ある腸内細菌が増えるとうつ病傾向になることが判明! 将来の診断・治療に期待

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執筆日:2019年4月25日、更新日:2021年4月16日

農薬電磁波(5G)、そしてコロナによるストレスなどなどうつ病になる要因が増えてきております。このサイトにすでに紹介されたうつ病の大切な論文の復刻版を掲載します。

ーーー 2019年4月25日の記事より ーーー

今回は新しい腸内細菌とうつの関連性についての報告です。

米国アルゴンヌ国立研究所のプレスリリースを翻訳しましたのでご紹介します。

ニュースタイトル「新しく単離されたヒト腸内細菌はうつ病との関連の可能性を明らかにする」

研究チームは、NIHが「最も(培養に成功して)欲しい」(腸内)細菌と、メンタルヘルスとの有力な関連性を研究しています。

研究者たちは、うつ病とヒトの腸内の神経伝達物質産生細菌のグループとの間の相関関係を見出しました。

米国エネルギー省(DOE)のアルゴンヌ国立研究所やノースイースタン大学などの研究チームは、今回単離された細菌KLE1738の、ガンマアミノ酪酸GABA)と呼ばれる脳内化学物質に対する驚くべき依存性を発見しました。

By Jynto (talk) – 投稿者自身による作品この 画像Discovery Studio Visualizerで作成されました., CC0, Link

GABA (γ-アミノ酪酸)〔出典:Wikimedia Commons, By Jynto (talk) – 投稿者自身による作品この 画像Discovery Studio Visualizerで作成されました., CC0, Link 〕

カリフォルニア大学サンディエゴ校の小児科学科およびScripps 海洋学研究所の教員でもある、アルゴンヌの微生物生態学のグループリーダーJack Gilbertは、「メンタルヘルスと微生物GABA代謝との関係は非常に密接です」と述べています。

「細菌叢(腸内フローラ)のGABAの産生能・消費能の一般を広く研究したものはなく、GABAに依存する細菌はこれまで報告がありません」

Gilbertと18人の共著者は、2018年12月10日にNature Microbiologyにこの成果を発表しました。

この記事の主執筆者でノースイースト大学の抗菌検出センターのポスドク研究員であるPhilip Strandwitzは、次のように述べています。 「ユニークな栄養要求性のため、KLE1738の生育について研究した人はいませんでした」
彼らはKLE1738にEvtepia gabavorousという学名を命名し、今後の研究でより詳細な性状を明らかにする予定です。

KLE1738は以前に、国立衛生研究所(NIH)の「最も求められているリスト」に載っていました。つまりヒトの腸内で比較的目立っていたにもかかわらず、まだ培養されていなかったのです(培養がうまくいかないので)。この細菌は「統合微生物次世代シークエンスデータベース」で利用可能なヒト腸内細菌叢データのおよそ2割で検出されています。

腸内細菌叢で見つかる微生物全体は、免疫応答と神経系を含む多くの重要な機能に影響を与えます。しかしながら、人間の腸内に存在する多くの微生物は培養されておらず、研究チームはその状態を、「細菌叢の生物学的役割を理解するための障害」とNature Microbiologyの論文中で表現しています。

そうした細菌の多くは恐らく細菌叢中で供給される因子を必要としていて、研究室での人工的な培養環境ではその供給が難しいために、培養が困難な状況にあります。大規模なスクリーニングプロセスの結果、チームはKLE1738の生育には一般的なヒト腸内細菌であるBacteroides fragilis (バクテロイデス・フラジリス; 細菌叢を形成するグラム陰性桿菌) の存在が必要であることを発見しました。

さらなる生物学的試験および精製により、Bacteroides fragilisによって産生される増殖因子GABAであることが明らかになりました。GABAは実際、テストされた栄養素のうち唯一KLE1738の生育を助長するものでした。

科学者たちはこのペトリ皿にKLE1738と人間の便からのバクテリアをまいた。 KLE1738は、哺乳動物の中枢神経系に見られる抑制性神経伝達物質であるγ-アミノ酪酸(GABA)に依存しています。 KLE1738の成長を支えるコロニーはすべてGABA生産者です。 このプレートの多くのコロニーがGABAを産生しています。 (画像提供:Philip Strandwitz /ノースイースタン大学;プレスリリース


 

次の研究段階で、チームはBacteroides属とうつ病の関連性を調べました。臨床的に診断されたうつ病患者23人の被験者から、便および脳活動の機能的MRIの結果を収集しました。
糞便中のBacteroides属の相対量と、うつ病時の活動上昇に関連する部分の脳活動との間に、逆相関性が見出されました。すなわち、Bacteroides 属が少ないと該当部分の脳活動が高く、多ければ脳活動は低かったのです。

うつのイメージ(出典:Enrique MeseguerによるPixabayからの画像)


 

Strandwitz氏はさらなる研究について述べています。
「既に進めていますが、更なるコホート研究によってこの結果が繰り返し見出されることが、次の大切な一歩です。うつ病研究は動物モデルで行うのは難しいため、ヒトでの研究が重要になります」

Science Cell 誌に発表された最近の研究では、脳と深く関連する腸の感覚神経の存在が明らかにされています。
「GABAがこの経路を通じて、伝達物質として機能しているかどうかは、重要な研究課題になります」とNature Microbiologyの記事の共著者でアルゴンヌのポスドク研究者であるAnukriti Sharma氏は述べています。

Strandwitz氏と、Northeasternの著名な大学教授のKim Lewis氏は、神経系の疾患を標的とする腸内細菌叢ベースの治療法を開発するために、バイオテクノロジー企業Holobiomeを設立しました。Gilbert氏は同社の科学諮問委員会のメンバーです。
しかしながらうつ病を患っている人々のための治療法の開発には、さらなる研究が必要になるでしょう。

Strandwitz氏は次のように述べています。
「まずは、細菌のGABA産生とうつ病との関連の検証が、解明されるべき重要な課題です。関連が確実なものとなれば、次に治療に必要な細菌の活性化や、何らかの介入のための適切な手段を確立することが必要です」

引用ニュース & 原著論文

🔵 英語ニュース:Newly isolated human gut bacterium reveals possible connection to depressionArgonne National Laboratory)2019.2.13

🔵 引用原著論文 :GABA-modulating bacteria of the human gut microbiota (Nature Microbiology vol.4, pages396–403 (2019))

Seigoの追記

ヒトの腸内細菌は培養が難しく、増やせないものが23〜65%もあるそうですが(論文のアブストラクトより)、お仲間と一緒じゃないとダメな子もいるんですねー

KLE1738の培養にはバクテロイデス属の菌(Bacteroides fragilisが産生するGABAが必要だったとのことです。

ただバクテロイデス属が多ければすべていいというわけでもなく、それが多い方はうつ傾向にあるという結果が出ました。

バクテロイデス・フラジリスの特徴 
・ヒトの口腔内から腸内までの細菌叢を構成する嫌気性の優勢菌の1つ
・基本的には病原性は低いが、体の抵抗力が弱くなったときに病気を惹き起こすことがある
・体の中で本来無菌状態であるべき部位(血管や腹腔内)に入り込み、重症化すると敗血症や腹膜炎等になることもある
・β-ラクタマーゼという薬剤耐性に関わる物質を産生することにより抗菌薬のペニシリンなどを不活化させるため、この菌が感染患部から検出された場合は慎重に有効な薬剤を選択する必要がある
・[近年の研究結果] 腸炎発症モデルの無菌ネズミの腸内に、ヘリコバクター・ヘパティカスという腸炎原因菌とこのバクテロイデスを同時に植え付けると腸炎を発症しなかった
・バクテロイデスはポリサッカライドAという糖質分子を分泌し、この物質が免疫のバランスを正常に保って腸の炎症を抑制している可能性がある
(参考資料:バクテロイデス フラジリス – 菌の図鑑, ヤクルト)

研究者は腸にある細菌を早く分析しようとして、1つ1つを分けて培養しようとするのですが、どうやら腸内細菌は栄養をお互い補い合っていて、単一で増やそうとするとうまくいかないことが多いようですね。

だからこれから「若返ってしまう腸内細菌」が発見されても、実は1種類だけではあまり効果がないということが起こりそうですね。

菌をグループ化してある一定の集団として研究していくことが必要のようです。

バクテロイデス・フラジリス 菌は最新論文では致死性のウイルス脳炎の治療にも役立つことが分かりました 😄 ↓


 

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