老化を抑制するクロトー遺伝子の最新論文: 遺伝子多型が発見される【2019年】

ニュース/レビュー

今回は KLOTHO(クロトー)遺伝子の遺伝子多型(共通した遺伝子変異タイプのこと)が老化の進行スピードに影響することが見出されました。

これにより自分の遺伝子タイプ調べる事によって自分が老化しやすいかどうかの判断が、ある程度分かってしまうかも知れない、ちょっとコワーイことになってしまうかもしれません 😅

ボストン大学の最新研究がプレスリリース(英文)されましたので、それを翻訳したものをご紹介します。

ニュースタイトル「研究者らは細胞老化に関連する遺伝子変異体を同定する

イメージ画像(出典:ThePixelmanによるPixabayからの画像)


精神的ストレスが加齢の加速と関連していることはよく知られています。今回、(クロトーの)遺伝子変異が細胞の老化に関連し心的外傷後ストレス障害(PTSD)痛みそして睡眠障害を含む複数のタイプの精神的ストレスと相互作用することが新たに示されました。

KLOTHO 遺伝子は、「生命の糸を紡ぐ」ギリシャの女神Clothoにちなんで名付けられた遺伝子で、長寿や様々な加齢に関連した状態と病気に関係していますが、ヒトにおける細胞老化促進のマーカーであることが示されたのは今回が初めてです。

この調査には309人の米軍の退役軍人が参加し、多くはイラクやアフガニスタンの戦争に派遣され、PTSDを経験しています。被験者全員の血液サンプルの遺伝的および代謝的分析、および精神状態についての評価の他、脳の構造と機能を調べるために磁気共鳴画像法(MRI)が行われました。

その結果、より重症のPTSD症状を示し特定の KLOTHO 遺伝子型を有する者が、細胞老化促進の程度が最も強いことが明らかにになりました。

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DNAのイメージ画像(出典:microbiology_PublicDomainPicturesによるPixabayからの画像)


筆頭著者のVA Boston Healthcare SystemのPTSD国立センター臨床研究心理学のErika J. Wolf博士は、次のように述べています。

「私たちは、ストレスが健康を低下させる可能性を高めることを知っています。今回の結果は、KLOTHO 遺伝子が末梢神経系と中枢神経系の両方を介し、健康低下の一つの原因となり得ることを示しています。ストレスをひどく受けた者は病理学的な影響を受けやすくします」

研究者らによると、この研究は老化の加速を遅らせるか逆転させる、また、ストレスや年齢に関連した健康低下を止めるのに役立つかもしれない新しい方向性を示すものです。

ボストン大学医学部の精神医学の准教授でもあるWolf博士は、以下のように付け足しています。

「この結果は早まる老化の病態生理学上の理解を深め、またKLOTHO 遺伝子が加齢に伴う炎症や代謝機能不全、および神経の部分的欠失を防ぐターゲットとなる可能性を示しています」

研究者らは、ストレスに関連した細胞老化の病態生理学を特定し、関連する経路を標的とする新しい治療法の開発を目指しています。これによって、細胞老化のペースを遅らせたり逆転させたりすることが可能になり、ストレスを受けた人々に、加齢に関連する健康低下が引き起こされるリスクを減らせる、と考えられています。

引用ニュース & 引用文献

🔵 英語ニュース:Researchers identify gene variant associated with cellular aging )

🔵 引用文献 : The goddess who spins the thread of life: Klotho, psychiatric stress, and accelerated aging (Brain, Behavior, and Immunity, 2019) Erika J.Wolf, Filomene G.Morrison, ・・・William P.Milberg, Mark W.Miller

Seigoの追記

KLOTHO 遺伝子は1997年に黒尾誠先生(主任研究員)と鍋島洋一先生(当時の責任者)により発見されました。

ある遺伝子変異 KLOTHO 遺伝子上に起きると老化がすごく進んでしまうのです。

ひどく老化するトランスジェニックマウスが偶然できて、それからどの遺伝子にどんな変異があるとこうなるのかなぁと調べていたらこの遺伝子を発見したわけです(遺伝子を特定するのに4年を費やしたそう)。

それから機能などが解析されいろいろなことが分かりつつありますが、さらに研究は進んでいるようです。

カルシウムリンなどのミネラルの代謝に必要だとか、インスリンを抑制する作用があるとか・・・正常なKLOTHO遺伝子をたくさん発現させたマウスは1.2〜1.3倍長生きだったとか、非常に興味深い遺伝子です。

糖代謝と老化って深く関わりあってるなと思います。

腹6−8分目のダイエットをさせた猿やマウスがより長生きになるとか、糖分を摂ると炎症が増えるなどの研究がありますよね。

今回の研究では特定の変異がKLOTHO遺伝子にあってさらにストレスが強いと老化の進み具合が早いということで、多分KLOTHOの働きが悪いんでしょうね。

2つの遺伝子多型(ポリモーフィズム, polymorphism)が見つかったようですね(rs9527025 と Rs9315202)。これらの遺伝子多型によって(PTSDを経験した退役軍人の中で)老化の進行に影響が出たそうです。このことから将来は遺伝子治療も検討されることでしょう。

⭐️ ⭐️ ⭐️

日本人が発見した遺伝子なので、サーチュインよりも私はこちらに期待をしています 😄

自分の遺伝子のタイプを調べることによって自分が老化しやすいタイプなのか、それとも老化しにくいタイプなのか分かってくるかも知れませんね。

自分のタイプを知ることはちょっと恐いことかも知れませんが、逆に悪い結果だったら早いうちから老化しないように対処するということもできるはずです。

KLOTHO遺伝子をうまくコントロールすれば不老不死も夢ではないかも知れません 😄

ガンバレー、KLOTHO (クロトー) !!

老化関連の書籍

最後に老化関連の書籍のリンクを貼っておきます。
もっと知識を深めたい方はどうぞ。

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