アツルハイマーではなかった!低血糖による認知症とその見分け方

テレビ速報

『名医とつながる!たけしの家庭の医学』のセカンドオピニオンコーナーではアルツハイマー型認知症だと誤診断を受けてたいへん苦労した2軒のご家族のご経験が、2018年(6月26日)と2019年(1月22日)の2回にわけて紹介されていました。

これは実は血液中の糖度が減ってしまって起きている脳のエラー症状だったので、血糖値を上げればボケや幻覚はなくなることが分かったのです。

今回はこの2回分の放送内容をまとめました。またどうやったら見分けられるかを(アルツハイマーではなく低血糖症)ご紹介させていただきます。

たけしの家庭の医学:2018年6月26日放送分 

認知症の主な症状

① 物忘れ

② ぼんやりして反応が鈍い

③ 時折 怒り出す

④ 徘徊

どれも認知症によくある症状でした。

しかし認知症の母親をもつ家族は、食後になると母親の意識がしっかりしておりしてしゃべることができ、自分が置かれている状況を認識できていました(徘徊したりして家族に迷惑をかけていることなど)。

家族は母親の様子を見て「これはアルツハイマー病ではないのではないか」と考えるようになりインターネットや雑誌、知人からも情報をかき集め良いと言われた病院を訪ね歩き診察を受けました。

しかし診断結果はいつも「アルツハイマー型認知症」でした。

ドクターショッピングを続けること3ヵ月後ついに、執念が運命の出会いを生むことになります

大石先生の知り合いのドクターに巡り会えたのです。

そしてついに大石先生のい鹿児島大学病院へ・・・


代表的な認知症でないことを見抜いた大石先生の診断

大石充 先生(鹿児島大学病院 副病院長)老年医学のスペシャリスト


認知症の3大病からチェック

《1》アルツハイマー型認知症(脳にアミロイドβなどが沈着して起こる)

   足元のふらつき 患者さんにこの症状はなかった

《2》脳血管性認知症(脳の血管が詰まることで起こる)

   歩き方が「小刻みな足運び」→ 患者さんにこの症状はなかった

《3》レビー小体型認知症(脳にレビー小体が沈着して起こる)

🔵 患者さんとの問診では、記憶力が確かに落ちていることを確認(タクシーで来たのにバスできたと言ったため)

🔵 認知機能テストの結果は、基準点23点を下回る17点だった(これまで他の病院でしたテストと同じ結果)


問題のなかったもの

🔵 脳のMRI検査では脳の萎縮は年齢相応で、認知機能低下の原因になるほどではなかった。
🔵 血管そのものも異常がなかった
🔵 レビー小体型認知症の可能性もなくなった(よって飢えで予測された3つの認知症はどれも否定された)

ところが午前11時半になって待合室で患者さんが大声で周りの人に当たり散らしていた。

ここで大石先生は「いつも決まった時間」に患者さんが問題を起こすことを知ります。

診察室に戻って大石先生はある1点を質問しました。

大石先生「必要のないものをたくさん買ってきてしまったんでしたね。買い物に行ったのは何時頃ですか?」

家族「それは夕方4時くらいです」


症状が特に悪化する時間

  • 徘徊する時間:午前11時頃や夕飯前
  • ボーッとしている時間:朝起きたとき

大石先生はすべて食事の前に問題が起きていることに気づき、血液検査で血糖値が基準値内だが低めであることを確認しました。

そして特別な血液検査をして、血糖をコントロールしているホルモンの異常が原因で低血糖状態に陥っていることをつきとめたのです


病名:低血糖による認知症

 治療法 
血糖値を上げれば治るので「血糖値を上げるホルモンをだす薬」を服用し、認知症の症状が解消した。


たけしの家庭の医学:2019年1月24日放送分

症状の時系列

(以下は症例ドラマで放送された通りに記述されております。症状が現れた順番です。)

86歳の男性の最初の症状は水道水を閉め忘れ、トイレを流してない+電気をつけっぱなしなどの、やり忘れから始まりました。〔今までの習慣ではできていたことがを忘れてしまう〕

次に事件が起きました。玄関で転倒し腰を痛め、激痛のため立てなくなり娘に電話して救援を求めなければならなかった。病院へ行くと背骨を骨折していて全治3ヵ月でした。

奇しくもこの入院が86歳の男性の異変を明らかなものにしたのです。
その入院中に医者から認知症の疑いがあることを伝えられる。それは夜に徘徊して自分の病室がわからなったことがあっり、薬の飲む量を間違えて一度に全部飲んでしまったことがあったからでした。

脳の検査の結果

🔵 MRI画像からアルツハイマー型認知症の初期の状態の疑いがあると医者から告げられる
🔵 症状の悪化をゆるやかにする薬があると言われ飲み始めることに

ファーストオピニオン(最初の病名):アルツハイマー型認知症

診断後の生活の制限:
– 一人で実家に暮らすことはできない(男性の妻はなくなっている)
– 車の運転も無理
– 好きだった温泉も転倒の危険が高いので無理
娘(54歳)と一緒にマンションで二人暮らしとなる

しかし、薬を飲み始めたが、水道を閉め忘れるなどの物忘れは治りませんでした。
また、前よりボーッとしている時間が増え、理解不能な行動をとることが多くなるばかり(電気を意味もなくつけたり消したりする)。

<半年後>
– 夏のある日、体が冷えてひどく寒がった。
– 便通が悪くなりお腹が痛いと騒ぐことも。

2回目の医師の診断

🔵 血液検査を行ったところ甲状腺の機能低下が認められた

甲状腺の機能が悪くなると新陳代謝が鈍り、寒さを感じる冷え性便秘症を発症することが多いです。
さらに症状が悪化すると脳で糖分が取り込めなくなり、エネルギー不足の状態に。
その結果、認知機能が低下しひどい物忘れの症状が出ることもあるのです。

 甲状腺機能低下で起こりえる認知の低下のメカニズム 
脳で糖分を取り込めない ➡️ エネルギー不足 ➡️ 認知機能の低下

 2回目の診断後の服薬 
① アルツハイマー型認知症の進行を抑える薬
② 甲状腺の機能を回復する薬


さらに悪化する症状

2種類の薬を服用し始めた男性の症状はさらに悪化してしまいます。
♦️ 壁を指さして「誰かがのぞいている」と言い出す
♦️ 猛烈な肩の痛みをうったえる → 娘に向かって「お前が刀で俺の肩を叩き切ったからだ」と叫ぶ(娘さんはしてもいないことを父に否定しても聞き入れてもらえないので、担当医に相談したところ「否定はしないで下さい」と言われた。「そうだね」って言って受け入れて下さいと)

何があってもどんな事でも受け入れなくてはならない。
他に選択肢はなく娘は父の言動に翻弄され続けた。

➡️ アルツハイマーの薬も甲状腺の薬も全く効果なし

父の症状とさらい戦い続ける

♦️ 押し入れの布団に向かって「お前は誰だ。答えろ!」と叫ぶ
♦️ 【決定的な出来事・徘徊】突如家からいなくなりどこにも見つからず、警察に捜索を依頼。娘さんが父を見つけた場所はマンションから電車で40分離れた男性の自宅でした。(玄関の前に立ちすくんでいた)

心労がピークに達した娘さんは1ヵ月で体重が8kgも減ってしまった。この絶望的な状況をなんとか変えなければ二人ともダメになってしまう。


一縷(いちる)の望みを託すかのように娘さんは多くのお医者さん尋ねる

– アルツハイマーや甲状腺の病以外になにか原因があるのではないか。
– 特にアルツハイマー以外の認知症「脳血管性認知症」や「レビー小体型認知症」ではないかを調べた。

医師たちの診断

結果:アルツハイマー以外の特別な異変は見つかりません。

老年内科:認知症以外の病を疑い訪れた
→ 新しい病気は見つからず

心療内科:うつ症状と認知機能の関係も調べてもらった
→ 新しい病気は見つからず

<病を発症してから1年半後>
福岡大学病院・物忘れ外来

医師の診断「甲状腺の数値は回復していますし、やはりアルツハイマー型認知症の可能性が高いと思います。」
「しかし小野さんの場合、症状の進行が通常より早すぎる気がします。」
「認知症は脳以外の病が原因で起きることもあるのですが、そうした病に詳しい内分泌内科の先生をご紹介します。」

名医のセカンドオピニオン:柳瀬先生

柳瀬敏彦 先生(福岡大学病院、内分泌・糖尿病内科 教授)

柳瀬先生の真骨頂:身体診察
(体を触ることによって患者も気づいていないような異常を見つける)

➡️ 少し押しただけで複数の関節に痛みを感じていることを発見 ➡️ これはアルツハイマーの症状ではない

➡️ 男性は座っていてもつらそうな顔をしているので尋ねてみると、1年前から体がだるさをうったえていたという

さらに先生は男性はイスに座っている時そわそわしているように見えたので、どんなときにイライラするか尋ねてみると、娘さんは「午前中に不機嫌になることが多い」と告げました。

➡️ 柳瀬先生はここからイライラするのは甲状腺の薬を飲んだ後であることを突き止めた

 名医の視点 
・認知機能が低下し関節痛がある
・強いだるさがある
・甲状腺の薬を飲むといらだる

 そして特殊な血液検査を行いました。

名医の診断

柳瀬先生「認知症は適切な治療で治る可能性がありますよ。新の原因は副腎という臓器(腎臓の上にある)に隠されていたんです。」
病名:副腎機能低下症
副腎の機能が低下すると、①血圧が上がらず【低血圧】、②血糖も上がらない【低血糖】ので、全身にひどいだるさを引き起こすことになります。

副腎の機能
① 血圧や血糖値をコントロールする
② 体の中で怒る炎症を抑えるホルモンを分泌する


副腎の機能低下で起こる認知症のメカニズム

副腎の機能低下で・・・
①低血圧・②低血糖 ➡️ 脳内の血流が低下 ➡️ 認知機能の低下・精神状態が不安定に


副腎の機能低下で起こる関節痛のメカニズム

副腎の機能低下で・・・
ホルモンが不足 ➡️ 炎症が起きやすい関節に痛みが出る


甲状腺の薬で異常が悪化するメカニズム

実は甲状腺の機能が活発になると負担がかかってしまう臓器が「副腎」だったのです。

午前中に甲状腺の薬を飲む ➡️ 機能が落ちていた副腎に負担が増幅 ➡️ 午前中だけ症状が異常に悪化

⭐️ ⭐️ ⭐️

柳瀬先生の診断後の服薬
① アルツハイマー型認知症の進行を抑える薬
② 甲状腺の機能を回復する薬
③ 副腎の機能を上げる薬

➡️ 男性の症状は劇的に改善!

すきなカラオケも楽しめるようになり、穏やかでやさしい性格を取り戻すことができたのです。

治る認知症の見分け方

上記の2つの例で共通していることは、どちらも決まった時間に症状が出るということです。

どちらも本当の原因は、血糖値が下がったことによって異常が出ていました。

上記の例で異なっているところは、最初の例では血糖値を上げる機能がダメになっていたので「血糖値を上げる薬」を処方していましたが、2番目の例は「副腎の機能を上げる薬」を処方していました。

治療するターゲットが違うので薬も違いますが、異常行動を治すポイントになっているところは「血糖値を上げる」というところは同じです。

ドラマで映し出された認知機能の低下による異常行動はすさまじいものがありましたが、これがアルツハイマーの薬だけでは治らないとなると家族はたいへんなことになるという強烈な例で、とても勉強になりました。

薬が聞かなければ一家共倒れになる危険性がり、これが高齢化社会でどの家族にも起こりえることだとなると大問題です。

ぜひこれらの知識を知って、早く解決できれば良いですね。

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