人の腸内細菌に6000種以上の抗生物質耐性遺伝子が発見される!? (2018年最新研究)

ニュース/レビュー

バーミンガム大のWillem van Schaik教授とフランスのINRA(Institut National de la Recherche Agronomique)研究所のチームによる研究(英文のニュースを翻訳しました)

人の腸に住む菌に6000種以上の抗生物質耐性遺伝子を発見(バーミンガム大学, 2018年11月30日)

人の腸には何兆個もの微生物、主にバクテリアが住んでます。
ほとんどが抗生物質に弱いのですが、かなりの数が抗生物質への耐性機構を持っています。
しかし腸内細菌の抗生物質耐性に関する遺伝子のメカニズムへの理解はまだほとんど分かっていません。

研究チームはバクテリアが作る既知の抗生物質耐性酵素の3次元構造を比べることによって耐性遺伝子を特定する新しい方法を開発しました。

この方法で数百万の腸の遺伝子から、病原菌の遺伝子とは大変異なった6,000以上の抗生物質耐性遺伝子を同定しました。

Willem van Schaik教授は「ほとんどの腸内細菌はヒトとは無害な関係にあります。しかし腸には感染を引き起こす可能性のある細菌も住んでいます。

残念ながらこれらの細菌はますます抗生物質耐性になっているので、より理解が必要です。

すでに知られた抗生物質耐性タンパク質の構造を腸内細菌によって作られるタンパク質と比較することにより、腸内には何千もの新しい抗生物質耐性遺伝子が見出され、この環境下で抗生物質耐性遺伝子の計り知れない多様性が際立っています。

これらの遺伝子の多くはヒトと無害な関係にある細菌にあったため、ヒトの健康にとって脅威とはならないかもしれません。

しかし、抗生物質をずっと使い続けることでこれらの耐性遺伝子が病原菌に移行して、感染症の治療に使っている抗生物質の効き目を低下させる可能性があります。

引用(英文):Study discovers over 6,000 antibiotic resistance genes in the bacteria that inhabit the human gut (University of Birmingham, 2018)

Seigoの追記

腸内の細菌たちが抗生物質に対する耐性遺伝子を6000以上も持っていたとは驚きです。
天然由来の抗生物質が5000~6000種あると1990年ごろから言われていたそうですが。

抗生物質(こうせいぶっしつ)は「ペニシリン」や「テトラサイクリン」など約100種類くらいありますが、風邪がひどくなるとお医者さんから渡されるおきまりのクスリでした。しかしインフルエンザの場合、抗生物質はウイルスには効かないので最近は抗生物質は風邪の薬にならないという認識が広まってきました。

私も抗生物質を飲んで腸内細菌が死んでしまうのではないかと心配してましたが、腸内細菌ちゃんは抗生物質に対抗する遺伝子をちゃんと持っていたという嬉しい研究発表でした(アンピシリンなどの現代の抗生物質に耐性がある遺伝子が見つかったとはこの論文では言っていませんが)。

そういえば風邪を引いた時に抗生物質を飲んでも腸内の細菌が全部死んでしまわなかったのは、この耐性遺伝子をたくさん持っていたためなのかも知れませんね。

この研究で警告していること

それではこの研究では何を私たちに警告しているかと言いますと、それはこの英文のニュースの最後の段落に書かれていますので、そのピックアップしてみましょう。

英文引用:
“However, the continuing use of antibiotics may lead to these resistance genes being transferred to pathogenic bacteria, thereby further reducing the effectiveness of antibiotics in treating infections.”
                     ■ ■
(Google翻訳)
しかし、抗生物質の継続使用は、これらの耐性遺伝子が病原性細菌に移行し、それによって感染症の治療における抗生物質の有効性をさらに低下させる可能性があります。

つまり私たちの腸内細菌ちゃんが持っている素晴らしい抗生物質に対する耐性遺伝子(約6000種類)が体の外からやってくる病原性細菌に移行(遺伝子が細菌から細菌へ移る?)することによって、病院で使う抗生物質が効かなくなることを心配しているのです。

腸内細菌にたくさんの抗生物質に対する耐性遺伝子が見つかったことによって、現在の病院で続けられている(特に日本)抗生物質の乱用が、私たちの腸内細菌からその遺伝子を病原性細菌が取り込むことによって、さらに最強な病原性細菌を作り出してしまう危険性が高いことを警告しているのです。

 

関連記事一覧

  1. この記事へのコメントはありません。