昭和55年頃からは脳出血の人よりも脳梗塞の人が多くなり逆転しました。今は楽な世の中になり、塩分控えめの食生活降圧剤の使用お年寄りが介護施設で 脳梗塞 を起こす 脳梗塞時代 」になっています。

いまだに塩分のとり過ぎは高血圧から脳出血につながるイメージが抜けきれていません。塩分がないと血圧が下がり、体は冷えてしまいます。降圧剤を使うと、血圧が下がり過ぎて、脳の血流が停滞し、血栓が脳に詰まると 脳梗塞 、腎臓に詰まると 心筋梗塞 、肺に詰まると エコノミー症候群 になります。

降圧剤を飲まなければ 認知症 脳梗塞 も防げます。

引用資料:『安保徹のやさしい解体新書』実業之日本社、2014年、91ページより

また以前に安保徹先生の記事を書きましたのでそのリンクを貼っておきます。

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