天然にある細菌由来の抗生物質が地球に優しい農薬として使えることが判明! (2019年米国研究)

ニュース/レビュー

今回は改変した免疫細胞でがんの診断の新しい方法についての報告です。

スタンフォード大学のプレスリリースを翻訳しましたのでご紹介します。

ニュースタイトル「持続可能な未来のための有益な細菌の利用  」

カーディフ大学の研究によれば、ワーウィック大学とリバプール大学、およびウェルカムトラストサンガー研究所と共同で、有益な細菌株を再利用することによって、人工の化学農薬に代わる安全で持続可能な天然由来の代替段を得る可能性があります。

農業と食料生産を維持するための自然な手段を見出だすことは、世界的に大きな課題です。合成化学農薬は伝統的に作物を保護するために使用されてきましたが、それらの毒性とそれらが生態系にもたらす脅威についての懸念が高まっています。

ゲノム技術を使用して、この研究チームはバークホルデリア・アンビファリア細菌(Burkholderia ambifaria)が効果的で安全な生物農薬として使用される可能性があることを発見しました。

バークホルデリア目の細菌のコロニー(出典:Wikimedia Commons, CDC, Link )


バイオ農薬は自然の保護手段を提供し、バークホルデリアと呼ばれるバクテリアのグループは作物の病害防止を目的として成功裡に活用されてきました。しかし、1990年代、バークホルデリア菌は嚢胞性線維症(CF)患者の重篤な肺感染症と関連していたため、これらの農薬の安全性、挽いては最終的に市場からの撤退が懸念されるようになりました。

カーディフ大学のバイオサイエンス学部の研究者であるエシュウォーマヘンスィラリンガム(Eshwar Mahenthiralingam)教授は、「私は長年にわたり、主に肺炎球菌感染症に関し、バークホルデリアに取り組んできました」として、以下のように説明しています。

植物科学者、バイオサイエンス学部長のジムマーレイ(Jim Murray)教授、および博士課程トレーニングパートナーシップ学生のアレックスマリンズ(Alex Mullins)と協力して、バークホルデリアと植物の相互作用、および植物がどのように病害から保護されるかを調査しました。

「細菌のゲノムDNAをシークエンシングすることで、バークホルデリアの抗生物質産生遺伝子であるセパシン(Cepacin)を同定することができました。さらに試験したところ、セパシンはダンピングオフ(damping off)―すなわち真菌様生物による園芸病、に対し非常に効果的な防御となることを示ました。」

地球に優しい農業(出典イメージ:Sasin TipchaiによるPixabayからの画像)


生ワクチンの製造に使用されているのと同様の遺伝子操作技術を使用して、研究者たちはまた細菌の安全性を改善する方法をも模索しています。

マヘンスィラリンガム教授は、「バークホルデリアはゲノムDNAを、レプリコン(replicons)と呼ばれる3つの断片に分割しています」として、「我々は、これら3つのレプリコンのうち最小のものを除去して、発芽エンドウで試験した際には依然として優れた生物農薬特性を示していた変異型バークホルデリア株を作製しました」と述べています。

さらなる研究から、このバークホルデリア変異体は、マウス肺感染症モデルにおいて持続せず、感染を引き起こすことなく、依然として有効な植物保護を提供し得る生物農薬株を構築する可能性を開くものであると判明しました。

この研究チームは、セパシンの発見に協力したワーウィック大学の化学者達グレッグチャリス、(Greg Challis)教授とマシュージェンナー(Matthew Jenner)博士との提携によって、BBSRCから最近100万ポンド以上の助成金を獲得しました。これは、環境中の有害なレベルまで蓄積しない有効で安全なバイオ農薬を開発するための研究を次の段階に進めるための助けとなるでしょう。

BBSRC: 非医療バイオサイエンスの英国最大の公的資金提供者(出典:Wikipedia)


マヘンスィラリンガム教授は、「自然に植物と共に進化してきたバークホルデリアなどの有益な細菌は、地球に優しい将来に果たす重要な役割を担っています。リスクを理解し、リスクを軽減し、すべてに役立つバランスを模索する必要があります」として、

「私たちの仕事を通じて、私たちは、農業と食料生産をより安全で、より地球に優しく、そして毒性のないものにするという究極の目的で、バークホルデリアを効果的なバイオ農薬として実行可能にすることを望んでいます。」と述べています。

以上の研究はタイトル「ゲノムマイニングはセパシンを生物殺虫性細菌バークホルデリア・アンビファリアの植物保護代謝産物として同定する」(’Genome mining identifies cepacin as a plantprotective metabolite of the biopesticidal bacterium Burkholderia ambifaria’)としてネイチャー・マイクロバイオロジー(Nature Microbiology)誌に掲載されています(以下にリンクあり)。

引用ニュース & 原著論文

🔵 英語ニュース:Harnessing beneficial bacteria for a sustainable future(  Cardiff University )

🔵 原著論文 : Genome mining identifies cepacin as a plantprotective metabolite of the biopesticidal bacterium Burkholderia ambifaria ( Nature Microbiology (2019))

 

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