放射線療法後の腸のダメージは腸内フローラの種類によって軽減する!? (2019最新論文)

ニュース/レビュー

ついに腸内フローラの質の違いが放射線照射後の組織の回復の度合いまでも決めていることが分かりました。

この研究はロンドンのインペリアルカレッジが発表し、プレスリリース(英文)も公表されましたので、それを翻訳してご紹介します。(翻訳のプロではないので読みづらかったらすみません。

また発表された論文はオープンアクセスですので、どなたも無料で全文が閲覧できます。リンクを以下のレビュー記事の後に貼っておきます。
→ 最近はGoogle翻訳の性能が良くなってスムーズな日本語に翻訳してくれるようになってきました。(時々変ですが)ご活用下さい。(Google翻訳のページはこちら

腸内細菌の「指紋」は放射線療法の副作用を予測する

英文執筆者:Kate Wighton

腸内細菌の種類と放射線療法によって誘発される腸の損傷との関連を示す初の臨床研究が実施されました。

腸内細菌の混合物の「指紋」をとることで前立腺がんと婦人科がんの放射線療法の結果、一人一人のがん患者がどのように腸の損傷を受けやすいかがわかると新しい研究は示しています。

研究者らは腸内細菌の多様性が失われてくる種類が減ることと、放射線療法後に腸が受ける損傷(直後や遅延性の損傷も含めて両方)のリスク増加と関連していることを示しました。

放射線療法の前に腸の副作用のリスクが高い患者を特定できた場合、損傷を治療または予防するための腸内フローラ(便微生物)移植などの処置を行うことができます。

調査方法

ロンドンがん研究所とロンドンのインペリアルカレッジのチームは、ロイヤルマースデンNHS財団トラストの患者134人に対し、前立腺および骨盤リンパ節に対する放射線療法の前後のさまざまな段階での細菌「指紋」便サンプルを調査しました。

Clinical Cancer Researchに発表されたこの研究は、放射線療法後に腸の損傷を受けた患者とそうでない患者とで、腸内細菌の組成に違いがあるかどうかを確認することを目的としました。

この研究はロイヤルマースデンNHS財団トラストのNIHR生物医学研究センターとがん研究所(ICR)、NIHR帝国生物医学研究センター(統合システム医学および消化器疾患部門の資金提供)およびCalouste Gulbenkian財団によって資金提供されました。

善玉菌

腸内フローラには人体で最も多くの「善玉菌」が含まれており、食物の消化と消化器系の健康維持に重要な役割を果たしています。人はそれぞれ「指紋」のように、固有の細菌組成からなる腸内フローラを有しています。

調査結果

骨盤放射線療法後の患者約80%が排便習慣の変化を報告しており、10~25%の患者に生活の質を損なう重大な長期的な損傷を与えていることから、腸内フローラが放射線療法に対する反応に影響を与えるかどうかを評価する研究が行われました。

腸の損傷は、しばしば 出血 下痢 腹痛 吐き気 、そして 体重減少 につながる可能性があり、早期(放射線療法中または放射線療法直後)または遅く(約3ヵ月後)に発生する可能性があります。

研究者らは、腸の損傷のリスクが高い患者は、放射線療法後にそうした影響が見られない患者に比べ、3種類の細菌のレベルが30~50%高く腸内フローラの全体的な多様性が低いことを発見しました。

これは腸内フローラの多様性が低く、クロストリジウムIVローズブリア、そしてファスコラルクトバクテリウム高い比率で持つ患者は、腸の損傷を受けやすいことを示唆しています。

クロストリジウム菌の量が多い患者は、放射線療法による腸損傷のリスクが高い〔クロストリジウム菌の一種の画像(Clostridium botulinum)(画像の出典:Wikimedia Commons, by Content Providers: CDC, Link) 〕

長続きする効果

研究者らはまた、これらの患者は健康な腸を維持するためにより多くの「善玉菌」を必要とする可能性があり、また放射線によって「善玉菌」が死滅すると副作用を受けやすくなると考えています。

この新しい研究は、人々における腸内フローラの保護効果を探求し、放射線療法の晩期障害予防する最初の研究です。次の段階は、リスクの高い腸内フローラを持つ人々の腸の損傷の治療または予防が、腸内フローラ移植を行ったり照射放射線量を調節することで可能かどうかを検討することです。

ロンドンがん研究所の泌尿器腫瘍学教授であり、ロイヤルマースデンNHS財団トラストのコンサルタント臨床腫瘍医であるDavid Dearnaley教授は、次のように述べています。

「前立腺と骨盤リンパ節に対する放射線療法はがんを処置する重要な方法ですが、腸に損傷を与えたり、患者に不快な副作用をもたらしたりする可能性があります。これは多くの場合、長期間持続し非常に深刻なものになり得ます。私たちの研究は、放射線療法による胃腸の副作用を受けやすい患者に、腸内細菌が重要な影響を与えることを示す最初の研究です。善玉菌の役割を確認するためにさらに研究を行う必要がありますが、腸の損傷のリスクが最も高い患者を特定できる場合は、放射線の副作用を制御、治療、または予防するために介入することができます。たとえば、腸内フローラ移植などの細菌治療が損傷を軽減することがわかった場合、患者の生活の質を大幅に改善することができます」

よりスマートな処置

ロンドンのがん研究所の最高責任者であるポール・ワークマン (Paul Workman)教授は、次のように述べています。

「放射線療法は、先進的で非常に効果的ながんの処理法であり、がんの治療にしばしば重要な役割を果たします。放射線療法をさらに効果的に使用するための最大の障壁の1つは、療法による副作用です。このため放射線療法後の生活の質の改善を目的としたこのような研究は非常に重要です。腸内細菌のバランスが、患者が有害な副作用を経験するかどうかに影響することがわかったので、腸内フローラまたは放射線量を変更することにより、放射線療法をより洗練された優しい方法を探ることができます。」

ーーー 翻訳ここまで ーーー


引用ニュース & 原著論文

🔵 英語ニュース:Gut bacteria ‘fingerprint’ predicts radiotherapy side effects ()02 October 2019

🔵 原著論文(オープンアクセス:全文が無料でご覧になれます): Microbiota- and Radiotherapy-Induced Gastrointestinal Side-Effects (MARS) Study: A Large Pilot Study of the Microbiome in Acute and Late-Radiation Enteropathy.Clinical Cancer Research, 2019 )
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(放射線療法による腸損傷リスクが高くなるとされる)クロストリジウム属に関する書籍

Seigoの追記

これまで腸に近いところ(前立腺骨盤リンパ節)に放射線療法をした後に、放射線障害が腸に生じてしまうことがあり、急性の場合を急性放射線腸症、遅れて発生する場合を後期放射線腸症と呼ばれます。

そしてもしその副作用(腸の損傷など)がひどい場合には放射線療法が継続できない自体になるそうです。

放射線療法の後に生じる腸の損傷

腸の損傷とは、 出血 下痢 腹痛 吐き気 、そして 体重減少 などが起こるとされています。

今回の研究では、この放射線腸症がひどくなる人は実は次のような菌(悪玉菌)が(腸内フローラの比率として)多い場合に発生する確率が高くなることが分かりました。
放射線腸症を発生させやすくする3種の腸内細菌

🔴 クロストリジウムIV(Clostridium IV
🔴 ローズブリア(Roseburia)
🔴 ファスコラルクトバクテリウム(Phascolarctobacterium)

放射線腸症を悪くさせるという意味では「悪玉菌」となるので、腸内フローラー移植で回復・治療をするには、これらの悪玉菌を少なくし善玉菌を増加させるような比率で腸内フローラ移植ができれば、放射線療法後の放射線腸症を軽減できる可能性がでてたわけです。今後の研究の進展に期待しましょう。

クロストリジウム属の菌とは?

記事中にクロストリジウム属の画像を載せましたが、細長い形態をしていて、この菌の比率が多かった患者さんは、放射線療法後に腸損傷が起きやすいという結果が出ました。

クロストリジウム属はこれまでの当サイトの過去記事でも登場していますが、「うつを悪化させる悪玉菌」として論文を紹介しました。〔2019.08.20の記事

またクロストリジウム属でもクロストリジウム・クラスターXIVa (酪酸産生菌)を多く持つ人々が京都市京丹後に住んでおり、この方たちは(逆に)100歳を超える方がたくさん暮らしている健康的な長寿の街でした。〔2019.11.20の記事

クロストリジウム属の菌は、これからもこのサイトで注目していきます!

腸内細菌クロストリジウム菌が登場する当サイトの過去記事



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